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【完結】最強の女騎士さんは、休みの日の過ごし方を知りたい。  作者: ろうでい
四話 全能の要塞《ショッピングモール》
26/121

(3)

――



「…………。お、来た来た。おーい」



 マリルが手を振ると、向こうにいる人物も軽く手を振る。


 数日経った後の、三人揃った休日。待ち合わせは城門前で、マリルは本を読みながらベンチに座りのんびりとメンバーが揃うのを待っていた。

 来たのは、リーシャが先であった。ベンチに座るマリルの前に立つと、腕組みをしてやれやれといった苦笑を浮かべる。


「はー、まったく。なんでまたアンタらと出かけなきゃならないんだか」


「のワリには随分早く来るんだねぇ。まだ待ち合わせの15分前よ」


「ち、ちょっと早く来るのは社会人としてのジョーシキでしょ。楽しみにしてるとか変な勘違いしないでよ」


「社会人って、リッちゃんまだ十代だし。ま、ルーちゃんまだ来てないし、のんびり待ってようよ」


「なに、まだ来てないのアイツ」


「リッちゃんが早すぎるんだよ。アタシは今日の発案者だから早めに待ってるけどさ。まさかこんなに早くリッちゃん来ると思わなかった」


「ふんっ」


 今日の休日も、良い日がらとなった。

 春から夏へ移り変わる季節。寒さは次第に暑さへと変わってきており、半袖で出かける住民も珍しくなくなってきている。


 リーシャの服装は相変わらず年頃の、可愛らしくしっかりしたファッションである。

 ややロング丈の白のTシャツに、ベージュ色を基調とし黒のリボンのついたベスト。デニムのミニスカートに黒のソックスと、若々しさを感じるコーディネート。

 一方のマリルは、白のブラウスとパステルイエローの幅広のボトムス。落ち着いた大人という感じのシンプルな服装だ。


「リッちゃんはよく行くの?ショッピングモール」


「たまにね。頻繁に行くってほどじゃないけど、服とか見に行くのは好きだし」


「結構オシャレだもんねー。友達と行くの?」


「…………。一緒に行くような人、いないし。一人でよ」


「……そっか」



 友達、という存在自体リーシャにはいないのかもしれない。

 ルーティアと同じく、騎士団のエース候補として存在するリーシャ。それでいて、十代という年齢。

 城の外での交友関係などないに等しいし、騎士団に同年代の子どもはほとんどいない。そもそも訓練や任務でしっかり休める日など少ないのだろう。

 ルーティアはそういう日も自分から騎士団の仕事に充てていたようだが、リーシャは年頃の女の子だ。少しだけある時間を使って、オシャレや好きな事を楽しみたい気持ちもある。当然の話だ。

 国王が二人を心配する気持ちも頷ける。

 強くなりたいというプライドと、可愛くいたいという女の子の気持ち。その狭間で、リーシャは常に葛藤していたのだ。



「今日はたくさん買い物しようね、リッちゃん。色々見て、日ごろのストレスを晴らしちゃおー♪」


「……う、うん」


 マリルに頭を撫でられ、赤面しながらも悪い気はしないリーシャだった。




「お、二人とも揃ってるな」


「「 ………… 」」



 少しして、待ち合わせ時間丁度くらいにルーティアが現れる。

 予想はしていたが……やはり、ジャージ。黒の上下に白のストライプが入ったシンプルなものである。

 リーシャは力なく笑って溜息をついた。


「逆に予想を裏切ってこなくて安心したわ。良かった、ジャージで」


「一応出かける用の服なんだぞこれは。運動や訓練に使っていない新品に近いやつで」


「ならもうジャージじゃなくていいじゃない。なんで私服も運動着と同じ種類なのよ」


「着やすいから」


「はあ……。もういい、返答がシンプルすぎてこっちが困ってくる」


 どうやらルーティアの服装にツッコミを入れるほど無駄な事はないようだった。

 しかしマリルは顎に手を当てて、なにやら嬉しそうに笑っていた。


「だからこそコーディネートのし甲斐があるんじゃない。ジャージ着てても分かるスタイルの良さ。長身、スレンダー、顔よし器量よし……こりゃあやりがいがありそうだねぇ、リッさん」


「……まあ、そうね。ふふふ、アンタを辱めるつもりで色々選んであげるわ……」


「二人共、笑顔が怖いぞ。あんまり変な服は私も着ないからな。好みくらいはあるんだから」


 怪しく笑うマリルとリーシャに、少し恐怖を覚えるルーティアであった。




「それで、どうやってその『しょっぴんぐもーる』とやらに行くんだ?マリル。歩きか?」


「んー、今回はちょっと距離が離れているのよね。だからここにそろそろ…… あ、来た!ほら、アレに乗っていくわ」


「ん?」


 マリルが指さした方向から、何かが走ってくる。

 それは、大型の『ガア』であった。

 リーシャとマグナが乗っていたガアとは比べものにならないくらい大きく、太った、ガア。

 引いている荷車も桁違いの大きさで、既に人が数人乗っているがそれでもまだ数人乗れるほど広い。

 大型のガアは待っている三人を視認すると、荷車に衝撃がいかないようにゆっくりとスピードを落とし、ぴったりとルーティア達の前で停止した。


 運転席から、座席の方へ。中年の運転手が来ると備え付けてある階段を下ろす。

 どうやらこれは、乗り合わせ専用のガアらしい。


「乗り合いガアか。初めて乗るな」


「えっ、コレも初めて?ホントにルーちゃん、何事も未経験だねー」


「うむ。……で、どうやればいいんだ?」


「とりあえず中に乗って。このガアは一律料金だから、目的地が近くなったら運転手に伝えてお金を払って下ろしてもらえばいいの。簡単でしょ?」


「……うむ。まあ、とりあえず先に乗ってくれ、マリル」


「はっはっは。ホントにこういうの先に行くの苦手だよねー、ルーちゃん」


 大きなガアの荷車に、マリル、リーシャ、ルーティアの順番に乗っていく。

 椅子に座った事を確認すると、運転手はガアの手綱を引き、ゆっくりと大きなガアは加速をしていく。


 目的地は、ショッピングモールへ。

 城から三人は離れていった。



――


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