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第一章 003 日常編 ② 

 先ほども少し述べたが、白咲彩華は校内一の美少女と呼ばれ、他の追随を全く寄せ付けない。

 

彼女の美はそれほどまでに圧倒的で、暴力的で、絶対的。


 彼女を超える美人など今後一切産まれてこない。と思わせるほどの美貌が白咲彩華にはあった。



 例えるならば、月が彼女で、彼女を除く此の世の全てがすっぽん。


 白咲が歩けば万人が見惚れ、白咲が話せば万人が聞き入り、白咲が笑えば万人が幸せになる。


 ある者は彼女を女神と称え、祈りを捧げ、ある者は彼女を賛美し、歌を歌いだす。



 もしもの話だが、社会の守るべき共通の財産である白咲と、もしもの話だが、向かい合わせに座り、もしもの話だが、昼食を一緒に食べる。といった禁忌を犯したならば、一体全体僕はどのような運命をたどるのだろうか。



 それはもう、目も当てられない、ひどい有り様なのだ。


 嫌がらせと言うより、いじめと呼ぶより、国家対一個人のような、信じられない数の悪意。


 一人の人間を軽々しく、呆気なく、微塵もなく、殺してしまえそうな量の鋭利な視線。



 僕が高校一年生の秋を迎えても、数える意義もないほどの人数しか友人がいない理由はここにある。


 そして、一番の問題は完成された美人と全校から崇められる白咲を僕が見ても、大した気持ちにならないことだ。


 僕はどうしても彼女を人間として、生き物として見ずに、白咲彩華という存在として捉えてしまう。


 そこにある現象として観測してしまう。



 このようないくつもの災難と言うより、一つの強烈な存在によって、青春はおろか、僕の高校生活の砂漠化は深刻化する一方だった。


 春が来ない不毛の大地。

 故にいつも白咲彩華が彩りに来る。



「僕が青春を謳歌できないのはお前が原因だ」


 僕の目の前で暢気にお弁当を食べている白咲はしれっとして、表情筋一つ動かさない。


「冴えない男子が美少女とご飯を食べることは青春ではないというの」

「平凡のなにが悪い」

「人くんは凡人を遥かに超越しているわ。見てて切なくなるもの」

「何だその言い草。僕は無敵超人ザンボッド3か何かか?」

「ほら、悲しい」

「確かあの作品は富野監督作品の中でも群を抜いて悲しかったし、主人公の神勝平とも名前がかぶる。だけど僕とは関係ない。そうだろ?」

「本当に悲惨だわ」



 白咲は澄ました顔のまま、凛とした澄んだ声で呟いた。 



 一体白咲は僕のなにを勘違いして、悲しんでいるのか。



 そして白咲が無敵超人ザンボッド3を知っているのか。




 全ては謎に包まれたままだった。


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