3.たくさんの秘密と不思議な変化
残酷なシーンがあります。
苦手な方はご注意ください。
街の中をハイセと2人で黙って歩いていた。
ハイセは私の一つ下で6歳。見た目は小さくて可愛らしいけど、性格はつんつんしてる!!!いつかデレがでるのか!?
ハイセにはすごく壁を感じる、まるで人を避けているような。
レオたちと話をしている時も元気だけれど、笑ったりはしない、いつも眉間にシワを寄せている。
まだ、6歳なのに…………。
ハイセと歩く知らない街は今までいた日本とは大違い。洋風で芸術作品のような街並みは、見ているだけでもすごく面白かった。
やっぱり、乙女ゲームの世界だ………でも今は私の現実でもある。
不思議な感覚、まだ夢を見ているよう。
ていうか、よく考えたら攻略対象とすっごい関わりを持っている。
そりゃあ、ゲームの中のシャリーロと同じように進んでいるのだから当たり前だけど。
空き家に住んでいる5人のうち、レオとテイトとハイセは攻略対象。もう、本当に子供なのに容姿は整っている。
さすがに6歳や10歳の男の子にトキメキはないけど………!
そんなことを考えながらぼーっとしていた私は、ハイセが隣にいることをすっかり忘れており、ハッとして隣を見ると、ハイセがこちらを凝視していた。
「何か、話せ…………」
沈黙に耐えられなくなったのか、ハイセの方から話しかけてきた。
「えぇ…………何かって何??」
「いや、うーん……………そうだな」
手を組んで考えているハイセはとても可愛い。
あ、眉間のシワがなくなって、眉毛が下がってる。
「………なんでハイセはあそこに??」
私がぼそっと言ったことに、ハイセは驚くこともなく、また眉間に皺を寄せて、口を開いた。
「俺が4歳の時、家が家事になって、お父さんもお母さんもその時に死んだ。孤児院なんて嫌だったから逃げてきた、そしたらレオに会った。」
…………知らなかった。
そんな重たい過去があるなんて…………確か、背中に傷があって、その跡を誰かに見られるのをすごく嫌がってたんだよね。
でも、まさかそんなことがあったなんて、ゲームの中でも出てこなかった。
「お前は………」
黙り込んでいる私に対して、ハイセは聞き返してきた。
「私は、記憶が無いから、何もわからない、お父さんやお母さんのことも、今までどうしてきたかも。」
前世の記憶があるから、結構冷静でいられるけど、普通に考えたらすごく怖い。
「あの家にいるのは、みんな色々あってあそこにいる、お前だけじゃない」
下を向いて、私の腕の袖を掴んでボソッと言ったのはたぶん、「大丈夫だよ」と言ってくれようとしたのだとなんとなくわかった。
そんなハイセが本当はすごく優しい子なんだとわかって、嬉しくて、私はニコッと笑った。
そのあとは色々な話をしながら歩いた。
お金は靴磨きや盗み、ある人からお金をもらったり。ある人が誰なのかは教えてもらえなかった。
空き家は水も火も電気も通っている。なぜなのかは、そこも教えてもらえなかった。
孤児なのに、意外といい暮らしをしていることに驚いたから、謎のゲーム補正?とか考えてたけどちゃんと理由はあるらしい、教えてもらえなかったけど。
まあ、ちょっとはもやもやが無くなったからよかった!!!
それに、ハイセはずっと眉間にシワを寄せていたけど、レオたちと話すみたいな雰囲気にはなったから、そこもよかった!!!
「そろそろ日が暮れる、帰るぞ」
「うん!」
街中をぐるっと回ったくらいで私たちは帰ろうとした、その時だった
「や、やめっ」
小さかったけど、女の子の声が聞こえた。
ハイセにも聞こえたらしく、2人で声のした方へこっそりと近づいていった。
細い道のさらに奥、大通りからは全く見えない場所。そこには昨日と同じような大男がいて、男は小さな女の子の体を縄で縛り上げ、刃物で傷をつけていっていた。
女の子は痛みのあまり涙を流している、でも口は布かなにかで塞がれていて、声にならない叫び声がとても痛々しかった。
「ひどい……………」
「…………あのネズミ、もしかして………」
ハイセの声なんて全く聞いていなかった、ただ痛めつけられるだけの女の子を見ている私は、今にでも飛び出してしまいそうだった。
でも、7歳の自分があんな大男をどうにかできるなんて思えなくて、恐怖と諦めの気持ちでいっぱいになっていた。
私がそんなことを考えていると、男は、女の子の服を切り裂き始めた。
女の子の顔は恐怖でいっばいになっている。
その表情を見た瞬間、私は足を前に出してしまった。その1歩は気持ちなんて押しのけて、ハイセが私を止めようと、手をとるよりも先に体を勝手に前にやった。
その勢いのまま、私は女の子の前に立ち、男を睨みつけた。
「なんだこのガキ」
見上げるだけでも大変な大男は、先程までの気持ち悪い笑顔が消え、冷たい真顔になっていた。
そんな男を睨みつけるだけで精一杯の私は、声を出すことさえ出来なかった。怖い、その感情が今にでも逃げ出させようとする。でも後ろの怯えた女の子を見るとそういうわけにもいかない。
「どけ、男には用はねえ……………いや、そういうのが好きなやつもいるもんなあーーーー!!!!」
目を見開いて大きな声で笑い出す男は、さっきと同じ気持ちの悪い笑顔をしていた。
いま私が女だってバレたらヤバい………!
いや、本当に男だったとしてもヤバいか!
男は大きな笑い声を響かせながら、刃物を持った腕を大きく振り上げて、私を切りつけようとする。咄嗟に目を瞑った私は、痛みを感じなかった。不思議に思い、ゆっくりと目を開けると、なぜか刃物を振りかざした男は私に刃物が当たるギリギリのところで固まっていた。
「な、なんだ…………!?」
「あ、危ない………」
そう言って、私の方に近づいてきたのはハイセだった。
よく周りを見ると、オレンジ色の薄い幕のようなものが私と女の子をおおっていた。
こ、これが、魔法!?
バリア的な!!!!
「す、すごい…………」
「危ないだろ!ばか!!!」
そう言ってハイセは私の頭をコツンっと殴った。
「ご、ごめん…………」
頭を抑えながら、私は自分のやった愚かな行動を反省した。
ハイセは女の子の縄や、口の布をとって、自分の来ていたジャケットを着せた。
「あ、ありがとう………」
女の子は安堵した様子で頭を下げた。
ピキキッ
何かが割れる音がしたと思った瞬間、ハイセが魔法で出したバリアが勢いよく割れて、男はハイセを刃物で切りつけようとした。
ハイセよりも先に気がついた私は咄嗟に手を伸ばした。
「ハイセ!危ない!!!!」
私は手に力を込めた…………すると、身体中が変に暑くなっていくのがわかった。
その一瞬の変化の中で私の手から燃える炎が出てきて、男の顔面に直撃した。
炎を浴びた男はあまりの暑さに転がり、苦しんだ。
「うわああぁぁぁ、あ、あづ、あづいいぃ」
な、なにこれ………!?