秋の読書週間は何を読む?
秋の読書週間特別編といたしまして、1作短編が届きましたので、皆さまに公開させて頂ければと存じます。
キーワードは入れ替わりですよぅ^^
猛き光、それは翼織りなすように、挑発的な瞳をした子供を包む。それは広大な海でジンベイザメなる巨大魚を依り代とした我らが全書全読の神様。
「うむ、なんだ。私のこの童子の身体を元の力が殻を破り始めておるのかもしれんな」
店内で不自然に神々と輝かれていたら他のお客様に迷惑になるかとセシャトは母屋でお菓子でも食べていてもらおうとお昼とオヤツに食べようと思っていたクリスピークリームドーナツを渡す。
神様は小さいなりのくせにとんでもない量を食べる。これで今日のお昼とオヤツはなくなったなとセシャトはため息をつく。お客さんの入りも落ち着いたのでお茶でも飲もうかと母屋に入る。
「ま、眩しっ!」
神様の輝き方が目視出来ないくらいに光っている。ドーナッツの箱だけが動いているのでドーナッツを食べ進めているのだろう。セシャトは何処かにサイクリング用に買ったサングラスがあったハズと戸棚を探す。それをかけて神様を見るセシャト。
「神様……なんですかそれ?」
「分からん。力が溢れる。なんぞこれは」
セシャトはまさかと思って暦を見た。
今は丁度、図書館が定めた秋の読書週間の中日。
そう、そして今日は休日の土曜日。読書をされる人々が多いのだろう。神様はそう言った想いを受け止める。そしてそれは同時に神様が存在する力を高めたのかもしれない。
「ぬぉおおお。私が掴むドーナッツがシナモンなのか、オリジナルなのかが分からん。くぅ、セシャトの為に残してやらんといかんがもう食べるしか分からんな」
そういってぱくりとドーナッツを食べる。セシャトの呆れ顔も自らの光で見えない神様。セシャトはこのまま光続けられると神様を店内の電気を消して吊るして電球替わりにしようかなんて冗談みたいな事を本気で考えていた。
「恐らく読書週間によるものだと思うのですが、どうにかならないんでしょうか?」
腕を組みながら神様は考える。
「そうだのぉ……力を使うかの」
神様はセシャトやトト達の生みの親。完全上位互換、セシャト達の用いるオーパーツとスペルを用いずに書物に関わるあらゆる奇跡を起こす。そしてそれはセシャトにとってもワクワクが止まらないようなそんな奇跡。
言葉通り、神の御業なのだ。
「どんな事するんですか?」
「セシャトよ。店を閉めてこい。何が起きるか分からん。一般人に嵐を見せるわけにはいかんからの」
速足にセシャトはお店を準備中に変えて母屋に戻る。
「よし、やるぞ!」
銀河鉄道を呼ぶ事すら容易い神様の力にセシャトは心音が高まるのを諫められない。目を開けると神様は玉座に座り、セシャトは何故だか神様に膝まづいている。それはなんでかと顔を上げようとしたら横に立つ何者かに地面をバシンと叩かれる。
「誰が顔を上げていいと言った!」
「ひぃいごめんなさい」
セシャトは上目遣いに頭を下げる。
「婦好様。即刻、この者を極刑に」
「まぁまて、貴様! おーなる程私が婦好か、ほうほう」
ん? 何かがおかしい。セシャトはそう思うと再び顔を上げる。そして再び棒でバシンと地面をたたく官吏のような人。
「貴様、また!」
セシャトを棒で殴ろうとする人に神様は言う。
「良い。そのまま面を上げよセシャト」
「はい」
セシャトが頭を上げると官吏の人は神様に膝まづくような姿勢を取ると神様の言葉を訂正した。
「婦好様、このものはせしゃなんとかではなく。サクと名乗っています。卑しい事に文字を……文字を使ったのでございます」
二人はこのシーンはあれだなぁと大体何か分かりながら今の状況を確認する。神様は豪華絢爛なお召し物をした婦好の恰好をして果物なのか木の実なのかを婦好とは思えない様子でガッツいていた。
「なんというか淡泊だがこういうのも良いの。素材の味がよく出ておってな! のぉ髭」
「はっ、仰せのままに」
「貴様、面白いの」
神様にそうツッコまれても官吏の人は「勿体ないお言葉で」と言って自分を下げる。神様が平らげた木の実や果物は再び補充されて女官の人が持って来る。それを見てセシャトは叫ぶ。
「あーその方リツさんじゃないですかー!」
官吏の人はブチギレ寸前だった。先ほどから無礼を働きまくるセシャトに対してもう棒を振り回す勢いだったが神様は言う。
「よい、構わん。貴様は面白いからそこで素振り100回。そう言えば貴様リツか?」
名前を呼ばれた若い女官は嬉しそうに顔を赤らめる。
「婦好様、何をおっしゃっているのですか! 私は私です。こころなしか小さくなられたような」
神様は豪華な天井を眺めながら頷いて言う。
「まぁあれだ。そういう日もある。貴様もそこになおれ」
リツは名を呼ばれさらにはこの場にいろと神様から指示をされて喜んでそこに残る。ここまで来て分かった事だが、これは『婦好戦記』の世界に紛れている。
神様が婦好でセシャトがサクなのだろう。というか、そうこの世界の人々には見えているのだろう。世界に干渉してはいけないというルールをガン無視してしまった神様の力。
「リツ、喉が渇いた茶が飲みたい。濃いやつをな!」
「はい!」
と言ってリツは茶を取りに行く。その間も官吏の人はぶんぶんと棒を振っている。さすがに冗談が過ぎたかと神様も反省する。
「もう良いぞ。貴様も疲れたであろう。共に茶を飲もう」
「そんな、私如きが」
「まぁ聞けまぁ聞け! 髭、今の商王どう思う?」
「そのような事、恐れ多く」
いきなり滅茶苦茶な質問をする神様にセシャトはどうしたら良いか分からない。自分がもし完璧なサクを演じれたとしても神様がこの調子なら物語はよじ曲がり続ける。
「神様、あのさすがにそれは」
セシャトを官吏の人が睨む。また怒られるのだろうかと思っていたが官吏の人は棒を取らずにセシャトに言う。
「婦好様を神様か……その心意気やよし、だが貴様の極刑は変わらぬものと思え、よいな?」
そういう官吏の人。
その時、スキップをしながらさらに召し物をなんだか余所行きに変えたであろうリツが戻ってきてお茶と何やらお菓子的な物を持ってきた。木の実やらどんぐりのペーストで作ったパンかビスケットか?
随分簡素な物。
「おおご苦労であったなリツ」
喉をゴロゴロとならすように喜ぶリツに神様は座る様に進めた。神様も玉座から降りてわざわざ三人の元へ行くと腰を下ろした。
「こう地べたに座って茶をするというのは何とも興がのるな。そうは思わんか? 貴様等」
将である婦好もとい神様、両隣に官吏の人とリツ。そして神様の対面にサクもといセシャトが座り謎のお茶会が始まった。
「髭、貴様は本編には出て来んが、私が誓ってやろう。我等、婦好群にこのセシャトではないサクはなくてはならん存在だ。聞け、リツよ。お前にとってもコヤツはかけがえのない者になる」
それにリツは嫉妬したように顔をプイと背ける。
「婦好様は意地悪な人です。そう言えば私が断れない事を知っていらっしゃる」
セシャトは手をポンと叩いた。成程、とりあえず神様は設定をなんとか戻そうとしているんだろうと。
神様はふぅと一息つくとリツが持ってきたパンのようなお菓子をぱくりと食べる。そしてそれを咀嚼。
「おぉ! これ美味いの」
そしてきがつくと神様とセシャトは元の母屋。神様の輝きもなくなり一段落つくハズだった。だが、この母屋にもう一人少女が瀕死の状態で突っ伏している事に気づく。
「ヘカさん! 大丈夫ですか? どうしたんですか?」
よく見るとあちこち荒らされたような、お菓子やお茶も随分食べられているようなそんな状態の母屋。
「婦好なん。婦好がしたん。丁度遊びに来たら母屋に神様の恰好した婦好とセシャトさんの恰好したサクがおったん。店内に出ようとする婦好を止める為にサクと二人で頑張ったんよ」
着衣の乱れたヘカを見て、その壮絶さが物語っていた。色んな物に興味を持って色々開けてみたりしたんだろう。
甘いお菓子も食べた事はなく実に驚いた事だろう。
だが、それ以上に神様とセシャトが世界感に混ざったのではなく単純に入れ替わっていた。そんな事が可能なのかとセシャトは考える。
そして婦好は女性が好きだ。
見ようによってはヘカも可愛い女の子の部類に入るだろう。今まで会った事のないタイプのヘカが婦好の眼鏡にかなったかもみくちゃにされたであろうヘカ。
そんなヘカでもお店の外に出したら大変な事になろうと頑張って阻止してくれた結果が母屋が少々散らかったという程度で済んだ。
「ヘカさん、お疲れ様です」
コトンと中国茶、八宝茶を淹れるとヘカに出す。それをずずっと飲んで婦好達にヘカが振る舞ったであろう月餅の残りを食べながら婦好達の様子についてセシャトは伺う。
ヘカはパクパクとお菓子を食べながらこう言った。
「どうせならヘカのフェイバリット作品のキャラクターかイケメンを召喚するん! 本当にあの婦好、神様くらいやばい奴なん!」
「まぁ将だからの。剛毅で良いではないか、お前みたいに馬鹿より遥かにの」
「馬鹿じゃないん。ヘカなん!」
いつも通りの古書店『ふしぎのくに』トトが来るのを待って11月作品のミーティングを始めようかとセシャトは散らかされた母屋を掃除する。
これは本当にびっくりしました。11月作品や今までの紹介小説のミーティングをしている時に昨日、データを頂きまして急遽公開する運びとなりました^^
こういう皆さんとのコラボみたいな作品は楽しいですねぇ!




