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1.落ちたら孤児になっていた

結構長いです。

『俺はあなたさえ守れればそれだけでいいのです。』

「きゃーーー!そんなこと言っちゃう!?……………もーーー、レオルドまじかっこいい………」

画面の中のイケメンを見つめながらベッドの上で悶えている私は、今日も大好きな乙女ゲームをやっていた。

今年で26歳………親からそろそろ結婚はどうするのやら、彼氏はいるのやら、心配され始めてきた。

中学生の時から乙女ゲームが大好きで、有名所はもちろん、マイナーな作品までも知り尽くす、自称乙女ゲーム博士!!

そんな私が最近1番やりこんでいるのが、騎士と国の姫のアブナイ恋、『君は騎士(ナイト)様に愛される』。

第1弾から爆発的な人気を誇り、第2弾まで発売されていて、全攻略者、全ルートコンプリート済み。

そして今やっているのが第1弾。何回やったか覚えていないくらいやり込んでいる。

イラスト、声優、ストーリー、攻略対象、全てが私のどストライク!!

騎士の中には元孤児の人もいて、少し影がある感じや、過去のシーンの泥臭い感じがまたいい!!!

このゲームをやっている時間が一番幸せ…………。





ある日、私は会社の飲み会で遅くなり、駅のホームで終電を待っていた。

時計を見ると、もう11時をまわっていた。

「はぁ、もうこんな時間…………まあ、明日休みだしいいかなー、あ、家に帰ったらキミアイ⦅君は騎士(ナイト)様に愛されるの略⦆の続きやろうかなーー!」

そんなことを考えていた私は電車の近づく音が聞こえておらず、酔っ払っていたこともあり、足を踏み外してしまった。

やばいっ…………!!!

そう思ったのはもうホームから落ちて、電車が真横にあったときだった。

ギュッと目を瞑り、死を覚悟した時…………不思議な違和感を感じた。

………………あれ…………痛く、ない?

電車に引かれると思っていたのにそんな感じが全くしない。

恐る恐る目を開けると、そこは、知らない街の中、知らない人たちの人混みの中だった。

「な、なに、ここ…………」

そう発した自分の声は、いつも聞き慣れている微妙に低い可愛げのない声ではなくて、小さな子供のような可愛らしい声だった。

自分の声に驚き、手足を見ると妙に小さくて、体の感覚もなんだか気持ちが悪い。

周りを見渡すと、アニメの中で見ていた古いヨーロッパのような風景が広がっていた。

何か、自分を確認出来るようなものを探して、キョロキョロすると、お店の窓に映る小さな子供が見えた。

「こ、これ……………」

私……………!?

手をあげれば同じように手を上げる。

あぁ、自分だ…………でもなんでこんな所にこんな姿になって…………

ま、ま、まさか…………これが世に言う転生…………!?

なんだか、そう思ってしまうと、何故か冷静になってしまった。

自分の容姿を確認すると、見た目は7歳くらい、茶色のキャスケットを深くかぶって、白いシャツにスボンを履いている。まるで見た目は男の子だけど、女の子だ…………。

長い銀髪の髪は一つにまとめて、帽子の中にしまっていた。

女の子に見えないようにしているような風貌。

7歳の子供なんて、男か女かなんて見分けがつかない。

そして、一番大変なのが、この世界での記憶が全くないこと、ある意味記憶喪失だ…………。

これじゃ家にも帰れないし、自分が誰なのかさえ分からない。

「どうしよう…………」

ひ、ひとまず、少し歩いてみようかな。


街中を歩くと、本当にヨーロッパのようで、歩いている人たちもアニメの中の人達みたいだった。

現実にいる気がしない………夢の中にでもいるような感じ。

でも、街中を歩いて思ったことがある。それは、自分が孤児なのではないかということ。

着ている服も、お世辞にも良いものとは言えない。路地裏の方にいくと、自分と同じような格好をした孤児が沢山いた。

「いやあぁぁぁ!!!!」

女の子の叫び声が近くで聞こえた。

驚いてその声の方に行くと、3人の大きな男達が、小さな女の子2人を抱き抱えていた。

もの陰に隠れて、様子をうかがう。

「ここら辺にはもう女は残ってねぇかな」

「女はいい金になる、もっと探せ!そこら辺に隠れてるかもしれねえからな!」

なっ…………人身売買………!?

なんとなく、自分がこんな格好をしている理由がわかった気がした。それに、さっきから街中を歩いていて、孤児の男の子は何人も見るのに、女の子を1人も見なかった。

まさか、ほとんどの子が……………。

そう思うと無性に怖くなって、早くその場から離れないといけないのに足が動かない。

すると、男が自分のいる場所に近づいてきた。

逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ

「誰だてめぇ」

簡単に見つかってしまった。

男は私を睨みつけて、腕を掴んだ。

「あぁ?男か?………服脱がしてみた方が早いか」

そう言うと男は、ポケットからナイフを取り出し私の服を切りさこうとした時だった。

「やめろ!!」

10歳くらいの男の子が立っていた。

「おぉ、これはこれは子猫じゃねーか」

「マイクから手を離せ、そいつは男だ、男には用がないんだろ」

「あぁ??マイク??………………まあ、今日は2人見つけたしいいか……………」

男は私から手を離し、男の子のほうに投げつけた。

「大丈夫だ、大人しくしてろ」

男の子は私を背中に隠して、小声でそういった。

「早くここからいなくなれ」

「…………子猫がいきがってんじゃねーぞ……………大人への口の利き方は勉強しとくんだな」

男は男の子の頬を強く掴んで去っていった。



「大丈夫か??」

「あ、ありがとう………」

男の子は黒い髪に青い瞳の美少年だった。

「俺はレオ、さっきは咄嗟にマイクとか言っちゃったけど、君名前は?」

「…………えっと………」

な、名前…………!?どうしよう……………

「名前ないの?」

私はレオの言葉に頷くしかできなかった。

「今まで1人でよく生きてきたね…………俺と一緒においで」

レオは優しく微笑むと、右手を私に差し出した。

私は迷いながらも、その手を取った。


レオはここら辺の孤児の仲間と一緒に生きるために助け合いながら暮らしているらしい。

何も知らない私にたくさんのことを教えてくれた。

靴磨きなどの安い賃金しか貰えない自分たちは、時には盗みもすることもあるらしく、警察からは目をつけられているらしい。

「だから、結構隠れながら暮らしてるなぁ」

「ほぉ、」

「あ、ついたよ、ここが俺らが普段生活している空き家」

古びた空き家の扉を開けると中には何人かの子供がいた。

「おかえり!レオ!!!……………その子は??」

パッと見ると中には5人、6歳から10歳くらいの男の子がいる。

「さっきネズミがいた。そこでこの子がいてね、助けてきた」

「こんな所にまで………………君は…………少し汚いね、お風呂に入ろうか」

レオと同い年くらいの活発そうな男の子、オレンジの髪に緑の瞳が鮮やか。

「僕は、テイト!お風呂に案内するから、服は適当に置いておくよ!」

そう言うと、テイトは私の背中を押しながらお風呂場に連れていった。テイトはニコニコしながら私の服を脱がそうとした。

「じ、自分で出来る!!!」

テイトの手を抑えた私を、目を丸くしてみていた。

すると、にこーっと笑って、「じゃあ上がったらおいで」と言って、出ていった。

び、びっくりした……………そりゃあツルペタな7歳の私の体なんて見られたところでなんともないけど、やっぱり女としてなんか嫌だ。

てか、孤児なのにちゃんとお風呂に入れるって、なんだかんだすごいな………………この空き家だって中はそんな汚くないし、意外といい生活を送っている。

そんなことを考えながら、帽子をとって一つにまとめていた髪をほどいた。

鏡を見ると、綺麗な銀髪の広がる美少女がいた。

ちゃんとみてなかったからわからなかったけど、よく見たらすごいかわいい顔してる。

白い肌に赤い瞳がすごい綺麗だ。でも、なんかこの姿どっかで見たことがあるような気がするけど……………まあ、いっか!

お風呂に入れることが嬉しくて、考えることをそこでやめた。


お風呂から上がったあと、テイトが置いてくれている服を見ると、シャツが1枚とパンツ?男の子用と言うより女の子用の………

てか、下は?スボンは?このシャツ1枚だけ!?

シャツを着てみると、案外大きくて、ワンピースのようになった。まあ、このくらいならいいか………


「上がったよ、お風呂ありがとう………」

みんながいる部屋に顔を出すと、男の子達が驚いた顔をしていた、テイト以外………

「き、君……………女の子だったの!?」

「へ…………あ、うん」

レオが少し頬を赤くして、私の方に近づいてきた。

「女の子だとは思っていなかったよ………………」

「あんな格好してたから、わかんなかったよね」

「レオはそういうのにぶいよね!」

テイトはニコニコしながらそう言った。

「あ、そうそう、君の名前………シャリーロって、考えていたんだけど、女の子なら…………」

「しゃ、シャリーロ!?」

突然の私の声に、レオは驚いていた。

「や、やっぱり嫌だよね!」

「あ、ち、違うよ!ありがとう!それでいいよ!」

私が大きな声を出したのは、名前が嫌だったんじゃない………その名前に聞き覚えがあったからだ。

それは、私の大好きな乙女ゲームのライバルキャラの名前。

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