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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第九章 『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む』著・ 洸夜
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トトさんから見るキャラクターの二面性

最近はエアコンが必要なのか、必要じゃないのか? 非常に困りますねぇ! つけると寒いですが、ないと微妙に暑いような? 夏もたけなわですねぇ^^ さて明日は中秋の名月ですね! お団子の準備は大丈夫ですか? ( *´艸`)ふふふのふ! 私は実は昨日もお団子を食べてしまいましたよぅ。

「ぬし様、今なんと申された? 聞こえんかや」



 汐緒は目を見開き、トトを睨むわけでもなくじとっと見つめる。それは憂いを帯びた物なのか、あるいは未練を感じるようにも見える。

 そんな汐緒にトトは笑って見せた。

 それは冷たく、傲慢で、そして今の状況を楽しんでいるそんな笑み。



「シュバルツのとのさんみたいな邪悪な笑みをぬし様もなさるのな?」



 アデルのシュバルツへの印象、魔王。実際何か彼には思うところを感じているアデル。そんなシュヴァルツの笑みにトトは似ていると汐緒は言う。



「成程、光栄です。ですが、僕はアデルさんより紳士ではないですし、シュヴァルツさん程、思慮深くもありません。オルブライト国王にお呼ばれしたなら、二つ返事で対面するでしょうね」



 トトはそう言うと懐から懐中時計を取り出す。それが当然逆に向いて針を刺している事を確認。時間を気にしているようなそぶりのトトに振袖を肩まではだけた汐緒は上目遣いに言う。



「通しゃせぬ」

「あらあら、汐緒さんは実に面白いですね。例えば、汐緒さんは五騎士代表戦に参加するとしたらどうしますか? ガウェインさんとエミリアさんは辞退されましたね。彼らもかなりの剛の者です」

「当然、参加するかや。ぬし様は違うかや?」

「えぇ、僕は面倒くさがりなので、首魁を落としに行きます」



 上目遣いの汐緒に対してトトはニコニコと汐緒を見下ろす。強い生き物は見下ろす。これは人であろうと人ならざる者であろうと違いはないようだった。



「ですが……僕も合理性を考えてアデルさんと同じ方法に出るでしょうね

「負けんでありんな? 一度し合って倒した者など」



 そう言う事である。物語を彩るという意味での空席争いは非常に見栄えのあるものだが、よくよく考えれば確固たる信念がある者は、普通一番強い者を打ち破ろうとする。そこには今後(学園対抗戦)等というまやかしは存在しない。何故なら、そこで満足すると自分は空席の順位でしかありえない。

 そういう面でアデルは大人である。見越した上での空席を選ぶ。それ以外の生徒達は所詮子供であると、トトは作品外の考えを汐緒に強くイメージさせる。



「ぬし様、それはあまりにもひねくれてるでありんす」

「えぇ、ですから僕はブックカフェの店主なんです。ではこう言いましょうか? 本当に強い人間を探したければ総当たり戦をすればいいんです。騎士、いえ棋士のプロ試験は確かそうですね」



 対外試合の勝率を上げる事を考えればトトの言い分は一理ある。それに汐緒は確かにと思う。アデルに敗れたレイ、彼のポテンシャルは現時点では五騎士に相応しいものだっただろう。相手が悪くここで敗退というのは何とも勿体ない。



「ふむ、確かにその方がいいかもしれんかや」

「ですよね! ですが、学生故にこういうのも悪くはないです。一敗が全てを失うというのも学生ならではですよね。今年の高校野球は実に、大番狂わせだったそうです。彼らは一体地方大会から何連勝して上がってきたのか、プロは何度負けても次がありますが、彼らにはその一瞬に命を燃やしています。美しいことですね」



 それ故に、生涯野球をできなくなった選手達が問題に昨今なっているが、彼らは皆一様にこう言う。


『後悔はしていない』


 選抜に落ちたレイ、彼もまた同じ事を言った。学生の美しさ、気高さについてトトは分からない。だからこそこう思う。合理的であり、効率性ばかりを追い求めると、人は情熱を失うのかもしれないと……



「僕がアデルさんと一つ似ている事があります。それは女性の変化に関しては敏感なところですね! 誰も気づかなかったコレットさんですが、素敵なレディとしてリーゼロッテさんに対峙します。さて、勝つのはどっちでしょう?」

「炎に相性のよい氷系……とか言ってるでありんすな……リーゼロッテのじょちゃんでありんす」



 コレットはややチャーム系能力でおかしくはなったものの、アデルへの想いは本物だったのだろう。それに対して、最大暴力でリーゼロッテはねじ伏せた。



「ぬし様の話からすると、リーゼロッテのじょちゃん、炎の力は猫に小判でありんす」

「そうでしょうか? 僕には猫にチュールくらいあってると思いますよ! 嫉妬して、慌てて、それでいてちゃんとした心があるじゃないですか、実に炎を纏うにふさわしい王女様です」



 女性に対するトトの評価はやや甘い。

 そんなトトに汐緒は面白くなさそうな表情を見せる。そして汐緒はトトをここから出さないように考えていた事を忘れていた。



「ぬし様、アデルのとのさんが気になって忘れてたかや! もう返さん!」



 ずぶずぶと汐緒は足元から畳の下へと沈んでいく。その様子を面白そうに見つめるのはトト、汐緒がいなくなった後にトトはとりあえず汐緒が沈んでいった畳みをトントン叩いてみた。



「これは実に興ですねぇ」



 このマヨヒガ、皆目出口が分からない。実は何度かこの建物に関して調べてみた事があった。屋敷に入る前にトトはある程度の間取りと広さを考えていたが、そんな理屈はここでは通用しなかった。



「ではいざ堂々と、参りましょうか」



 片手にはタブレットを持ち、ズレた眼鏡を直しながら、トトは作品を朗読する。それはこのマヨヒガに聞かせているように……



「ふふっ、実にイチャついてくれますね。いくらアデルさんが四十代の精神を持っていたとしても、ときめかないものなんでしょうか? それとも、誰かを重ねて見ていますかね……おっと」



 トトは泣きわめている誰かに覗き込まれているヴィジョンを見た。これは汐緒の仕業か、それとも……

 くだらない思考は読書で飲み込んでしまうのが一番であるとトトはタブレットを見つめる。シャルロッテの迎は飛行艇だった。

 その船首には女神像。



「これには色々と、意味があるそうですね。海の守り手としてアフロディーテ、母なる海への敬意。そして船乗りにとって舟は女性だとか……」



 舟に女神や女性名を使う事の多くの理由としてこれらがあげられる。同じくシャルロッテの飛行艇もまた同じような安全であるとか、力を象った意味かがあるのだろう。



「さて、頬へのキスに対してリーゼロッテさんの慌てようからすると、やはり彼女等はドイツかオーストリア系の文化を持っているんでしょうね。片や、シャルロッテさんは、フランス……飛行船艦のような物を持ってるので同じラテンでもイタリアあたりでしょうか」



 当然作品内に言及はされていないが、他国あるのであればそう言った比較をトトは楽しむ。名称からしてゲルマン民族の言葉が多用されているのは、単純にカッコいいからだろう。

 そして比較的英語に比べて簡単にマスターできる。何故なら他語源より、日本人が発音しやすい言葉がドイツ語である。



「そういえば、ハイルブロンに次行くのは何時だったでしょう?」



 トトの親友が住まうシュツットガルトへたまに出張ブックカフェを開く事があった。決まった日程は無かったが、久しぶりに日常会話くらいは思い出さないといけないなとトトは笑う。



「僕であれば、シャルロッテさんに言い寄られたら、とりあえず許嫁くらいには収まるかもしれませんね。将である女性というのもまた悪くありません……が神様がお許ししないでしょうね」



 読書をしながら、中々の距離を歩いたはずだが、何処まで続いているのか長い廊下、トトは少し喉の渇きを覚えたので、大きな独り言を呟く。



「喉が渇きましたね。紅茶等頂きたいものです」



 そう言って真横にある障子を開くと、今淹れたばかりの紅茶と簡単な砂糖菓子が用意されていた。

 それに口をつけるとトトを目を瞑る。軽くテイスティングしてからこう言った。



「この紅茶は少々、熱さが足りませんね。あと、急須にしても、もう少し茶葉が回る物が好ましいです」



 そこに座り、トトは『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む・著 洸夜』をゆっくりと読む。



「しかし、シュヴァルツさんは大人ぶってはいますが、遊びの天才ですね。いわばガキ大将的な方なんでしょうか」



 アデル一日密着取材。所謂これも緩急をつける話であるが、上手い事、アデルの五騎入りとかぶせている事で自然に入る事ができる。



「この話ですが、一歩間違えると、作者さんの独りよがりになりかねない危険な試みでもありますよね」



 事実、有名なコピペが存在する。ここでは詳しくは説明しないが、独りよがりここに極まれりと言った風だろうか? しかし、こう言った話は作者の自作への愛を感じる事が出来る。

 あまり美味しいとは言えない紅茶を飲み、砂糖菓子を一口上品に割って食べたトトはおっと感心する。



「これは……のし梅……のし梅本舗佐藤屋、定番。いいえ……山形のお土産といえば確実に声があがるソウルフード、汐緒さん、ごちそう様でした」



 寒天状の薄い和菓子、食べると酸っぱさが口いっぱいに広がる知る人ぞ知るのし梅。再びトトは熱さが足りず、そして味もいまいちだと感じていた紅茶を口に付ける。

 ふぅとため息をつくと頷いた。



「成程、そういう事ですか」



 汐緒はアデルがフェリシアやエリアに振る舞ったもてなしはできない。さらにトトの好きな紅茶に合ったお菓子は用意できない。だから、こののし梅に合うように紅茶を淹れたのである。

 渋く、それでいて高めではない温度。



「これもまたオ・モ・テ・ナ・シですかね?」



 実にアデルとリーゼロッテの飾った表紙がどのような物か見てみたいなと思いながら、トトはいい加減姿を現さないこのマヨヒガの主人に少しばかりのイラ立ちを覚え始めていた。



「もう出てきてもよくありませんか?」



 トトの問いかけに反応する様子はない。そんな状態にトトは立ち上がると片眼鏡に触れる。



「では、そろそろこの茶番を終わらせましょうか? фотсарбевекл(Web小説スキル疑似転写)」



 そう言うとトトはタブレット端末から何かを抜き取る。そしてマヨヒガの壁に優しく触れるとこう言った。



「このマヨヒガは汐緒さん、貴方の力か貴方そのものですよね? ですので汐緒さんに特別にWeb小説世界を覗かせてあげましょう。『――――英雄達の幻燈投影!』」



 トトの手には剣が握られるわけでもなく、何かの異能が再現されるわけでもない、しかし、触れた壁から引っ張り出したのは汐緒。



「ぬし様……なにものぞ?」

おやおや? トトさん、そろそろ我慢の限界でしょうか^^ 

『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む・著 洸夜』は色んな方の二面性を楽しめますよね!

もちろん、アデルさんと紳士さん、大人であり悪ガキのようなシュヴァルツさん、自分に正直になれないリーゼロッテさんと、まだまだいますよね? 貴方、そして貴女は誰の二面性を楽しみますか?

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