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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第八章 『誰が為の黄昏~魔法と死に損ない共の物語~』著・雨宮 葵
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夢の具現化、未完の完成品

8月は実はアップデート月になります^^

何のアップデートですか? と思われるでしょうね! ふふふのふ^^ それは公開のお楽しみです!

最近またWeb創作界隈に不穏な空気が流れているよな気がしますので、それを吹き飛ばせる風になれば嬉しいですねぇ! でもでもちょーっとこのアップデートもやりすぎ感がありますので、不安でもありますねぇ^^

 両親は今日もいない。

 アリアはベビーシッターが作る食事を食べて、勉強をして、プールの開放日だからプールに行って、そしてやる事がなくなったので、ベビーシッターが作ってくれたおやつを持ってあの怪しげな古書店へと向かう事にした。



「せっかく、新しい水着を買ったのに……秋文君。田舎に帰ってるなんてショックだわ。せっかく夏休みは避暑地にも行かなかったのに、こんなところに通わないといけないなんて」



 アリアの家は所謂お金持ちである。

 されど、アリアは空気の読める子供であった。まわりと自分の生活レベルがかけ離れないように、メディアの事もある程度調べ、それでていて両親に求められている技能や勉強もしっかりと努めていた。目立ちすぎず、小学校生活を終える。それがアリアの一番の目的だった。

 そうだったハズなのだ。彼に、倉田秋文に会うまでは……


 同じクラスにいる倉田秋文は勉強も運動もそれなりで、特にこれと言って秀でたところがあるわけではなかった。

 だが、彼はひたすらに優しく、誰にでも人懐っこい、これほどまでに美しい魂を持った人間がいるだろうかとアリアは思った。彼が欲しい。彼の心が欲しい、されどアリアは一番にはなれなかった。


『セシャトさん』


 秋文が嬉しそうにそれでいて誇らしげに呼ぶ名前、そんなセシャトさんが働く古書店『ふしぎのくに』で本日も敵情視察という事だ。



「アリアさんは珈琲はいける口ですか?」

「馬鹿にしないで、ブラックでください」



 エアコンの温度が適温に設定された母屋でアリアはセシャトに貸してもらった疑似小説文庫を広げながらセシャトに言う。



「このお話、何がしたいのかいまいち分からないわ」



 神様がアリアに指定した事には何か意味があるのかもしれないが、セシャトはふむと考えた。この作品、確かに読み手を相当選ぶ。



「序章から第一章で物語の場面ががらりと変わりますからねぇ。この導入に関してはどうでしたか?」



 序章での予備知識を入れて第一章に入ると黄昏という組織について以外白紙のまま新な主人公達が登場する。

 そして彼らの説明の後、彼らは訳の分からない自作ボードゲームの話が始まる。短編集のような独特の展開を独特の表現で進めていく本作『誰が為の黄昏 ~蝶と死に損ない共の物語~ 著・雨宮葵』頭から最後までを一貫した体裁で進める作品を小説らしい定番と言うならば、本作は珍味である。

 さらに言えば、Web小説らしいとも言える。

 自由な作品という物があるが、まさに作者が書きたい物をより具現化させた作品が本作。『誰が為の黄昏 ~蝶と死に損ない共の物語~ 著・雨宮葵』なのだ。



「視点移動が目まぐるしいですわね」



 コトンと珈琲を置き、アリアの瞳は文字を追う。本作は基本的に小学生を対象年齢には書かれていない。人間社会の闇の部分、また人間の暗黒面をを書かれ、それでいてその世界の中で正常に生きている雪斗、槻、時雨。三人の主人公を軸にキャラクターに追従する形の物語。

 アリアにとって本心としては紹介されたいものはこれじゃない感がひどく強かった。

 何故なら、アリアは暴力的な描写をあまり好きとは感じない、されど今夏読書している本もまたある程度の暗黒面を持っていた。そういう意味では以外にも『誰が為の黄昏 ~蝶と死に損ない共の物語~ 著・雨宮葵』の世界感は受け入れれる範囲であった。


 そして本作が時折見せる文章表現の独特さ、実に国語の教科書じみているのだ。古い表現、くどい手法、鼻につく会話回し、単発で使うと短所になりやすいそれらを自然と読ませる。少なくとも小学生のアリアには自然に入ってくる。黙ってアリアが読んでいるのでセシャトは邪魔をせず、少し覗き込む。



「この暗闇2の冒頭から中盤まで、別人が書いているの? と思ってしまいましたわ」



 おやとセシャトは反応する。この暗闇2の槻がジュースを飲みながら始まる部分であるが、なんのことはない場面描写であるが、なんとも上手い。実に読み、読まされる程の文章が続く、されど途中や次の話に入るとそれは続かない。



「ふふふのふ! そうなんです! この部分は作中屈指の表現をされているでしょう。この作風のブレは図書館や本屋さんの本では読めませんよぅ!」



 Web小説を公開する多くの作者はアマチュアである。当然、突き詰めていけば弱点も多い、されど、奇跡的と呼ぶよりは才能の片鱗とも言える感動を覚える物語や文章に出会う事がある。それこそが、Web小説の醍醐味とも言えるだろう。



「そうですね。でも、私は後の文章も嫌いでなくてよ? すぐに物語が盛り上がらないというところなんて素敵じゃないかしら? ただ少しやりたい事を書きすぎているかしら? ふふっ」



 クスクスと笑うアリア、それは馬鹿にする嘲笑というよりは、可愛い子犬を愛でるようなそんな笑い。彼女も相当数の本を読んできたのだろう。

 それ故、これを書いている作者の気持ちをある程度トレースできている。暗闇3は2とうって変わって読み疲れを起こしやすい、誰がどの組織で、何をしているのか? という情報が一気に入ってきて混乱しやすい、これをアリアは完全に読み解いた上で、表現したい場面を少し盛りすぎたとそう判断した。当然、アリアのように読み切れる読者もいるが、少々難しい場面でもある。



「アリアさんはお歳のわりに、渋い読み取り方をされますねぇ。実にWeb小説初めてとは思えません」



 Web小説を初めて読む読者は多く、その作品に対して面白いか面白くないかという至極当然な感情を抱くのだが、アリアはこの作品の特徴という物を楽しみだしている。

 それはアリアが本の虫であるという事。



「アリアさんにお聞きしますが、本作の面白いところってどこでしょうか?」



 キャラクターものとして、ストーリー展開、作品の雰囲気に感じる暗黒面、また物語を童話のように仕立てているところか?

 そんな本作のファン達とは一線を画す回答をアリアはする。



「何もない時、事件もアクションもない場面の動きがとっても素敵ですわ。この本はこの場面を読むだけでも面白いかもしれませんわね」



 セシャトはこのアリアという少女はWeb小説を読む為に生まれてきたのではないかと感じる。

 会話文こそ、ラノベやコミック調でありながら本作の地の文、特にアリアが言うように何の変哲もない場面の描写。動き一つ一つは目に浮かぶような鮮明さを持っている。これは恐らく作者も狙って行っているのではないのだろう。

 作者の読書量がそうさせるのか、実に読ませてくる。そして、このアンバランスさ、未完の完成形ともいえる作風がなんとも病みつきになる。


 これこそが本作が人を選ぶ所以、正直に言うとこのごちゃごちゃ感は嫌う読者にはとことん苦手と思われるかもしれない。

 されど、ハマる人間、文章を読み取るスキルが高ければ高い程、新しさを随所に感じれるかもしれない。

 それは本作がWeb小説という物を実に体現した作品であるからかもしれない。

 なんと作者曰く、本作は夢で見た物をベースに肉付けし生み出された作品であるという。



「夢で見たものを文章に起こしたの? そんな事できるのかしら? 私も素敵な夢を見たと思っても、すぐに忘れちゃうし……」



 はじめて子供らしい表情を見せるアリアにセシャトは指を口元に持って行くとふふふのふと笑う。



「夢は儚いという言葉をご存知でしょうか?」



 有名な言葉である。

 しかし、セシャトはアリアが小学生であるという事を忘れていた。秋文同様妙に達観している為、ついつい普段の調子で話していた。それに気づいたセシャトだったが、アリアは少し考えてから答える。



「チェイシングアウターレインボウの事ですわね? 願いは叶わないという意味ですわよね?」

「あらあら、随分古いお言葉をご存知ですねぇ。虹の外側を追いかけても見つからないと確かに表現されますね!」

「父がアメリカ人だから……」



 それを聞いて何度か頷くとセシャトはコホンと咳払いしてみせた。夢は儚いというのは確かにアリアの言う通りなのだが……



「眠りから覚めた時に、記憶から消えていくあの夜に見る夢の事を儚い夢と本来言うんですよ! 夢は色々説があるんですが、記憶と願望のハイブリットだと思います。深層心理の記憶と願望がハイライトされる為、中々覚えておくことができないのかもしれませんね! 本作の作者さんはそれを鮮明に覚えていたんですよ。これは面白いと思いませんか? 願いは叶わないという意味の夢は儚いという事を覆したんです」



 少しばかり熱く語るセシャトにアリアはお冷を一口飲むと、その屁理屈じみたトンチに対して反論をしてみせる。



「その説は面白いかもしれませんけど、何も叶ってはいなくないかしら?」



 ふっふっふとセシャトは少し悪そうな笑顔を見せる。それにゾクっと背筋が冷たくなるアリアだったが、セシャトは中々に面白い事を言ってのけた。



「作者さんは、ご自身が無意識化で出会ったキャラクター達を現実世界に作品として残せたんですよ? そして私達読者もまた出会う事ができました」



 夢をかなえるという事はアリアの中では目標や願望に対してそこに着地する事だとばかり思っていたが、単純に夜寝てみる夢を具現化させる。

 夢を叶える。

 とは面白い言葉遊びだとここは鞘を引く事にした。



「ポケットモンスターの名前とか出してますけど、大丈夫なんですの?」



 任天堂の看板機種。今尚根強い人気の本作だが、元々のコンセプトが家にいながら昆虫採集ができるような物という事で、今やポケモンGOという外に繰り出してポケモン採集が出来ているのは実に興味深い話かもしれない。

 されど、今はその事ではなく著作権のお話である。



「そうですねぇ、〇を使ってぼかしていますが、実際商業目的でなければ問題ないでしょうね! 昔は宣伝に値するという事で厳しかったようですが、その名残が本作にも見て取れますねぇ!」



 アリアはこのセシャトといる時間が段々と楽しく思えてきた。古書店『ふしぎのくに』なんて場所が地図にない事も忘れ、セシャトとの考察や感想の言い合いを楽しむ。

 破天荒なキャラクターが多い『誰が為の黄昏 ~蝶と死に損ない共の物語~ 著・雨宮葵』の流れにも随分慣れてきたところで、神様の姿がない事に気が付いた。



「そういえば、セシャトさん。カミサマさんは?」

「神様は老人会に詩吟を読みに行っていますよぅ!」



 詩吟の知識はさすがにアリアも疎かったが、あの神様は独特で綺麗な声をしている。あの声で読まれる詩吟は黄昏るかもしれない……そんなつまらない事を考えながら、自分と同じ年で詩吟を読むとは一体何者だと興味を持つ事になる。

 そう、彼女の不思議な夏休みはまだまだ始まったばかり

さて、アリアさんと秋文さんですが、オーバー小学生ですねぇ! 

ついつい私も大人相手のように話し込んでしまいますよぅ^^

『誰が為の黄昏 ~蝶と死に損ない共の物語~ 著・雨宮葵』実はお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらは創作当時このタイトルだった為、そのまま進めさせて頂いています^^

実に独特な世界観をお持ちの本作、まさに『黄昏時』なんでしょうか? 是非是非お愉しみ頂ければと思います!

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