プロローグ
気が付けば真っ黒な世界だった。
なので私は思ったーーー
「やばい、ママの誕生日だからってドンペリ飲みすぎた?」
と。
違うとすぐに気づいた。
パッと目の前が明るくなったのだ。
え? もしかして私、1日以上寝てた?
とか思っていると、なんか訳の分からないおばあちゃんに「あらまぁ何て可愛い子なの」とかいわれて持ち上げられた。
え、待って、意味わかんなくない?
おばあちゃん元気すぎない??
私、24歳だよ。
店では「二十歳だよ」っていってるけど。
まぁ前の店のママは50くらいだけど30って言い張ってるし、見た目にはよらないんだろうけど。
とか思いながら私が混乱していると、すぐになんかよくわからない外国人イケメンが「ママに似てる」とか泣いてた。
やっぱり抱っこされた。
意味わかんない。
ていうか動けないし、言葉にできない。
私ができることは泣くしかない。
「名前はもう決まってるの」
外国人イケメンの手から外国人美女の手に渡される私。
汗ばんだ顔の美女は、私の頰を撫でながらいう。
「ミア! ミアよ。私の可愛いミア」
ミアーーー?
いや待って。その名前、既に店にいるから〜〜〜!
源氏名が被るの、絶対にやっちゃいけないやつ〜〜〜!
ていうか私、名前あるし〜〜〜!
マネージャー何処いるの? 止めろ止めろ。
外国人イケメンの弾んだ声がした。
「ミア・スイートマン! 最高の名前だ!」
待って誰だそれ。
テンパりながらも私は思った。
あれ? これ……なんか、やばいことになってない? と。
私は18歳からホステスだった、スナックの。
ずっとお店のナンバーワンだった。
そろそろママになってもらおうかな、なんていわれて実際にお店の話も進んでた。
多分その全ては、もう叶わない。
私の名前はミア・スイートマン。
どうやら転生しちゃったらしい。
私は誓った。
「やったーーーー!! 普通に生きていけるーーー!! 夜の蝶は終わりーー!!!」
ということで、私は普通に生きていくことにしたのだった。
中学卒業してすぐに働いていた私にとって普通の生活なんて夢のまた夢。
18歳からホステスだったし、大学生活なんて憧れの世界。
でも本当は、もう少し落ち着いたら高卒認定とって大学に通いたいなーとは思ってた。
でも! 私! 生まれ変わったの!
本当の意味で!
美男美女の両親はめちゃくちゃお金持ちだったし、外国人になった私は可愛いし、名前はちょっと源氏名っぽいけど覚えてもらいやすいからちょうどいい。
あ、覚えてもらいやすいとかホステス思考が出ちゃった。
とにかく生まれ変わり最高!
ただひとつ問題があるとすればーーー
この世界は、私がよく知る「日本」とは全然別の世界だったってこと。
新しい私の世界では、
『魔法』が全てを支配していた。
「え!? 待って。やっば!」
幼い頃から何度私はそういっただろう。
すっごいの! この世界!
世界的には中世ヨーロッパ?
学がないから私にはよくわかんないけど、古い街並み! 馬車! とかそういう感じ。
もちろんスマホもなければテレビもない。
YouTubeも見れない。当然だけど。
とにかく特徴的なのは「魔法」。
魔法だよ、魔法。
やばくない?
でもその魔法は私が考えている魔法とは全然違った。
ほら、私達の世界で「魔法」といえばアレじゃん。
火とか水とかブワーーー! みたいな。
違うの。この世界の魔法はなんていうか……特殊能力。個性の進化系って感じ。
そしてこの世界では「魔法」なんて呼ばない。
私が勝手に「魔法じゃん」と思ってるだけ。
正確にいえば「引鉄」と「弾丸」って呼ぶ。
そう、この世界の魔法は2種類ある。
「引鉄」。
これはまぁ、簡単にいえば?
攻撃手段を持ってる人って感じ。
自分以外のものに干渉できる魔法。
自分を変えることができる魔法。
そういう魔法が使える人をまとめて「トリガー」と呼ぶ。
そしてもうひとつ、「銃弾」。
これは攻撃手段を持ってない人。
なんか生まれながらにして、この世界の人は魔力を持ってるらしいの。私もね。
それを外に出すことができるなら「引鉄」。
自らで引き金を引くことができるから。
出すことができないなら「弾丸」。
え? トリガーだけいたらいいじゃん? って思う?
違うの。
「トリガー」は魔力を持っていても、魔力を貯めることができないの。
つまり空っぽの銃を持ってるだけって感じ。
空っぽの銃を持ってて意味ある?
ないよね。せっかくの良い銃でも弾丸がないと使えない。
「バレット」の方は攻撃手段がない代わりに、自分以外の人に魔力を渡すことができるの。
そこがポイント。
つまり。
この世界では「引鉄」の魔術師と「弾丸」の魔術師は2人でひとつ。
……なんだけど。
引鉄魔術師が生まれる率は、全人口の2%だったりする。
魔力があっても魔力を外に出すことができる人は少ない。
そういうことなので、この世界ではトリガーはめちゃくちゃ地位が高い。
もうトリガーとして生まれたらそれだけで勝ち組、みたいな。
98%のバレットの人はほとんどがふつーーーの生活を送ってる。
魔力があったって使えないからね。
そして私。
うちの美男美女両親は引鉄魔術師。
なんならスイートマン家は先祖代々引鉄魔術師だったり。
ていうか諸々が英語じゃんって思うけど、私の耳が英語に聞こえてるのかもしれない。
みんなの言葉が日本語に聞こえるし。
その辺はわかんない。
まぁそういうね。
そういう「引鉄」の一族において。
私、ことミア・スイートマンさん。
なんと!!
「弾丸」の魔術師でした!
もう両親大号泣だったからね。わかったとき。
美人の母親なんて私と一緒に死のうとしてたから。
私を生む時に難産だったらしく、もう子どもは絶望的っていわれているから尚更。
マジで諦めたよね。
え? せっかく生まれ変わったのに学校行けないの? って。
トリガーじゃないと通えない学校多いから。
バレットは学歴いらねぇだろみたいにいわれてるし。
うるせぇ! 学歴も金もあった方がいいだろ!
ない方がいいのは借金と前歴だわ!
けれど!
なんとビックリ!
私はちょっと特殊だったみたいで!!
あとふつーーーに家柄がめちゃくちゃ良くて!!
「えーーーーマジでこんなのホグワ●ツじゃん」
15歳。
すくすくと育った私は、超有名高に通うことができたのでした。
うわー、ハリポ●、お客さんと観に行ったなぁー!
そのあとハマって本全部読んだっけ。
めちゃくちゃ懐かしい。