2.自己紹介
「あなた達は本当にお人好しね!馬鹿みたい!!!」
そう言って叫んだ銀髪の少女はその場を立ち去っていった。
助けてくれた恩人の男の子達を裏切るように。
銀髪の少女は5年後、また姿を現した。
美しい姿は変わらなかったが、姫の後ろで微笑んだふりをして目が全く笑っていない、悪女となっていた。
男の子達は立派な騎士となり、姫様の護衛についた。
優しい姫様のことを好きになっていく男の子たちを、銀髪の少女はいつも見ていた。
「立派になったわね、今の姿なら私にふさわしいわね」
おぞましいその笑顔は、姫様へも危害を加え始めた。
だんだんとエスカレートしていく少女の悪意は、男の子達にとっても邪魔なものだった。
「お前は俺たちを裏切った」
「君は美しいけれど、ただそれだけ、僕は君がすごく嫌い」
「俺の前に現れるな、虫唾が走る」
「私はあなたのやってきたこと全てを否定します」
「気味が悪い女だね」
「次、何かやってみろ、僕は容赦なくお前を殺す」
攻略対象たちが放つその冷たい言葉を、前世の私は楽しく見聞きしていたのを覚えている。
目を開けると、見覚えのない天井。
あぁ、夢だったらよかったのに…………。
まさか、あの悪女に転生するなんて、攻略対象からすっごい嫌われるんだよね。
昨日レオが私を助けてくれたように、ゲームの中のシャリーロも元々孤児で、レオに助けられていた。
でも、10歳の頃にみんなを裏切って1人だけ貴族のところに行くんだよね。
「なんで、こうなるかなぁ…………」
自分の大きなため息と同時に、部屋をノックする音が聞こえた。
「シャル、起きた?」
部屋に入ってきたのは、レオだった。
レオたちが名付けてくれたシャリーロ。
本名はあまりバレてはいけないらしく、愛称で呼び合うらしい。
「うん、おはよう」
「…………顔色が悪いけど、よく眠れなかった?」
「いや、大丈夫!」
そういった私の髪を少し撫でて、レオはニコッと笑った。
「そうか、なら、着替えたらおりておいで、朝ごはんを食べよう」
なんで、髪………
なんだか少し恥ずかしかったけど、気にせずに着替え始めた。
着替えて1回に降りると、みんな揃って、机を囲むように座っていた。
「おはよう!とりあえずご飯を食べながら自己紹介をしようかな!」
朝から元気にテイトが言って、私を椅子に座らせた。
「じゃあ、初めに俺はレオ、10歳だよ」
やっぱり、レオから話始めるんだね!なんかここのリーダーっぽいもん!
「俺はネロ、同じく10歳。何かあったら俺に言ってね」
深緑の髪に紺色の少年。大人びた雰囲気がみんなのまとめ役のような立ち位置なのだろうと分からせる。
ふ、副リーダー………!
「僕はテイト!9歳!よろしくねーシャルー!」
テイトはいつでも元気!って感じだ…………ちょっとうるさ…………いや、やっぱいいや。
「僕はアーリオ!8歳!シャルとは歳も近いと思うし、なんでも話してね!」
黄土色の髪に黄色の瞳。シュッとした目鼻立ちがちょっとキツネに似ている。
「ハイセ………6歳」
茶色の髪に紫の瞳。ツンっとした雰囲気で、ずっと黙っている。
「わ、私は…………7歳くらいだと、思うけど………」
「あぁ、いいよ!俺もそのくらいだと思ってたし!7歳ってことで!ちょうど7歳の子がいなかったから埋まってよかったよ!」
すかさずフォローを入れてくれるレオは本当にしっかりしている。
朝食のパンを食べながら自己紹介を終えたみんなは、少し真剣な表情をし始めた。
「今日は街に出て、食べ物を買うのと、お金集めなきゃね」
ネロがそう言い出すと、テイトが頷いたあとに続けた。
「6人になったことだし、2人ずつで行動しようよ!そっちの方が効率いいと思うし!」
「いいね!!!」
テイトとアーリオはニヤッとした。なんだか悪いことを考えているような顔だ。
2人はどことなく雰囲気が似ている、悪ガキ…………みたいな感じ。
「シャルのペアはハイセがいいんじゃない!」
テイトがそう言うと、アーリオも「そうだね!」と言った。
「なっ!!俺やだ!」
ハイセは立ち上がって驚いた表情で言った。
「俺は反対だな、下2人で行動させるのは危ない」
「もー!レオは心配性だな!俺が6歳の頃はもっと危ないこと平気でしてたな!」
レオが反対するのをテイトが呆れたように言い返した。
「まぁ、ハイセはもっと人と関わるべきだし、街を探索するだけならいいんじゃない?レオ」
「…………しょうがないな」
嫌そうな顔をするハイセを横に、ネロとレオが話を進めてしまった。
私の意見は………!?
そんなこと聞くこともなく、そのままハイセとともに追い出されるかのように家を出された。
テイトとアーリオがすごく楽しそうだったのは、ハイセをいじるのが楽しいのだろうか。
そんなことを考えながらもなにか話さなくてはいけないと私は思った。
「えっと、ハイセ…………」
「はぁぁぁ、だから嫌なんだ。お前俺に迷惑かけるなよ!」
「え、あ、はい……………」
な、生意気なやつ!!!!
大きなため息と、ツンとした表情はすぐにそっぽを向いてしまった。無言のまま、私たち二人は街を歩き出した。
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