カップ焼きそばを作りながら古き良き時代を想う
さて、『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む・著 洸夜』本編の方で一つ大きな節目が終わりましたねぇ^^
あの展開をどう考えるのか、それで見えてくる世界が大きく変わります^^
夏の余韻を残しながら、秋香今日この頃、静かにゆっくり読書を楽しんでみてはいかがでしょうか^^
新聞を読む金色の御髪をした美少年、あるいは美少女。
その表情や非常に難しい顔をしていた。
「おぉ、たけのこの里がついに戦争を終わらせよったか、しかし皆に問いたいの。すぎの子の村をたまには思い出してやってくれとな」
そう言いながら、神様はテーブルにたけのこの里ときのこの山、そして小枝を並べて一つずつ口の中に放り込む。
「むぐむぐ。論争だかなんだか知らんが、お菓子で喧嘩をする人間はいとおかしだな……ぷぷっ、これは面白いぞ! 今度トトの奴に教えてやろう」
神様が腰掛けるというか、背もたれにしているのは、所謂人をダメにするソファー。ここは古書店『ふしぎのくに』でもなければ当然旅行中のトトの部屋でもない。
「神様、今の本気で言ってるん? さむいを通り越して引くん」
神様がくつろいでいるのは二度と行かないと誓ったヘカのマンション、行く場所を失いうろついていた神様はヘカと出会った。ヘカは古本屋で何冊が資料を仕入れていた。そんなヘカの家なら食べ物の一つくらいあろうと嫌々ついてきたのだが、来てみると神様の知っているゴミ屋敷ではなくちゃんと掃除が行き届いている。
「馬鹿め! まぁ今日のところはこの片付けが行き届いているこの部屋に免じで許してやろう」
「ヘカも暇じゃないん! 神様の相手なんかしたくないん。トトさんはいつ帰ってくるん?」
「さぁの、あやつ私からの連絡も無視しておるからの」
ipadでWeb小説を読む神様を見てヘカは「何読んでるん?」と聞くので神様は画面を見せる。
「『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む・著 洸夜』だぞっ!」
「あぁ、貴族病の話なんな。それに出てくるシャルロッテって神様にやや被ってるん。アホっぽいん」
「何をっ! そういう貴様は馬鹿だからなっ!」
実は神様とヘカが二人っきりは珍しい、お互い全くと言っていい程馬が合わない。となると小説の趣味も合わないか? というとそうでもない。神様はあらゆる小説を愛し、ヘカは大好き、好きという開きはあるものの、読まないジャンルという物も存在しない。
「まぁヘカはこの1.5人称みたいな小説は苦手なんけどな」
「馬鹿、貴様。美しい物が欲しくなるという気持ちは分かるか?」
シャルロッテがアデルを口説いた理由、あらゆる美しい物を欲するという。これに対してヘカは虚ろな瞳で言う。
「普通の事なん。誰だって自分の欲する物は自分の美意識に合ってるん。妖怪神様もどきはある意味貴族らしいん。自分の我を通してるん。貴族が傲慢なのは守るべき物に対するプライドの現れなんよ。あと馬鹿じゃなくてヘカなん」
「そうだの。このシャルロッテは一見アホの子みたいだが、作中で一番将の器があると言っても過言ではないの。昔ゼウスというアホがおっての、それによう似とる。まぁこの話は今は関係ない故よしておくか」
ヘカは本作においてそこまで興味を持った事はない。が、シャルロッテというキャラクターの造形に関しては大きな評価を抱いていた。
が神様が言いたい事を言ってしまったので否定的に聞いてみる。
「このキャラクター、ヒロイン人気投票したら、他のキャラクターを殺すかもしれんな」
「この痴女がなん?」
平然と家臣の前で服を脱ぎ散らかす様に対してそういうが、神様は小枝を鷲掴みにして食べるとそれを否定する。
「これも至って普通だからの。貴族は、自分以下の者を同じ生き物として考えん。だから、違う生き物に裸を見られても恥ずかしくないとな。貴様の言う通り、この作品において貴族としては一番こやつがリアルかもしれんの……しかし腹が減った。馬鹿何か食うものはないのか? フレンチトーストがいいぞっ!」
アデルが作るそれを読んで神様の胃はフレンチトースト用になっていたが、当然そんな物はここにはない。ヘカは新しく新調した薄型ノートパソコンを操作しながら、死んだような目で神様を見つめる。
「戸棚にギガマックスがあるん。それ食べるん。あと馬鹿じゃないん!」
まったく、インスタントしか喰うものがないのか、と独り言を言いながら神様は蓋を半分開けたギガマックスに薬味と胡椒とソースを入れて、電気ポットのお湯を注いだ。
すぐにソースの香りが部屋に広がる。
「最上紳士は執事喫茶で働いてたらしいん。年齢から考えるとジェントル枠なんな?」
四十で亡くなった紳士はバリバリのサラリーマン、されど二十代の頃には現実換算すると執事喫茶が存在していない。となると三十代の頃に執事長として働いてたとするのが妥当であろう。そしてこの頃のコスプレ系飲食店、特に女性向けは値段に合う良い食べ物を出していた。
「そうだの。下手クソなピアノ演奏でも女性客から拍手喝采、奇声将来だったしの、時に馬鹿よ。制服物の与える影響は凄いと思わんか?」
ヘカは資料用の大きなパソコンの画面を見つめながら執筆をする。神様の言葉をBGMに返答した。
「馬鹿じゃないん。まぁ凄いんな。最近では日本の作品みたいな制服を着てる外国の子供を見るん。日本の創作物の自由さにたいして現実のドライさ。海外の創作に対しての固さに対して、現実の自由さはまさに異世界なんな」
神様は時計を自分の目の前において三分をドキドキしながら待つ。「この三分は世界で一番長い三分だの!」とか楽しそうにしている。
「神様、その作品。ヘカからすると問題ありなん。空間制圧系能力強すぎるん、パワーバランスがおかしん」
ヘカが言うのは学生食堂でゼクスが生徒達の認識を変えた能力。確かに、言ってしまえばこれを悪行に使えれば能力の得手不得手関係なしに世界征服ができてしまう。
「まぁあれであろう。自分よりも強い奴には通じないとか……そんな感じのな! それより、身分が上の者に食事を差し出されたら、一例して手をあげずに食すのが礼儀なんだがの、おっ! 貴様の好きなバトルパートだぞ!」
ヘカは小説を書きながら神様の話を聞いているが、そこには面倒であるという感情はない。三台目のmacブックを起動し、それで『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む・著 洸夜』をちら見している。
シャルロッテが新人戦で活躍したアデルを除く三人に対して完封するシーン、それをヘカはつまらなさそうに見つめる。
「三体一で戦うんなら、普通は多面攻撃をしかけるのが鉄則なん。守ってる時点で負けを認めてるようなものなんよ」
「ほぉ、貴様もトトみたいな事をいいよるの! ならどうする? 『絶対なる王の領域』のドレイン能力は局所的には無敵にも思えるぞ?」
ヘカは虚ろな瞳を見開き、嫌らしい笑みを浮かべる。
「誰に言ってるん? トトさんと毎晩作品考察して教えてるんわヘカなんよ! ドレイン能力攻略の大一番はオーバークラッシュなん。この世界は魔法力に関して個人による限界差があるん。それを越えるだけ吸わせてやればいいんよ。あるいは吸ってしまえばいいん。これが個人で出来るんわアデル、能力で可能なんわリーゼロッテなん。王の領域でも神なら侵せるんよ」
書く手を止めてヘカはそう言うと、一文に目を止める。ガウェインがエミリアを抱きかかえる姿を紳士は過去の誰かと重ねてみている。
そんなヘカもまたありえない過去を夢想する。窓の外は燃えている。燃えている家でお茶か何かを飲んでいる自分らしき誰か……
「神様」
「なんだ馬鹿?」
「ヘカ達は本当に無から生まれたん?」
「当然だ。何故だ?」
「ならいいん。最上紳士はやはり日本の甘えた国の人間なんな。不正行為をしてでも勝たないといけない人間の事を知らないん。日本人は楽しんできますと言って試合におもむくんわ失礼なんな。相手を蹴落とし出ても勝つ事に固執するのが勝負事なん」
一聞すれば、ヘカの言っている事は外道そのものだが、実際負けて国に帰って行方不明になった者や炭鉱送りになる国が今尚存在する。そして全てを賭して挑んでくる者は時として実力以上の力を出す事がある。
「まぁあれだの。ドーピングも使える競技と国が存在しておるのも事実だな。良い意味で日本人というキャラクターにしておるところはいいんではないか? 逆に聞くが無駄な努力という物は存在すると思うか?」
ヘカは引き出しからエナジードリンクを取り出すとそれをグビグビと飲む。そして当然そうである事を答えた。
「ないん。努力はあらゆる意味で意味を持つん。ヘカは努力なんてしなくても何でも出来るんけど」
ランニングをするか? と聞かれたら神様もヘカも答えはノーであるが……彼らは神々ないしそれに相当する存在、しんどい事は大嫌いであり、自らの快楽を優先する傾向にある。
「しかし、この作品大会ばかりしておるの」
新人戦、学園対抗戦、国別異能対戦。
「ふた昔前の少年漫画的展開なんな。昔はテコ入れが入るとすぐに武術大会の流れに持って行くのが敏腕編集の手段だったん」
「無能編集の間違いであろう? まぁ当時の編集なんぞより、今のWeb小説書いてる作家連中の方が大分まともな展開を作りよるからの」
本作、『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む・著 洸夜』に関して流行りをたまに取り入れるというより、全体的に古い。
その中において、今の空気と流行を取り入れていると言った方がいいのかもしれない。
当然、これらは今までのエンタメ作品があったが故の結果ともいえるかもしれないが、もしこれが二世代前に存在していれば……それ以上はここで述べる必要はないだろう。
もしかすると、リバイバル上映くらいは今頃していたかもしれない。
「やはり、馬鹿。貴様も思うか?」
「当然なん。平成が終わろうとしているのに、平成初期の空気を感じるん。古いん」
「あぁ、古いの……だが、古き良きものだな!」
神様がそういうのでヘカは微笑を向ける。同じ感想だったという事かと神様もお湯を切り忘れていた事を思い出す。カップ焼きそばは数分蒸らしても食べられるのでそこは問題ではない。
ヘカの一言。
「神様、そのギガマックスソース入れてお湯入れてるん。もう食べられないん」
神様は湯切りをすると、ソース色のお湯が排出される様を見て、叫ぶ。
「うおぉ! やってしまったぁ! 何故だぁ!」
何故もなにも神様がギガマックスにお湯を入れる前にソースを入れてしまったからなのだが、神様の慟哭はしばらく続いた。
今回は、作品と作品の間。所謂幕間と皆さまが使われているお話を差し込んでみましたよぅ^^
『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む・著 洸夜』も章の終わりに非常に面白い幕間の物語が展開されます。読まれていない方はいないと思いますが、是非水着回と広告回は読みごたえがありますよぅ!




