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1ー05

「そしてその次が『厄災』」



 特殊性(レアリティ)はSS。

 ここまでいくと影響度は国にとどまらない。

 全世界に『厄災級に』影響を与えるランク。

 疫病を撒き散らしたり、気温を変化させることができたり……


 国どころか世界を破滅させる力を持つ魔術師。

 それが『厄災』ランクの魔術師。


 ちなみにこのランクの魔術師は全世界においても、今まで2人しか存在しない。

 ユーリ先生はそれを説明し、意味ありげに眉を寄せた。



「……そして、ここからが君の仕事だ」



 先生はそういって私を見た。

 もうそれはそれはひっくーーーい声で。

 地の底で這いずってる? ってくらいの声で。

 聞こえないように声量を落としているからかもしれない。


 誰に聞かれたくないか、って、そりゃあアイザックとルカなわけよ。

 あの人達は教室の適当な椅子に座り、暇そうにボーーっとしてる。

 近くにいるからって会話している素振りはない。


 アイザックは「良い生徒」モードで最初の方はニコニコしていたけれど、飽きたらしく今は窓から外を見ているフリをして寝てる。

 隠してるけど私にはわかる!

 だってそれ、私も前世でたまにしてたもん!


 ルカは椅子の上で三角座りをし、爪を噛んでいる。

 ほんとさーーーそうやってさーーー爪を噛むとさーーー爪の形が歪むよ?

 ネイルが綺麗に塗れないよ?

 爪噛んでるとネイル割れるしね、ほんとロクなこと起こらないよ? やめな?


 私は共同魔術師(パートナー)のふたりをそれぞれ見てから、先生を見返した。



「私の仕事ね、任せて。あのふたりのランクをはっきりさせてみせます!」



 私は「ただの」学生じゃあない。

 ちょっと特殊って最初にいったでしょ?

 実家が極太っていうのも特殊だけどね!

 そういうものじゃあなくって。


 私は「ちょっと特殊」なので、他の生徒より3ヶ月遅れてこの学校に入った。

 そして私は「ちょっと特殊」なので、ふたりの引鉄魔術師(トリガー)共同魔術師(パートナー)を組む。

 さらに私は「ちょっと特殊」なので、彼らのことを探る。

 今のところはそう、彼らに気づかれないように。



「ということで早速! 彼らに魔法を使ってもらって……」

「待て。いきなり君の正体をバラす気か?」

「でも私のことをバラさないと彼らのランクについてはわからなくないですかぁ?」



 私の使命は「アイザック・カーティス・ジュニアとルカ・ウスペンスキーのランクをはっきりさせること」。

 他にも色々と特殊なことを受け持っているが、目下最重要項目はそれ。

 国に直結することなので。

 あとめんどくさいのでとっととわかっておきたい。


 私が首を傾げながらそれをいうと、ユーリ先生は呆れた様子で大きく息を吐いた。

 それもその通りだ、とでもいいたいのかもしれない。



「それに安心して、せんせぇ。私の本当の正体はバラしたりしません!」

「……それなら安心だ」



 本当に安心しているのかはさておき。

 先生はそういうと、教壇近くにある通信機のボタンを押した。

 なんかよくわかんないんだけど、この国にも電気とかそういうものはあるらしい。

 スマホとかまではいかないけど。なんならテレビもないけど。モールス信号だけど。


 それでも私から見ると謎の物体を押すと、それは少しは慣れた先にある信号を送るらしい。

 ユーリ先生は教壇から離れ、アイザックとルカの元に行く。

 私もそれに従った。



「カーティス。ウスペンスキー。今から実技を始める。第一魔法使用室に向かいなさい」

「わかりました、ユーリ先生」

「……ぼ、僕も?」



 魔法使用室っていうのは体育館みたいなもの。

 軍事ランクでも最高級の魔術師が作ったという、形状記憶の床や壁で覆われている。

 この中ではどんな魔法を使っても時間経過すると元に戻るってわけ。


 魔法の練習するにはうってつけだが、その素材を作ることがとにかく大変!

 なのでそういう魔法使用室っていうのは、軍事施設とかにしかない代物……なのにこの学校には3つもある。ほんと凄い。


 ちなみに、何でこういうものを作るのが大変なのかっていうと……引鉄魔術師(トリガー)に輪をかけて弾丸魔術師(バレット)がいないから。


 軍事ランクのトリガーは何人もいても、軍事レベルのトリガーの魔法使用に耐え得る「弾丸」を抱えるバレットはそう滅多にいない。

 いたとしても、同じランクのバレットならば一度魔法を使うと枯渇しちゃうし。

 そのランクのバレットの「弾丸」……つまり魔力が枯渇しちゃうと、また魔力を貯めるのに3日はかかっちゃう。


 数で勝負っていったって文化ランクのバレットが、軍事ランクのトリガーの魔力を満たすためには50人は必要だし。

 文化ランクならば、魔力が枯渇しても2日はかからないけど。


 ちなみに魔力が枯渇することを、たまに「ハラペコ」と呼んだりする。

 私はこの呼び方が可愛らしくて結構好き。


 つまりまぁ、何がいいたいかっていうと!

 この世界において魔力というものは有限であり貴重なのだ。


 重宝されるのはランクが高くても「弾丸喰(おおぐら)い」ではいけない。

 コスパが良く、汎用性があり、実用的な魔術師。

 そういう魔術師はそうそう居ない。



「わかるわぁ、お酒が好きでも品なくガブガブ飲む女の子は人気でないから。だからといってお酒飲めなくても困るし」

「何の話かな」

「私にもわかんない」



 そんな会話をしている私とユーリ先生は今、第一魔法使用室にいた。

 ドームみたいな場所。

 お客さんが野球を見に連れて行ってくれたことあるけど、それに似てる。


 天井は高くて地面は土。

 第二魔法使用室の地面はレンガだし、第三魔法使用室は地面に水が流れてるっていう。

 使う魔法によって場所の特性を変えているらしい。


 そんなだだっ広い場所には、アイザックとルカの他、何人かの先生もいる。

 全員が弾丸魔術師(バレット)を示す銃弾型のアクセサリーを付けてた。


 何かよくわかんないけど、この世界では拳銃とか銃弾は古代遺跡から出てくる類のものらしい。

 ミイラのお墓から剣が出てくるようなものね、きっと。


 だから拳銃とかそういうものはほとんど存在していないけど、それをモチーフにしたアクセサリーは存在してる。

 国の法律で引鉄魔術師(トリガー)は拳銃型、弾丸魔術師(バレット)は銃弾型のアクセサリーを極力使用することとあるので、そのアクセサリーを付けるのは限られているけど。


 ちなみにトリガーはそういうの付ける人が多い。

 俺はトリガーだぞ! と示したい人は多いから。

 まぁ一種のステータスだしね、トリガーであるってことは。



「今から君達はスイートマンに魔法を見せてもらう。これは共同魔術師(パートナー)として当然の権利だ」

「はい、当然です。もちろん見せますとも」



 にっこりとアイザックは笑う。

 わーー胡散臭い!!

 私が思わず笑ってしまうと、アイザックは笑顔のままで私の方をチラリと見た。気がする。目を逸らしたからわからないけど!


 ルカはユーリ先生の言葉を聞き、心底嫌そうに眉を寄せている。

 相変わらず猫背で陰気臭い。


 胡散臭いと陰気臭い……あれ? ちょっとこれ、上手いこといっちゃったんじゃない? やったーー! 景気付けにワインでも頼もう!

 あ、未成年だ私……



「君達が特殊であることは既にスイートマンにも説明している。心配せずとも結構だ」



 ユーリ先生はいう。

 私が特殊なら、私のパートナーも特殊だって。

 さすがね!



「それならばいいんですが……僕らの弾丸はどなたが?」



 アイザックは辺りを見回してからいった。

 ここにいる弾丸魔術師は数少ない。

 自分とルカが魔法を使うには魔力が足りないと思ったのだろう。



「スイートマンだ」

「ああ、そうですか」



 さらりといった先生に対し、アイザックは確かに笑った。

 まるで馬鹿にするかのように。


 君ごときの「魔力(だんがん)」で俺の魔術(おなか)を満たせるの?

 彼の目はそう語っていた、明らかに。


 だから私はにっこりと笑って差し上げた。

 まぁ見てなさいよ。



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