prologue…
タグ注意ください。
これをハッピーエンドと捉えるか、メリーバッドエンドと捉えるか。
茉麻は、目を開いた。そこは戦場で、多くの敵と味方が激しくぶつかりあっている。
傍には、灰銀色の毛並みをした、彼がいる。
「マーサ! ……お願いだ、助けてくれ」
「……うん」
茉麻――否、マーサが手を伸ばすと、その両腕から真っ白な光が広がっていく。その光は傷付いた味方を包んで癒すと同時に、襲い掛かってくる、どろどろとしたヘドロのような醜い化物たちを消し飛ばしていく。
「奇跡だ……!」
「今だ、押し返せ!」
劣勢だったと思われたが、マーサの出現によって戦況は一気に引っくり返る。虎や豹の顔をした兵士達が、武器を掲げて残りの敵を倒していく。
「マーサ……ありがとう……」
「大丈夫。すぐに終わらせるからね」
自分を喚んだ術士であるニケは、まだ少し顔色が悪い。彼の魔力が尽きれば、召喚獣であるマーサは、この世界にとどまっていられなくなる。
それまで。少しでも長く、一緒に。
マーサはニケの、柔らかい毛皮の手を握る。暖かい手だ。そして、さらに頭の芯の方に力を込める。
彼女が考えうる限りの強い攻撃を、魔法を、奇跡をここに起こすように念じる。世界をかき回すように、世界の在り方をここに決めるように。
何も見えなくなるほどの眩い光が輝いて、戦場を全て包み込んだ。