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第二章 004 首切編

「もちろん力になるに決まっているでしょう」


 かぐやのSOSに気前よく返答したのは僕ではなく、白咲彩華だった。


「白咲よ、なぜお前が答えるんだ」

「だって依頼を受けるのでしょ」


 確かに僕が学級委員に当選するには一票でも多くの票が欲しいところだった。


 男子票が誰かさんのせいで絶望的な僕は、結局かぐやの悩み事を聞くに他ないのだが、白咲の思うツボになるのが悔しくて、あえて反抗したくなるのだった。



「雛月さんって、たしか美術部だったはず。全国コンクールで大賞を連発したっていう、うちの伝説の文化部若きエースよ」

「そりゃ受けるしかない」

「人くん、こすいわ」


 白咲が小声でぼそっとこぼした非難も僕は気にしない。


 なんせ文化部のエースに恩を売るチャンスだ。クラスの約半分が白咲のせいで敵となった現状下で見逃せるほどの余裕がない。

 

 全国大会で入賞を連発する少女。

 

 ただそれだけで一体何者だという感じなのに、見た目も小さくて可愛い。

 

 しかも、文化部のエースと聞くとなぜだか芸術家にありがちな偏屈というか、一筋縄ではいかないようなオーラを出しているように、かぐやが見える。

 

 おどおどと怯えるような素振りも、誰の顔も見ず伏し目で話す姿も、か細い声も。

 

 天才画家の卵のそれと考えれば、あるいは才能の裏返しとでもとれば、いまもソファーに腰掛け、一人で、孤独に、あまりに気弱そうに手を握る彼女に合点がいく。

 

 ずっと絵を描いてきたのだろうと。

 誰とも話さずに、遊ばずに。

 

 ただひたすらに絵画と、自分と向き合ってきたのだろうと。

 

 孤高の天才。

 小さき巨匠。

 愛すべき隣人。

 

 雛月かぐやには、他を寄せ付けず、他に怯え、それでいて周囲の人間を、注意を引きつける。

 

 闇夜に浮かぶ薄く切れた月のような、神々しさと儚さが同居したような。

 


 ただそこにいる。

 


 それだけのカリスマ性を僕は感じた。

 

 伊陀夏織が引っ張るタイプのリーダーとすれば、雛月かぐやは崇められ、恐れられる。そんな憧れのマト的スター性。


 誰も彼女に異を唱えることができない。

 

 彼女が言うならばそうなのだろうと盲信させてくれるような安心感が、説得力が、本人の意思どうこうではなく、雛月かぐや、という存在から滲み出ていた。

 

 

 それほどにかぐやは僕が求める理想の、上客だった。


 

「かぐや、さっそく話を詳しく聞かせてくれないか」


 急に下の名前で呼ばれたのが嬉しかったのか、雛月かぐやは元から丸い目をさらに大きく見開いた。


 いつまでも僕に名前を呼んでもらえない伊陀は顔をぷくぷくと膨らまし、「なんでかぐやちゃんだけ」 と抗議した。


 白咲はやれやれと首を振り、「ごめんね、こういう方なの」 とかぐやに謝った。



「でも、とっても善人なのよ。だから雛月さんが困っているなら必ず力になってくれるはずよ」



 それなら、と言っておもむろに口を開くかぐやの言葉は、彼女の持つふわりとした印象に反し、実に重たいものだった。



「わたち、美術部を首になったんでちゅ」

 夜になっちゃってすいません。

 たくさんの人に読んでいただけてうれしいです。

 

 しかし、自己満足なのにというか、欲というか。読んでくれてる割には pt が伸びず、ぶっちゃけエタりそうになってました笑。

 これも誰かが評価したり、ブックマークしたくなる物語を書けない自分のせい。

 いろいろ工夫して精進していこうと思います。

 人たちだけでなく、作者の成長も感じていただけるよう頑張ります。

 

 長くなりましたが、次回の更新は月曜日のお昼ごろを予定しています!!

 どうぞこれからもよろしくお願いします。

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