第二章 008 大炎上編
「おいおいおい、一体何なんだ」
大爆発のあと。
先ほどまで完全な密閉状態だった美術室は内部から吹き飛び、黒いカーテンは焼け焦げ、窓は割れ、いまでは薄く日光が差し込むまでになっていた。
文字通り、風通しの良い教室へと様変わりしていた。
「何なのとはこっちのセリフよ」
僕の胸の中で小さくなっている白咲がブツブツと悪態をつく。
なんだかやけに顔が赤い。
「火傷は負わしてないはずだが」
「何がやけどよ。こっちは顔から火がでるかと思ったわよ」
「燃えたのは石灰の粉だろ」
「そういうことではなくて!」
粉塵爆発。
表面積の小さい微粒子が大気中の酸素と反応し、瞬間的に燃え移ることで発生する大爆発。
そんな恐ろしい、大火災にも成りかねない大炎上を意図的に引き起こした極悪非道な張本人と、世紀末の如く熾烈な争いを繰り広げていた美術部員は全員、壁や机のわきに叩きつけられ、意識を失っていた。
「危なかった」
「まったくもってよ。よくも人前で抱きついてくれたりしたわね」
「いや、僕が言いたいのは爆発の方で。ほら、僕が威力を調整しないともっと大惨事に」
「人くんのせいで、危うくわたしはどこの馬の骨かもわからない赤の他人にあなたに抱かれているのを見られるところだったのよ」
「いや、でも僕がお前を守らなかったら全身火傷の危険性だって」
「わたしの身体は人くんのせいですでにアチアチよ!」
白咲は勢いにまかせ、僕の胸をポカポカと両手で殴ってくる。
一発いっぱつがドシドシと重く、骨に響いてしっかり痛い。
「人くんはもっと羞恥というのを理解して。ちゃんと勉強して人様の前で変なことをしないようになって!」
「あの、僕はみんなを全身火傷の外傷から救った影の英雄なんだけど。皆に賞賛はされずとも、お前ぐらいは感謝してくれても」
「この前だって虫くずの前でいきなりプロポーズしてきたり」
「いや、してないし。話を聞けよ。ていうか、虫くずって誰のことだよ」
「米搗虻都」
「ひっど! 一応言っとくけど、あの方は僕らの先輩で、元生徒会長で、いまも生徒『名誉』会長っていうすごい役職に就いてる、偉い三年生なんだぞ」
「ひどいのは人くんの方でしょ。あなたのせいで木枯らしが吹く二学期秋だというのに、もう、全身ぽっかぽかよ」
ポカポカポカポカ。
「頼むから、身体が温まったのは分かったから、殴るのを止めてくれ。爆発じゃなくて、お前からの打撃のせいで意識を失いそうだよ」
僕にありもしない罪をなすり付けて途切れることなく攻撃してくる、破滅思考型白咲彩華一六歳職業月も羨む超絶美少女を胸から剥がしながら、僕は爆発後の美術室を見渡す。
「ずいぶん静かになったな」
「さっきまでの闘いが嘘みたいね」
僕は粉塵爆発を巻き起こした犯人の断末魔を回想していた。
「カップリングって何なんだよ」
「あら、知らないの? 受けとか攻めとかの」
「闘牛か?」
「そう言うわけではなくて、えっと、順序が大切で」
「ターン制?」
「いや、違うのよ。うーん、いいえ、違うことも、ない、の、かしら?」
「はっきりしないな」
「もうこの話はよしましょう。人くんが考えているよりもずっと、根深く複雑な概念だから」
「概念??」
美術室が吹き飛びかけるに至った争いの元凶。
その正体は暗闇のなかへ。僕の知るよしもない場所へ消えていった。
――概念って。宗教戦争でもしてたのかよ。
「ある意味正解よ」
相も変わらず僕の心の声に割って入る白咲に、倒れた美術部員の救助を指示しながら、ふと僕は自分がなぜこの地に訪れたのか思考を寄せる。
「あれ、なんだったっけ」
僕が文化部の元エース、雛月かぐやとの約束を思い出している間。
白咲彩華に肩をさすられた彼女が、幸いにも、運が悪くも、無事に、目を覚ましてしまったのだった。
「あれ、どうなったんだっけ」
真っ先に目覚めたのは、この状況を巻き起こした張本人。
大爆発を意図的に起こした爆弾魔、三分透絵だった。
ギリセーフ。
お前の小説はストーリー、文章、ネタは面白いのに構成がネット小説によってない。プロローグが長すぎ。もったいない。
という感想をいただきました。あざす。
書き直します。
伏線とかも貼りなおそうと考えてます。
たぶん、金曜日ぐらい。




