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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
幕間 子曰く、打ち切りを欲せざる事施す事なかれ
72/109

うちのこ★ヒーローズができるまで

本作は「ちはやれいめさん」の企画で各web小説のキャラクターを集めてヒーローを作りましょうという企画があり、神様の素敵なイラストを描いて頂きましたよぅ^^

非常に申し訳ないところとしまして、当方の神様は本当に何もできない方ですので、他の皆さんにご迷惑をおかけしなければよいのですが^^

「ヤマネ、本当にこんなところに君と同じ英雄がいるのかい?」



 海賊の船長の姿をしたいかつい男は肩に乗せた小さなネズミにそう言う。ネズミは腰に刺した剣のようなフルーツピックを振って言う。



「ドレイク、何ビビッてやがんだよ? オイラを誘った時みたいに勇気を出せってんだい!」



 いかつい海賊の姿をした男はドレイクと呼ばれ、見た目に対して気が小さい。

 ドレイクは様々な世界を渡り歩き英雄を探す使者。異世界という大海原へ舟を出し、孤独な旅を続けてきた。

 それも全て、オワリノカイヘンに対抗する為、オワリノカイヘンは完結した物語を狂わせるマガコトノハをまき散らし、ハッピーエンドをバッドエンドに、ホラーエンドをギャグに、恋愛をバトル物に、一番酷い物であれば打ち切りエンドにしてしまう力を持った怪異、いや現象と表現した方がしっくりくるかもしれない。


 ドレイクはかつて大海原を航海する海賊小説のキャラクターだった。

 されど、大航海の旅に出るエンドを一面の砂漠に書き換えられ物語は水を失ったかのように風化してしまった。

 悲観したドレイクだが、それを憐れんだ全書全読の神より与えられた力で、他の小説へ航海する力をもらった。その力で色んな小説という名の海を彷徨った。そんな中、『ムゲンノイチノアリス』の世界で出会ったヤマネ。小さいながらもマガコトノハと戦って世界を取り返せばいいと言ってくれた。「僕にはそんな事は……」


 というドレイクに「ドレイクが出来ないならオイラに任せなよ! まずは仲間を集めないとな」

 という事でドレイクの力で別の世界へと彼らはやってきた。

 これは、誰も知らない。小説の改変を救ったヒーロー達が集まる前の物語。

 知る必要もない小さき者達の英雄譚。


『うちの子★ヒーローズができるまで』



「むぅ……これはいかんの」



 セシャトは母屋にあるエアコン修理の為、店を半休で閉めている。トトは山形へと旅行に旅立った。ヘカは、つい先ほど変な集団を引き連れて自分からクレープを強奪していったのだ。

 金魚の形をしたがま口を開くが中には小銭すら入っていない。

 神様は現在オヤツを食べる事ができないでいた。



「一日千円しか小遣いをくれんとか、セシャトは鬼か? しかたあるまい。こんな事もあろうかとお年玉を取っておいてよかったわ」



 ポチ袋を取り出すと中を引き出す。そこには沖縄の首里城が映っている。それを見て神様の表情も思わずニヤリ。



「うむうむ、琉球の城の美しい事よ」 



 二千円札が二枚、計四千円を再びポチ袋に戻すと神様は目を瞑り、すうっと息を吸う。そして鋭い表情に変わる。



「タッチの差だが、ここからなら上野のスイーツパラダイスの方が近いの」



 原宿のスイーツパラダイスは一度行った帰りに、読モだなんだと声をかけられて非常に迷惑だった事を思い出す。それに比べてややマイルドな上野の方が神様には合っていた。良く言えば落ち着いており、悪く言えば神様は年寄りなのである。



「まさか、こんなに早くスイーツパラダイスに行く事になるとはの……セシャトの奴め、私を楽園送りにしたのは貴様だからな。ふふん」



 がたごとと電車に揺られる事十数分、たどり着いた上野は神様を強い日差しで出迎える。



「ふふっ、天も喜んでおるわ!」



 神様の崇高かつ尊い頭脳は自分の胃のキャパシティを計算した上で、満腹中枢のリミッターを外す。神様の依り代はジンベイザメ、その食事量は1日あたり20~30キロのオキアミを食べるわけで、3万カロリー程を1日の栄養としている。

 ケーキであれば10キロ程神様は食べれるのだ。



「喰いつくしてやるわ!」



 神様がケーキを食べるお腹にしていたら、神様の頭にスコーンと何かが当たる。「あたっ!」

と神様が盛大に地面にぶっ倒れると、神様は自分の頭にぶつかった何かを探す。それは掌に乗る程度には大き目のネズミ、それが神様をガン見している。



「むぅ……でかいの。ドブネズミか? しっし! 私は今からお菓子の楽園に行くのだ!」



 神様は回れ右をしてスイーツパラダイスの入口へと向かおうとするその時、大きなネズミは喋った。



「誰がドブネズミだ! オイラは……」

「『ムゲンノイチノアリス 著・ちはやれいめい』に出てくるヤマネであろ? 貴様、自分の領分を犯すとはこれ如何に?」



 神様がそう言うとネズミは驚いた表情をして「ドレイクこいつ、オイラの事を知ってやがんぞ!」

 驚くヤマネ、そして神様は腕を組んで余裕を見せる表情をしていたら、その身体がふわりと浮かび上がる。

 というより持ち上げられる。



「うおー! 首が締まる。パーカーのフードを引っ張るなぁ! 死ぬっ!」



 神様はじたばたしてパーカーからスポット抜ける。黒いシャツのみになった神様は自分を持ち上げた大男から「返せっ!」と言ってパーカーを奪い返す。



「……貴様はドレイクか? 久しいの!」



 大男は神様を見て首をかしげる。そして手をポンと叩くと恥ずかしそうに神様に向かってこう言った。



「君、英雄になる気はありませんか?」

「は? 図体のみでかくなりおって、頭の中はすっかすかのパイ生地にでもなったのか? 私だ! 貴様に物語を渡る力を与えてやったのを忘れたか?」



 ドレイクは驚愕の表情を見せて空いた口が塞がらない。神様の姿を頭のてっぺんから足のつま先まで見て言う。



「あの神様ですか? 神々しく、美しく、偉そうさは今と変わりませんが、今のお姿は? 子供になられたのですか?」

「まぁ、色々あっての、貴様等何をして……まぁよいどうせだ。スイーツパラダイスを奢ってやろう。そこで話を聞こうではないか。ヤマネ、人型を取れ、さもないと店内で捕まったら命の保証はないぞ?」



 ヤマネは「なんだこの子供は、まぁいいけどよ」と言うと人型を取る。そして神様に連れられてスイーツパラダイスへと入店。大人料金と子供料金を二人分、券売機で購入するとそれを渡して席に案内される。



「わわっ! ケーキが沢山あるぞ。なんでぇここは? 食べていいのか?」

「ふふっ、慌てるなヤマネ。ハーゲンダッツも食べ放題だ」



 神様は大量のケーキを皿にのせる。ヤマネもケーキにサンドイッチにと食べたい物を取り皿に入れ、ドレイクだけは珈琲をカップに入れて周囲の目線を気にしていた。

 なんせ、ドレイクとヤマネの恰好は目立つ。それだけではない。神様とヤマネの容姿は美少年、美少女と言うにふさわしく、逆にドレイクは強面である。

 このメンツの闇の深さは否応なしにも想像してしまう。



「なんだドレイク、それだけか? 遠慮せずに好きな物を好きなだけ食べるがいいぞ?」

「そうだぜドレイク、こりゃーすげーうまいぞ!」

「はぁ……」



 バクバクとケーキを胃の中に溶かし込んでいく神様とヤマネ。神様は一皿ペロリと食べ終えるとドレイクにフォークを向けた。



「で? 貴様等は何をしておる?」



 神様は再び大量の苺タルトを皿の乗せてはそれをつつきながら、ドレイクの話と、そしてヤマネの補足を聞く。



「ほうほう、色んな場所で英雄をとな?」

「おい神様だっけ? オイラ達と一緒に戦ってくれよぅ! ドレイクにこんな力を与えたんだ。神様は凄いんだろ?」

「うむ! 私は凄いっ! がしかし、私は書物に関する事しか何もできんし正直力にはなれんよ。まぁ、なんだ! あどべんちゃーず! みたいなヒーローには憧れん事もないがの、まぁ他を当たっておくれ」



 神様がハーゲンダッツを取りに行こうとした時、一人の女子中学生が頭を抱えて暴れる。食器を地面に落としながら虚ろな瞳で神様達のテーブルへとやってくる。



「オワリノカイヘンだ!」



 怯えるドレイクにヤマネは腰の剣を抜こうか迷っていた。躊躇している理由、人を傷つけてしまう事への不安。



「ちぇーすとぉおおおお!」



 神様は今にも襲い掛かろうとする操られた女子中学生の頭に渾身のチョップをお見舞いする。そして神様はゆっくりと崩れる少女が倒れないように支えるとぺしぺしと少女の頬を叩く。



「大丈夫かの?」



 少女はゆっくりと目を開けると神様に覗かれて赤面する。そして「……はい」と恥ずかしそうに答えると神様は目を細め笑って見せた。



「そうか、マガコトノハに好かれるとは、中々の本好きかの? 最近本は読まれなくなってきておると聞く、そのまま育っておくれよ?」



 神様は適当な椅子に少女を座らせるとヤマネ達の元へ戻る。今尚余韻に浸っている少女の熱い視線を神様は知らないが、この少女が後に小説の大作を生み出し、文学賞で受賞する未来を神様は予見していた。

 そんな神様は再びケーキを食べはじめるが、ヤマネもドレイクも一連の行動に関して頭がおいつかないでいた。



「おい、神様! おまっ、普通にぶん殴ってオワリノカイヘンなんとかできるのよ?」

「私を誰だと思っておる! 特殊能力がなければ物理で殴ればよいのだ!」



 神様のその台詞にヤマネはむしゃむしゃとケーキを平らげてから大きく口を開けて笑う。



「よし、ドレイク。神様をヒーローとして連れて行こうぜ! なぁにオイラが言うんだ。神様はヒーローにたる素質があるぜ!」



 ドレイクは小さな声で「神様、英雄になってくれますか?」

 と言うので、むぅヒーローかと神様は考えて頷く。



「まぁ、しかたないの! まさか二人というわけにはいかんだろ? 戦隊ものでもそうだが、五人くらいいてヒーローだからの、次は何処へ行くのだ?」



 それはまだちびっこと剣士に出会う前、みんなのWeb小説を守るヒーロー達が出会い。冒険し、そしてオワリノカイヘンを倒すまでの語られない物語。

 いつか、お小遣いが3000円になると信じて、頑張れ『うちのこ★ヒーローズ』世界を救うその日まで!

 

 ご愛読ありがとうございました。神様達の次回作にご期待ください。


 

オワリノカイヘン、恐ろしいですねぇ^^

この物語の最後が完全にカイヘンされてしまっているような気もしますが、また他の皆さんの作品ともコラボレーションできる時があれば嬉しいです!!

ヤマネさんと神様、中々良いツーショットでしたねぇ!

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