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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第九章 『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む』著・ 洸夜
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貴喜開会の始まり

9月ですねぇ^^

またまた台風が来ているそうですが、そろそろ過ごしやすい気候になってくるんじゃないでしょうか?

9月は秋の始まり、それ向けて安定的に楽しめるお話をチョイスさせて頂きましたよぅ^^

読書の秋、朱槍を持っていただくジェントルが織りなす耽美的であり少し笑えてしまうファンタジー。

大人気ジャンル『異世界転生』です!

 困りましたね。

 それが僕の今の気持ちとなります。

 僕の事をご存知ない方の為、簡単に自己紹介をさせて頂きましょう。

 こんにちは、トトと申します。神様に生み出されたWeb小説を広める為の使徒の一人になります。セシャトさんとは姉弟のような、兄妹のような関係で、ヘカさんとは本の貸し借りをする友達のような間柄です。


 服装は朝やお昼はモーニングを、夕方以降は燕尾服を着るように言われています。

 何故かですか?

 僕はWeb小説を紹介するブックカフェの店主。セシャトさんの事をご存知であれば想像がつきやすいかもしれませんね?

 僕はジンベイザメを依り代に現臨された金色の御髪をした全書全読の神様より、Web小説に干渉できる御力をお借りしています。


 といってもお店を開けている事が実は少なかったりします。僕はどうも旅行という物に心奪われてしまい日本の各地を旅しながら、移動ブックカフェを開いています。

 このお話はそうですね。

 不思議な事に巻き込まれました。


 山形県へブックカフェの依頼があり、とある有名な山の上にある神社へと向かった時、僕は道に迷ってしまいました。

 当然一本道なので迷うハズはなかったのですが……このお話は僕が実際に体験した事を少し脚色してお届けできればとそう思っております。

 つたない駄文ですが、どうぞ紳士淑女の皆さん、しばらくながらお付き合い頂ければ幸福の至りでございます。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「さてさて、こんなところに洋館があるというのは実にオカルトじみていますね。右も左も濃霧……では門前にお邪魔してみましょうか」



 トトは片眼鏡を直しながら、懐中時計を確認し時間と方位を見る。時間は止まるどころか、逆に針は動き、方位は定まらない。



「実に分かり易い動きです」



 白い手袋から見える褐色の肌は健康的でトトの容姿、恰好とこの洋館はロケーションとしてはよく映えた。インタホーンが見当たらないので、ドアノブをドアに軽く打ち付ける。

 コンコンといい音が響く。しばらく経っても反応がない。ゆっくり扉に触れてみるとロックはかかっていないが、勝手にお邪魔するわけにもいかないので、濃霧が晴れるまで雨宿りを玄関前でさせてもらおうかとトトは思う。



「GPS情報はどうでしょう?」



 ipadを取り出して現在地を見ようとするが、不思議な事に電波が遮断されている。最後に受信したラインは神様が大きなオムライス画像をトトに送っている事だった。



「オムライスといえば、カレーライスから洋食の王様を奪ったご飯料理ですね。しかし、神様お小遣いUPできたんでしょうか?」



 前日もライン通話で神様が小遣いが少ない、少ないと何度か電話をしてきていたのを思い出す。セシャトに仕送りを禁止されているのでトトはそれをあやすのに朝方までかかっていた。

 そんな中で神様と話していたWeb小説の物語があった。どうせなので、それを読み返そうかと思ったトトだったが、ここは回線が来ていない。

 片眼鏡に触れるとレンズを付けた瞳を瞑る。そして綺麗な姿勢のままipadの画面をタッチした。



「фотлвезебвел(web小説疑似イメージ化)」



 トトのipadには一つのWeb小説の画面が表示されている。0キロデータとして存在しえないファイル。それを読みながらトトは天候にも注意する。

 その作品名。



『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む・著 洸夜』



「神様は人ではない……これは非常に難しい問題ですね。当方の神様も一体何者なんでしょうか? 人が描く神は必ず人の姿をしていますし、この異世界転生系においては尚です」



 それは神は人間だからである。と書くと語弊がありそうだが、少なくとも創造主は人間である。その実、神を人が認識できる物以外で表現をするのが不可能だからだ。



「ふふっ、レディに擦り傷を負わせてしまった事に苦悩するという事に関しては僕も非常に共感できますね。ですが、死ぬ運命にはなかったのに死んでしまったという設定は昔の漫画から絵本まで多彩に使われてきた設定ですが、本来であればそれそのものが運命。運命という物に対しての矛盾。それこそが、天の理を覆した奇跡という事なんでしょうか?」



 そしてその矛盾が引き起こすさらなる奇跡、それは作中の主人公アデルもまた死ぬ運命にあった。それを死ぬ運命になかった彼が転生をするというもの。



「運命に一つの線があるとすれば、矛盾に対して曲がろうとした物を曲がった分反発して戻ろうとするんでしょうね。しかし、神様という存在はいい加減な方が多いと思うのは僕だけでしょうか?」



 神のいい加減さ、無知さ、無能さというものは小説だけにいたらず、実際の宗教書でも伺える一面。それは法治外の存在であるからなのか、ある意味それら宗教観に近いものが深層心理で働き造形されているのかもしれない。ちなみに我々、古書店『ふしぎのくに』の神は書にかからない部分に関しては無能そのものである。



「170cm以上で100キロ近い体重。それで樽の用な姿……実に危険ですね。身長から考えるとそこまでの見栄えにならないハズです。彼の高熱は甲状腺系の病気でしょうか? 最近日本も欧米系の肥満が増えてますからね」



 一切筋肉をつけずに脂肪を蓄えればそうなるのかもしれないが、彼の体系は顔まで変わってしまっている。公爵家での生活で喰っちゃ寝を繰り返すとそうなるのかもしれないが、トトは肥満の原因を生活以外から考えていた。

 彼、主人公の名前はアデル。



「実に、ご両親に愛されたお名前ですよね。私は大変このお名前が好きです」



 アデルは高貴であるという言葉の短縮形、彼は高貴な存在であれと、まさに今からその物語を体現する名前を持っている。

 それ以上に面白いのは紳士がアデルに転生をしてから両親、及び婚約者のリーゼロッテに対面する時だろう。このアデルという少年がどんな生活と性格をしていたかはここでは想像に任せるしかないのだが、公爵家にいながら礼儀作法を学んでいない。

一重に両親の問題であろう。



「僕には両親はいませんが、子供の態度は生活環境といいますからね。それに対して、実質ご両親よりも年上の紳士さんは実に大人の包容力をして懐柔を始めていきます」



 婚約破棄に関して、リーゼロッテではなく、アデルが破棄をした事にしたいとそう申告する紳士であるが、この考えは作品やヨーロッパのまさに紳士の考え方である。

 実のところ、日本国における硬派な一面をヨーロッパの女性は素敵だと思い、このヨーロッパ風のレディーファーストは日本の女性が憧れる傾向にある。

 お国柄をよく捉えているが、ここはリーゼロッテが「当然そうあるべきよ」等と言ってもおかしくはない。自分という存在の価値の高さ、それは傲慢でもなんでもなく、主張しうるに値する称号。



「とりあえず過去の過ちに対して謝罪をする。この項目は紳士さんが思っている以上に効果があるハズですよね」



 公爵、所謂閣下と呼ばれる爵位の存在が、下流の使用人に頭を下げるという事は実はあってはならない。ここもまた日本人である紳士たる所以だろう。

 そこで三か月で三十キロの減量を目標とする紳士、実際十キロやせると人は見た目が変わると言われている。

 アデルのそもそもの容姿が良かったのだろう。平均体重近くに痩せる事でその魅力は十二分に一番近しい使用人にも感じるに至った。



「中身が変わってしまうと、その人はアデルさんと呼べるんでしょうか……そもそも完璧なジェントルである紳士さんというチートを手に入れているわけですからね。しかし、本作は帝国時代のドイツをモチーフに書かれているんでしょうか? であればアデルさんの向かう学校のモデルはあの男子學校でしょうか……ふふっ、言われてみればルードヴィッヒさんはプロイセンの方のように思えてきましたね……しかしルードヴィッヒさん、相手は豚にも劣る人間であっても公爵閣下ですからね。少々失礼がすぎますね。ふふっ。そこが、親のように育ててきた親心なんでしょうか?」



 アデルの三か月前の容姿と態度を汚い物でも思い返すように言うルードヴィッヒにトトはクスクスと笑う。

 そして、アデルが弟と妹を愛でている描写を読む中、自分には兄妹のような存在といえば、あの古書店に住まう魔女。それ以前にトトは戦禍の中自分の手を引く誰かの事を思い出したが、生前の記憶等あるハズもなくふぅと一度タブレットを見るのを辞めた。



「全然、霧晴れませんね」



 たははと困るトトの背中側から、きぃと扉が開く音が響く。そしてしっかりと聞こえる声でこう家主が言った。


『入ってきなんし』


 その言葉のする方にトトは頭を下げて洋館に入る。トトが入ると自動扉のようにギィとその重い扉は閉まった。

 鶴の間と書かれた、薔薇と鶴のレリーフが彩られた部屋を通り抜け、亀の間、狗の間と真直ぐに歩くと蜘蛛の間なる部屋より。


『ここにいかんす』


 入ってきなさいという事かとトトはトントンと戸を叩くと「失礼します」と戸を開く。そこには頬紅を塗ったように赤い頬の子供が振袖を着て深々と頭を下げてトトを出向かえる。

 その子供の美しい事、肌は白雪のようで、髪は椿油で綺麗に整えられている。



「ここな、マヨヒガにようおいでなんし、あちきはここな屋敷主の汐緒しおでありんす」



 深々と頭を下げる汐緒にトトは「面を上げてください」と言いそれに従った汐緒はトトをマジマジとみる。そんな汐緒に向かってトトは胸を利き手に、もう片方に手を背中にまわすと自己紹介をはじめた。



「お招きいただき、ありがとうございます。移動ブックカフェオーナーのトトと申します」



 トトのこのお辞儀はセシャトからの直伝、テラーは読者への従者であるという事から騎士敬礼に近い姿を取っている。

 これに対してアデル、もとい紳士の敬礼はボウアンドスクレイプ、帽子を取り相手を敬うという、騎士敬礼からよりマナーへと昇華したものになる。汐緒は袖で口元を隠し「ひゃっひゃっひゃ」と笑う。

 そんな汐緒を見てトトは口元を緩めて話し出す。



「素敵な着物ですね! ですが、失礼を承知で申しますと男の子が着るには少々派手すぎかもしれませんね」



 目の前の汐緒は口元のみ笑う。



「ぬしさま、いさみでものみなんす?」

「いえいえ、僕は下戸ですから、それより宜しければ紅茶なんていかがですか?」



 そう言ってトトは持ち物の中から紅茶葉と茶器を取り出して見せる。目を細くして汐緒はトトを上から下まで眺めると「もらいんす」と可愛く微笑んでみせた。

『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む・著 洸夜』

本作を読まれていない方は是非、触りから学園入学までまず読んでみてください^^

実に『大人』というチートの面白さを体感できるのではないでしょうか?

異世界転生の安定感、所謂おじさん物としてのリアル感、そして作者さん独自のペシャルソースが本作を

実に名作へと引き上げられています! 

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