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【完結】最強の女騎士さんは、休みの日の過ごし方を知りたい。  作者: ろうでい
四話 全能の要塞《ショッピングモール》
28/121

(5)

――


「嘘……だろ……」



 三階に続いて、二階を探索する三人。

 ルーティアの目にした光景は……まさに驚きの光景であった。


 服、服、服。

 どの店を見ても、衣類。

 三階にあった二十店舗近い店は、二階では全て衣類専用の店へと変わっている。

 つまり二階は……ファッション関係の店が、埋め尽くしているのだ。


 目を見開いて驚いているルーティアの肩を、リーシャがからかうように叩いた。


「さ、服選ぶわよ。どの店行く?ルーティア」


「き……決められるわけないだろう。どうやってこんな膨大な店と種類から選べというのだ……!」


 その意見にマリルも納得したように頷いた。


「そりゃあそうよね。今までこんな種類の服、見たこともないだろうし。……と、いうわけで」


 マリルはリーシャの方を見て腕組みをした。


「アタシとリッちゃんで、それぞれお気に入りのお店にルーちゃんを連れていく。それでルーちゃんに似合った服をプレゼンしていき、着てもらう。それでルーちゃんの気に入った方をお買い上げ。この勝負方法でいい?リッちゃん」


「望むところよ。腕が鳴るわ」



「……いつから勝負になったんだ。この買い物は」



―――



「……どう、だろうか」



 一軒目、マリルお薦めの店。

 子どもから大人まで、幅広い年代の女性に向けたファッションを展開するチェーン店。

 比較的安価なものが揃っているが、どれも値段よりもしっかりした作りをしている印象を受ける。

 デザインはシンプルなものが多く、趣味趣向を気にせずに着れるものが多い大衆向けのブランドだ。


 マリルのチョイスは、黒のタンクトップと白のニットカーディガンのセット。袖が短く春から夏にかけて着れる感じとなっている。

 薄い青のデニムパンツはややピッチリとしていて、ルーティアのスタイルの良さや脚の長さが強調されていた。


 試着室を出たルーティアに、思わず興奮の溜息を漏らすマリルとリーシャ。


「めっちゃ似合うね、ルーちゃん……。なにそのスタイルの良さ、反則なんだけど……。こりゃあ女性ファンが多いのも頷けるわ……」


 168cmと高身長のルーティアには映える、大人のかっこよさを追求したファッション。思わず自分のチョイスにガッツポーズを取るマリルであった。


「ぐ……」


「ね、ね?やっぱこういう大人っぽいかっこいい服のが似合うでしょ、リッちゃん」


「……似合ってる」


 思わず素直に答えてしまうリーシャ。



「しかし、動きにくいなコレ。上はまだしも、ジーンズがキツくて……」


「ルーちゃん脚長いんだし、それくらいの方が絶対いいって。クールな女騎士の休日って感じがしていいよー」


「急に市街地で戦闘とかになったらどうしよう」


「ならんならん。その考えが抜けないからずっとジャージなんでしょ。……で、どう?買ってみる?」


「むう……」


 ルーティアは考える。

 正直……運動着さえ着ていれば、それで事足りている。

 しかし、今回買い物に来たのは、『私服』という概念を自分に取り入れるためでもある。

 ましてマリルとリーシャはそれに付き合ってもらっているのだし、アレコレ悩んで決めたこの服を無碍に扱う事も出来ないであろう。


 試着室の鏡を見てみる。……そこまで派手で目立つ服でもなく、なんだか良い気もしてきた。


「…………買う」


「お、ホントに!?やー、嬉しいなー」


「躊躇っているといつまでも何もしないままだからな。崖から飛び降りる決意で買ってみる」


「いや、そこまで思い切った決意しなくていいのよ。アタシもちょっと出すから、軽い気持ちで、ね?」


「いや、私の服なんだから私が払うぞ」


「いいのいいの。なんだかお人形の着せ替え遊びしてるみたいで楽しませてもらってるし、ちょっと出させてよルーちゃん」


「…………」


 その例えはどうなんだろう。と、ルーティアは疑問に思った。


――



「…………うわ」



 二軒目、リーシャお薦めの店。

 彼女が買った事があるという店でのチョイスとなった。

 しかし、14歳のリーシャが購入したファッション店という事は……。


 白のブラウスの袖の襟元はややフワフワとしたデザイン。その上に、黒の女学生のようなベストを着る。

 何よりの特徴は、黒のチュールスカート。歩くたびに可憐に揺れるチュールが可愛さを演出している。

 パンプスにもこだわったようで、おとぎ話に出てくるようなやや大きな黒のパンプス。膝までのハイソックスも、いかにも10代らしいコーディネート。

 それに合わせて、無理矢理髪の毛もツインテール気味にリーシャに事前に結われていた、ルーティア。


「……これは、さすがに……厳しくないか、リーシャ」


「…………」


 試着室から出てきたルーティアは、引きつった笑い。しかしリーシャは、悔しそうに赤面している。


「くそ……辱めるつもりで選んだのに、なんで結構似合ってるのよアンタは……」


「辱めるつもりだったのか、この服は」


 マリルも顎に手を当てて、少し興奮気味に唸る。


「うーむ、ギャップ萌えってヤツだねぇ。普段冷酷無比な女騎士の、意外な私服……。こりゃ男はイチコロだわ……」


「別にイチコロにしたいわけじゃないって。普段何気なしに着れる服が欲しいだけなんだって」


 ルーティアは困惑した。



「で、どうよ。わたしのコーディネートは。悔しいけど結構カワイイわよ、アンタ」


「うむ。恥ずかしくて一歩も店から出たくないぞ」


「よし、辱めることには成功したようね」


 リーシャはガッツポーズをした。


「それで、どうするの?ルーティア。この服、買うの?」


「買う」


「…………マジで」


 自分から提案しておいて、即答されたリーシャは困惑していた。


「どうしてよ。恥ずかしいんでしょ?」


「恥ずかしい。だがさっきのマリルと同じだ。私の服を一生懸命、リーシャが選んでくれたのだ。無下にはできないだろう」


「……その格好でかっこいい台詞言われてもねぇ。……でも、ま、わたしもそう言ってもらえるなら嬉しいわ。一応アンタに似合いそうな感じにしたつもりだし」


「だとしたらセンスないな、リーシャ」


「うっさい。ほら、お会計行くわよ」


 リーシャは試着室のカーテンを閉めて、ルーティアにバレないよう、嬉しそうに微笑みを浮かべた。



――



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