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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第十章 『探偵と助手の日常』著・ 藤島紫
83/109

Web小説最大難関ジャンル

だいぶ寒くなってきました^^ 古書店『ふしぎのくに』に柿を送って頂きましてみんなで美味しく頂いております! 干し柿を作ろうと渋柿を買っていたのですが、神様とヘカさんが齧ってしまい大変な事になりました^^ 渋柿の渋抜きはリンゴの上において、ミラクルリンゴパワーですよぅ!

 アイスコーヒーをちゅーっと飲むかなめ。彼女は見た目に対してなんだがこう言うと失礼だが、年寄くさい。セシャトの質問に対して「まぁ」と嬉しそうな反応を示す。



「私は何者に見えるかしら? って質問を質問で返すのはセシャトちゃんに悪いわね! 私は宇宙飛行士よ」



 宇宙飛行士、それは宇宙という広大な海を探索する夢のような職業。

 セシャトは手をポンと叩いた。



「かなめさんがお若く見えるのはそれですか!」

「どういう事かしら?」

「いえ、よくSF物とかで宇宙にいる人は地球よりも時間の流れが遅くて、実年齢より若いというお話をですね……」



 セシャトのその説明にかなめは口元を抑えて笑う。



「セシャトちゃんはお茶目ね! 逆よ逆。無重力化にいると何年も年をとったような衰えを感じるわ」



 セシャトの言っている事はある環境下における理論上は間違っていないらしいが、それを行える環境は現在科学には備わっていない。また無重力化の身体老化は実は地球上でも感じられる。座り仕事をしている人は要注意だ。

 たまに散歩等を挟む事をオススメする。



「ファミリーレストランってセシャトちゃんはよく行くかしら?」



 セシャトと話しながらもかなめは作品をしっかり読んでいる。ファミリーレストランといえば高確率でよく行くお店がある。



「よく近所のサイゼリヤに行きますねぇ」



 超常連としてセシャトは通っている。Web小説のオススメミーティング等にも一時期は使っていた程である。



「最近のファミリーレストランって美味しいわよね?」

「えぇ、まぁ私はそこまで凝った物でなくても食べれますので」

「三枝さんの気持ちとか分かるのかしら? ローストビーフよりハンバーガー」



 一概には言えないが、彼の気持ちは分からなくはない。所謂お子様の舌という物だが子供の舌は正直である。



「どうでしょうね。ハンバーガーもローストビーフもあまり食べませんが、時と場合によりますでしょうか?」



 そして舌が出来ている者の反応がセシャト。基本的に喰わず嫌いはしないがロケーションと食べる物をある程度合わせる。



「あら、セシャトちゃんはお母さんの食育がしっかりしていたのね。子供の好き嫌いは死に物狂いで直した方が後々その子供の為になるのよ!」



 無理やりにでも食べる事で、脳が食材のうまみ成分を覚えている。それが、大人になると舌が変わるという物の正体である。が、セシャトは生れ落ちてまだ1年経っていないし、母親と呼べる存在がいるとすれば、暴飲暴食改め全書全読の神様。



「そうなんですねぇ。それはいい事を聞きました! 神様にも好き嫌いはなくしてもらいましょう!」



 神様に好き嫌いがあるのかは分からない。何を出しても美味しそうに大口を開けて食べるので、好き嫌い強制よりもやはり無駄遣いを止めさせる方が先かと考え直した。



「それにしても、清明さんって男前ね! セシャトちゃんはこんな男の子どうかしら?」

「ふふふのふ、えぇ素敵ですよねぇ! 本作は何処か女性向けを意識した部分がありますから、もれなく私もハマっていますよぅ!」



 かなめは目を細めて頷く。セシャトがかなめとは話が微妙にかみ合わない、と思うのと同じ気持ちをかなめもこの時点で感じていた。



「そうねぇ、お世辞を言われてもそれを当然と言ってしまう男性なんてカッコいいんじゃないかしら?」



 所謂俺様系男子。清明は三枝のおべっかに対して冗談を返したシーン、彼は決して俺様キャラではないがあえてかなめはこう言った。



「そうですねぇ! 本作の楽しみ方は半分以上はこのお二人の掛け合いになります。先にも述べましたが、キャラクター文芸物の側面が非常に強いんですよ! ツッコミとボケが必要に応じて役割が変わるところもまた飽きませんよね!」



 やはりだとかなめは頷く。セシャトは心の底から物語の話をしているのだ。本当に物語が好きなのだなと思いかなめは笑う。

 そして強制的にセシャトを物語から切り離す術も分かっている。



「セシャトちゃん、トヨタ2000GTが出て来たわ!」

「おや? トヨタというからには車ですよね?」

「そうよ! 私が乗っていたダルマの後継機みたいな車ね」



 実際完全なスポーツタイプの2000GTとダルマセリカは性能こそ桁違いに違うが、コンセプトに関しては近しいものがある。



「いつの時代も日産に勝てなかったのが悔やまれるわね。この頃はフェアレディの赤が凄い人気だったのよ。今なんてGTRでしょう? 大阪なおみ選手がプレゼントされるなんて羨ましいと思わない? ノーマルでブガッティをちぎっちゃうから、対抗するというのがそもそも間違ってるんだけれどね。この小説に出てくる車が出た頃は今より、どこのメーカーも元気だったのよ! GTRの対抗馬にはロータスと同じコンセプトで作られたマツダRX-7、三菱はサターンエンジンのGTOの遺伝子を持つランサー……本当に楽しかったわ」



 セシャトは固まる。かなめは何語を喋っているのか? ただし彼女の情熱はセシャトのWeb小説好きに通じる。それ故、知識として知っておきたい事があった。



「かなめさんが思う一番凄い車ってなんですか?」



 かなめの思うつぼ。セシャトと普通に話をしてみたいと思った。彼女は何処かWeb小説に憑りつかれたような節がある。それを自分の話術で連れ戻せるのか?

 それは至って簡単だった。セシャトの知識外の話をすればいい。



「そうねぇ。性能でいえば34GTRこのフルチューンに勝てる車は存在しないと思うわ。でも、私は宇宙を感じれたという事でランチアストラトスを上げたいかしら? 近未来的なフォルムで車好きを魅了させたのよ! セシャトちゃんが『探偵と助手の日常 著・藤島紫』を楽しそうに教えてくれるみたいにね」



 実に分かり易い説明だった。セシャトは今度その二車種に関して少し勉強してみようと思った。

 そしてすぐに話が変わる。


「セシャトちゃん、この『探偵と助手の日常 著・藤島紫』中で『ソレ』と呼ばれている物に関してどう思うかしら? 私は実のところ現実に『ソレ』に遭遇してもなんとも思わないの」



 セシャトの領域内で揺さぶりをかけてみるかなめ。それにセシャトは鼻の頭に指をつけて長考。女子によってはこのセシャトがナチュラルに見せるあざとい態度に怒りを覚えるかもしれない。



「そうですねぇ。死は嫌ですね! それが物語の中でも現実の出来事でも……ですが必ず通る道でもあります。だから考えてしまいますね。物語におけるどんな些細な死であっても」



 セシャトの話を無視するかのようにかなめは死について語った。



「人が死ぬと穴という穴を綿で詰めるの、それ以上死者が辱められないように……私は肉親や友人知人のそれを見てもなんとも思わなかった。それこそ、物語を読んでいるようにああ死んだんだ。くらいだったのよね」



 作品の世界に浸るセシャトと常に意識を一つ現実に置いているかなめ。なんとも不思議な空気である。セシャトとしてはこのかなめは相当変わったお客さんであるという事を改めて理解していた。

 それ以上に初めて話すタイプのかなめと作品を読むのは実に面白い。

 そして、書籍においても恐らく相当な数をこのかなめは読んできているんだろう。ころころと変わる話題。そして突然元の『探偵と助手の日常 著・藤島紫』の話へと引き戻される。

 今彼女は読書中。何かしらこの作品への話と変わるだろう。それにセシャトはほっとしていた。自分はあまりにも作品外の知識がなさすぎる。



「この作品。扱う題材と作品の質量がミスマッチね」



 これはセシャトに言った言葉なのか、髪を耳にかけてセシャトのノートパソコンを見ながらそう言った。

 作品の質量。

 さてこれはなんの事だろうかとセシャトは思う。軽い、重いという事だろうか? 素直にセシャトは聞いてみた。



「質量というのは? どういう事でしょうか?」



 普段とは逆転している関係。セシャトは聞き手に回ってばかりだが、かなめの知識量は確かに優れている。かなめがこの小説をセシャトに紹介しているよう……



「そうね。登場人物は悪くないわ。話の流れも面白い。だけど、内容を扱いきれていないわね。セシャトちゃんが言うキャラクター物としては百点ね。だたし、推理小説としては及第点と言ったところかしら?」



 成程ヘビー、ライトという事かとセシャトは理解する。恐らくかなめは赤川次郎や島田荘司等のレベルの推理系ミステリー小説と比較したのだろう。

 残念ながらセシャトの知る上で、相当数読んできたが、これら推理系のミステリー小説にかするようなWeb小説の推理系ミステリーは存在しない。

 ややトリックや文章仕掛けの類が大雑把になる傾向にある。


 それは小説というジャンルにおいて、推理系のミステリーは各種技法、恐らく他の追随を許さない一番難しいジャンルであるからだろう。

 潰しがきかないという枷を持って書かれる作品の難しさ、そしてそれを読める幸福。セシャトは持てる言葉でそれをかなめに説明してみせた。

 それに対してかなめの反応は鍵がないという箱を見せて言う。



「セシャトちゃん、これ玉手箱なのよ!」

自動車カッコいいですねぇ^^ 今回は資料を集める中で私はポルシェ・スパイダーという車が素敵だなぁと思いました^^ さて、Web小説の推理系ミステリー。今回最大難関ジャンルとさせて頂きました。物語を考える。キャラクターを考える。展開を考える。ストーリーを考える。さらにトリックを考える必要がありますが、これは設定云々ではどうしょうもなりませんからね!

さて、そんな中でも完成度が非常に高い『探偵と助手の日常 著・藤島紫』はもう読まれましたか?

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