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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第十章 『探偵と助手の日常』著・ 藤島紫
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謎は全て解けた

ふぅ~、本当に寒いですねぇ! 本日渋谷に遊びに行かれる方は十分注意してくださいね!

私は暖かい室内でパウンドケーキを頂きますよぅ!!

トリックオアトリート!

 ペラペラと『探偵と助手の日常 著・藤島紫』の疑似小説文庫を読むかなめ、セシャトは宇宙人のくだりはどうしたんだろうと思ったが、かなめはくすりと笑う。



「ここ分かるわぁ、本当に人が相手をダメだと思った時、相手にしなくなるのよね! 怒られている内は華。なんていうわよね?」



 清明が諦めたような視線を送るという部分だろう。事実こういう人はいる。セシャトが一緒に働く人や古書店『ふしぎのくに』の面々はお互いの得意不得意をフォローしあう仲良しなので本気で喧嘩になる事はないからいまいちこの態度は分からなかった。



「清明さんみたいに自分の魅力を分かっていて全面に押し出す主人公って珍しいですよね?」



 セシャトの言葉に対してかなめははにかむように笑う。



「そうね。確かに珍しいかもしれないわ。ふふっ、何時間か前にも言ったけど、セシャトちゃんは珈琲をブラックで飲むでしょ?」

「えぇ、基本的にはそうですね」



 煮詰まり時間の経った珈琲を清明が飲むシーンの話をしたいのだろう。セシャトは手をポンと叩く。



「珈琲はほぼ全て酸化してるんですよね!」



 セシャトの反撃にかなめはおやっ? と少し驚くがセシャトが思う程の衝撃ではなかったようだった。



「そう、世の中で流通している珈琲豆の大半は酸化してるの。だから、ブラックで飲むよりミルクや砂糖を入れた方がいいって事なのよね。実は珈琲の味の分かる人はそうやって飲むのよ」



 ウィンクしてみせるかなめ。ブラックで飲むコーヒーは大人なイメージがあるが、実のところそうでもない。

 あたりまえの事だが飲み方に大人も子供もないのだ。



「あら清明さんゲイシャを持ってきてるわよ」



 某テレビ番組で放映してから日本でもその知名度を高めた珈琲豆『ゲイシャ』作中でも書かれているとおり日本の芸者とは関係がない……が数奇な一致ではあると思う。

 その昔、芸妓さん、所謂芸者達の中で珈琲や海外のタバコを煽る事は最高の贅沢だったという。

 またこのゲイシャ珈琲は2000年頃に登場した珈琲豆の種類としては本当に若い。


 まさに売れっ子の舞妓さんのような人気と知名度をここ十数年で獲得したのである。

 名前が日本語のようなところも日本ウケした要因かもしれない。

 そのゲイシャ珈琲、高級珈琲として名高いグラム一万に届く事もあり、セシャトもよほどの事がない限りは封を開けない。



「コピルアクといい、ゲイシャといい。まだ知名度がなかった時は一杯一万円で出すお店があったのよ」



 セシャトは知っている。そしてその店は今尚健在である。しかしセシャトも極めて稀に仕入れるゲイシャがそんなに時代が浅い豆種だったとは思いもしなかった。



「セシャトちゃん、小説家になろうの運営は、ティーンのアマ作家に似ているわね? だから、『探偵と助手の日常 著・藤島紫』はアルファポリスやエブリスタを本丸に据えているのかしら?」



 おや? おやおや?というのがセシャトの正直な気持ち。確かに小説家になろう運営は生々しい表現に関して非常にシビアである。代わりにノクターンという場を設けているので必要に応じて使い分けるのも手なのかもしれない。



「そうですねぇ……確かに小説家になろうさんで、性的表現は物によって執行対象になります。ですが、運営さんも大を守る為の策ではないでしょうか?」



 書籍化作家であろうと、対象になる小説家になろう運営の判断。それは一件の特例を認めてしまうと綻びが生じるからなのかもしれない。

 恐らく避妊のくだりを読んでそんな話をしているのだろうか? かなめの読み取り方はセシャトの理解の範疇にある。何故なら次に何を言ってくるのかが一行に分からない。



「セシャトちゃん。大を守るというのは大事な事よね?」

「え、えぇ……そう思います」



 当然である。ルールも法律も、仕事、宗教ですら人間のあらゆる物事は大を守る為にある。それは大前提……だからこそ小は切り離される。



「守られなかった小はどうなると思う?」

「ふむ……」



 それを言われるとセシャトも困る。セシャトは聖人でもなければ国政に関わる重職でもない。だからこそセシャトは聞き手に回る。それはこの特殊な古書店『ふしぎのくに』の店主としての役目。

 かなめの話す話は夢物語であった。



「アポロ計画に感化されたこの国は国産の有人月面調査。ウラノスロケット。クシー計画を慣行したの」



 クシー計画……あまり有名ではないが一部のUFOフリークの中で実しやかに話されていた実験、ロシアと共同で、ある特殊な体質の人々を数人。月に向けて送り込んだ無謀とも言える計画、いや実験とも言える日本先導の計画。



「それってあれですか? siriさんにゾルタクスゼイアンって聞くと……」

「あらあら、セシャトちゃんは本当に物知りねぇ……そのゾルタクスゼイアン。ある読み方をすると、アルカトラズになるのをご存知かしら?」

「そうなんですか? 全然知りません」



 恐らくこの情報はネットの何処にもないハズである。ある読み方をするとsiriがはぐらかすあの謎の言葉は『アルカトラズ』を示す言葉に変わる。

 アルカトラズといえば、連邦刑務所……そして軍事要塞として使われたアルカトラズ島を想像するのではないだろうか? それを意味する言葉はなんなのか? 人々は来るべき未来、何処かに収容管理されるのか? 何か恐ろしい兵器が作られるのか?

 それは……



「信じるか、信じないかはセシャトちゃん次第よ! あー、面白かった」



 かなめは『雨の日のゲイシャにご用心ください』を読み終え、パタンと疑似小説文庫を閉じる。

 文庫本一冊には満たない作品ではあるが、登校や下校中、お昼休憩中……たまに授業中のサボりにおススメしたい。

 そう、かなめのように話を脱線しながら、オヤツを食べながらでもいいかもしれない。

 但し、推理小説のネタバレは禁則事項である事を念を押したい。

 はじめてこの作品を読むかなめの為に、セシャトも神様もそこだけは全力で注意しながらかなめと話していた。



「ふふふのふ! siriさんは……まぁ私の先輩みたいな存在ですからねぇ……どんな未来を見せてくれるのか実に楽しみですねぇ! 推理小説は物語の真相を知ってしまうと二度目に読んだ時の感動は間違いなく薄れます。そういう意味でもこのジャンルは扱いが非常に難しいんですよね! 書く側も読む側も……そして紹介する私も、だからこそ、そのかなめさんのお話はあえて信じるか、信じないかお答えしない事に致しますよぅ!」



 セシャトがウィンクをしながら人差し指を鼻につけて悪戯に笑う。それを見たかなめははじめてセシャトに一杯食わされたなと苦笑してこう言った。



「まぁ!」



 同い年のように見える二人だが、仲良しの母子のように中無妻しい。そしてセシャトは気を利かせてこう言った。



「かなめさん、ゲイシャお飲みになりますか?」



 今までかなめに何を飲みたいか聞いて、悉く予想していた物と違う飲み物を所望されてきた。セシャトは今回は飲み物を限定した。

 Web小説の最高に楽しめる嗜好品は、やはり作品に関わり深い物なのだ。それを断るかセシャトはかなめの言葉を待つとしばらくしてかなめは頷く。



「いただけるかしら?」

「はい!」



 喜んでセシャトは満面の笑顔になるとかなめは母屋に行こうとするセシャトの手を引いた。



「どうしましたか?」

「……私ね。この国にいない者として扱われたの。分かる? 戸籍も元々無かった事になった。宇宙の藻屑になった私が帰ってくるとは思わなかったでしょうね? でもそれは別に構わない。そんな事より、愛しのあの人がもうこの世界にはいなくて、自分の子供が老いて、亡くなる姿を見た時、どう思ったと思う? 嗚呼、浦島太郎はだから玉手箱を開けたんだなって、そう理解できたの」



 かなめからは悲壮感は感じないが、なんとも悔しそうな、後悔した表情をセシャトに見せると鞄からあの箱を……本人が玉手箱と言ったそれを取りだした。



「これ、セシャトちゃんにあげるわ。それとこの本も返すわね。нобачуxотосеа(疑似文庫Web変換)」

「かなめさん……貴女は一体?」



 ただの人であるハズのかなめは神様が作った『探偵と助手の日常 著・藤島紫』のWeb小説疑似文庫をWebに還した。そしてかなめは「続きはゲイシャを飲んだ後にしましょ?」と言うのでセシャトは母屋へと向かう。

 珈琲豆を保存する為に作った適温のセラーの中に入れてあるゲイシャを取り出すと、それを電動ミルで挽き、サイフォンの準備をする。

 その時だった。

 あたりが異常な程明るくなった。セシャトは一体なんだろうかと母屋の窓から外を見る。



「はて、なんでしょう? ライトアップされていませんか?」



 明るすぎる。その光を放っている何かは上空で高速回転している。それはまさにあれのようだった。



「ふふふのふ、空飛ぶ円盤でしょうか? なんちゃって」



 自分で言った事に自分でツッコんで、鼻歌を歌いながらサイフォンから降りてくる珈琲を見つめる。

 それは実にかぐわしい。香りを楽しみ、そして見て楽しむ。セシャトの持つティーカップコレクションではなく。猫が沢山印字された大き目のマグカップを取り出す。

 そして飲んで楽しむ。

 お盆に自分とかなめの分の珈琲を淹れて店内に戻る。



「かなめさーん? あら? 何処に行かれたんでしょうか? かなめさーん!」



 狭い店内にかなめの姿はない。セシャトにあげると言った玉手箱なる小さな鍵付きの箱を残してかなめの姿はもうどこにもない。

 全く、北風のようなそんな人だったなとセシャトは珈琲に口をつけながらそう思った。彼女はもしかすると再び宇宙という広大な海へ船旅に出たのかもしれない。


 一度はここで錨を降ろそうとそう考えたが、色気のあるあの探偵と、お菓子が大好きなその助手の話をもう少し読んでいたいと思ったのかもしれない。彼女が一体なんだったのかはセシャトには分からない。

 小さな箱を見つめながら、宇宙船(そらふね)の中で甘いお菓子でも頬張りながら『探偵と助手の日常 著・藤島紫』を読み返しているんじゃないかとそう思った。

 そしてカップを置いて呟く。



「信じるか、信じないかは皆さん次第ですよぅ」

いかがだったでしょうか?

本日を持ちまして『探偵と助手の日常 著・藤島紫』の紹介を一旦終了させて頂きます。

毎月の事ですが、本当に早いですね!

ですが、あの色っぽい探偵さんと、可愛い助手の物語はこれからも続きます!

是非是非、一緒に謎解きしましょうね!

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