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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第七章 『ヤドリギ』著・いといろ
61/109

我等宿木友永久超絶不滅

そうですねぇ、今回の物語はかなり異質な物となっています。さてさて、この紹介小説が伝えたい物ってなんなんでしょうね? 私も止めたんですけどねぇ、これはこれでありなのかもしれません!

それではお楽しみください!

「あれなんすか? 多分未来の機械っすよね?」



 ミレーヌとルーラーには見覚えがあるらしく、ルーラーが説明する。



「私が管理用端末に対して、あの方はイラーシャ。重犯罪者用の抹消端末です。恐らく、ミレーヌ様を過去改変の容疑で抹消に来たんでしょう」



 いよいよアレな感じになってきたところで、ヘカは頭から羽ペンを取り出す。そして何やら欄とミレーヌには聞き取れない言葉、ルーラーは何かに反応したようだったが、首をかしげる。何も起きないのである。



「こんなときに使えないん……」



 ハァとため息をつくと欄は言う。



「あれ、まだ私等の事気づいてないみてーっすよ。とりあえず逃げるっす?」



 一同は隠れながらこれからどうしようかと考える。そこでヘカが妙案を考えれるわけもないので、欄はとんでもない事を提案した。



「あの機械ぶっ潰せるかやってみるっす? 丁度駅のコインロッカーに色々入れてるっすよ。やるならルーラーさん、力貸してもらえるっす? その剛力が私等の唯一の武器っすから」

「欄お嬢様、了解しました」



 眼鏡を取ると欄はそれをしまう。いつも通りの表情でヘカに手を振った。



「じゃあ、ヘカ先生はミレーヌさんとその辺で隠れててくださいっす。爆発音が聞こえたらそのままアジトに向かってください」



 ヘカは何も言わず欄とルーラーを送る。



「欄さんいっちゃったよ」

「欄ちゃんはフリッツ君みたいに自ら仕事を見つけて行ってるん。凄いん。欄ちゃんは生き残る為に戦おうとしてるん。斑鳩とは違うんな?」



 ここに来てヘカが『ヤドリギ 著・いといろ』の主人公をディスるような発言を見せた。それにミレーヌははじめてヘカの表情が作り物のようである事に気づいた。



「ヘカ先生、それって?」

「斑鳩は分かりすぎてるから壊れてるんな。壊れようとしてるんな。それがタタリギに壊してもらう事なのか、タタリギとの闘いに身を投じて壊れようとしてるのかは読者次第なん。ミレーヌちゃんが言ったタタリギにはヤドリギは勝てないかもしれないという事を一番斑鳩が考えているん。だから斑鳩の心を保っているのは斑鳩班のみんななんな? あれがストッパー、誰かひとりでも欠けたら、斑鳩は自分の考えと整合性が取れて完全に壊れるん。と、ヘカは今まで読んできた色んな作品から夢想するんな。だからヘカ達も行くん! 未来のポンコツ君を粉々にするんよ!」



 恐らく読者としては二パターンの捉え方をするだろう。斑鳩はサイコパスなのか、あるいは人間らしいと思うのか……

 ミレーヌはそのヘカの言葉と背中には所謂主役級という姿が似合うと思った。ミレーヌはなんてカッコいいのか、なんて凄いのかと自然にヘカの手を握る。



「はい!」

「欄ちゃんは主役級じゃないん。なのに、仕事ができすぎるんな! あーいうのは次話あたりでぽっくり死ぬん。真似しちゃダメな姿なん」



              ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ふひひっ役得っすねぇ!」



 ルーラーにお姫様抱っこされながら、人のそれとは思えない速度で駅のコインロッカーまで運ばれた欄。大きな荷物を入れるそこの鍵を開けると折りたたまれた銃火器の入ったバックを取り出す。



「あれってこのくらいの火力で足止めくらいはできるっすか? これ全部対人用なんでまともに役立ちそうなのはこれくらいっすけど」



 そう言って見せる大きな手りゅう弾。



「管理世界において、イラーシャを攻撃した前例はありません。それ故、この世界の水準の火力で破壊が出来るかは予測しかねます」

「成程っすね。しっかし、私は消し屋みたいなのとは毎度縁があるんすね。ルーラーさんはこのパイナップルをできる限り至近距離であのデカブツの足元に投げてくださいっす。その間に私がこれでカメラ的なところぶち抜いてみるっす」



 ちゃっちゃと欄は鞄から取り出した狙撃銃をくみ上げるとフルサイズ弾を手際よく入れていく。



「索敵は不要っすから、あとは場所取りとエイムっすね。私にも式鷹とかそういう力欲しいっすね」



 案外知られていない事として狙撃はあまり高いところから行うのは好ましくない。出来る事なら平面、あるいは少し高台というのがベストポジションである。欄はきょろきょろとあたりを見渡す。AKBカフェ二階、なんともいい場所がある。格子のような物で欄の姿を眩ませる事もあり都合がいい。



「日本のスーパーアイドルに感謝っすね」



 グローブをはめると欄はヘッドホンをつけ、スコープを覗いた。こんな状態だというのに欄は正体不明の黒い獣との戦闘を思い出して口元が緩む。



「全く、こんな経験中々ねーっすよ」



 ドンとつまらない音が響く、これが物語ならドガァーーーンとかもっと景気のいい音なんすかねと欄は苦笑して、イラーシャのカメラアイのような場所に向けて引き金を引いた。狙撃銃の弾丸で装甲を抜けるとは全く思っていなかったが、カメラアイ。あそこを潰せば機能停止くらいはできるんじゃないかと淡い期待をした。



「まじっすか……」



 カメラアイのある部分が目を閉じるようにしまわれる。そしてカツンと空しい音と共に欄の放った弾丸は弾かれた。第二射の準備を欄はしようとするが、イラーシャは砲台より光を放つ。欄は退避したものの、店自体には何の損傷も与えず、欄の狙撃銃のみを消し去った。



「ち、チートじゃねーすか!」



 さすがにこれはまずいと欄は店を後にし、ルーラーと合流を果たそうとする。そこに欄のよく知る人物が仁王立ちしていた。



「ヘカ先生」

「助けにきたん。アレ壊せば間違いなく未来変わるん」



 もっともらしい事を何のプランも無しに言い放つヘカ、そしてその後ろにはミレーヌ。



「なんで戻ってきちゃうんすかね」

「ミレーヌちゃんに物語の戦いとリアルの戦いの動きの違いを実演で教えるチャンスなん! 黒い獣戦リアルバージョン。どれだけ第三章が文章による動きを見せているのかよくわかるんよ!」



 こんな時に呑気な事を言うヘカ。忙しく動かす文章の方法として、句読点を使いまくったり、あるいは長文を息継ぎなく続ける。そして本作『ヤドリギ 著・いといろ』においては『ーー』止めるという事で動きを表している。素早く動く、止める。次の動作という連続アクションの表現。



「いいんね。読み応えがあるん」

「そんな事言ってる場合じゃねーすよ? あれどうするんすか? 多分聞いても意味ねーんでしょうけど」



 ヘカは頭より羽ペンを取り出した。



「あのポンコツ君の相手はそれ相応のキャラクターなん、この神様がヘカにくれた羽ペンは物語りに書き込んだり、書き出せたりするん。まぁ今まで一回しか成功した事ないんけどね」



 まさにこの状況で奇跡を起こせとそうヘカは言う。



「ルーラー」

「はっ、馬鹿様お呼びですか?」

「馬鹿じゃないん。ヘカなん。今からコンビニに行ってモンスターエナジーと激強打破かってくるん」



 ヘカが千円札をルーラーに渡すとルーラーは風のような速さでコンビニへと向かう。ミレーヌは今の状況にドキドキし、欄は呆れた顔でイラーシャの様子をうかがう。



「これ、マジで全員お陀仏かもっすね」

「欄ちゃんはやっと主役級になってきたんね。ロールたんみたいに考えすぎなん。タタリギとあのポンコツ君どっちが強いんかすぐわかるん。第三章は感性で読むんよ! くだらない考察や感想なんていらないん」



 ここにて小説の楽しみ方究極の一つを解くヘカ、そんなヘカに跪き二本のドリンクを献上するルーラー。



「よくやったん。これで準備は整ったんよ。右にモンスターエナジー、左に激強打破、併せてハイパーモンスターエンジンなん」



 欄は(うわあああ)とか真顔で思いながらその様子を見る。

 二つを器用に開けると大口を開けてそれをヘカは飲み込んだ。ヘカの全く整えていない髪がストパーを当てたように真直ぐに揃い、そして伸びる。さらにヘカの体もどことなく成長しているようだった。



「ケプっ……こんなもんなんね」



 そこにいるのは、東洋の魔女とでも表現したらいいのか、全くの別人だった。



「ヘカ先生、声まで変わってるっすよ!」

「ヘカ(魔力)切れなんでドリンクで補充したん。あとは呼ぶだけなんよ」



 そう言ってスマホに向かって黒い羽ペンを刺すとこう何とも言えない低い声でヘカはスペルを唱える。



「фцумновн(Web小説疑似書き出し)」



 ヘカの髪がやや短くなり、少し背が縮む。



「まだなん! もう一人いくん! фцумновн」



 ヘカはいつものサイズにいつも不摂生な姿に戻ると左右に渦巻く書き出した何かにこう言った。



「力を貸すん! アールたん、アーリーンたん!」



 これには欄も笑うしかなかった。ミレーヌは失神しそうな表情、ルーラーは極彩色の瞳をパチパチとさせる。

 黒く渦巻いたそれが消えると共に、そこに『ヤドリギ 著・いといろ』の主人公アール、そして作品内の作品として登場するアーリーン・チップチェイスの姿があった。ヘカは間髪いれずにアールに抱き着く。



「出来たん。家に持って帰りたいん!」

「近い……誰? あなたタタリギの感じが……する」



 もう片方のアーリーンはそんなヘカに剣を向ける。そんな様子にもヘカはご満悦したところで状況の説明をした。ここは二人の世界でない事、どうしょうもない状態だから助けてほしい事、そして……



「ヘカは、二人が大好きなん。愛してるん。そんなヘカの全力を注ぎこんだ二人にお願いしたいん! このミレーヌちゃんに物語の力を見せてあげてほしいん!」



 そんなヘカの申し出にアールはやや引きながら小さくこう言った。



「よく分からないけど、あれを壊せばいいの?」



 うんうんと頷くヘカに対して、アーリーンは違った。剣をミレーヌに向けて言う。



「貴女があれを討ちなさい。要するに貴女が連れてきたんでしょう? その代わり力は貸すわ」



 何とも言えない緊張感の中でヘカは鞄からレットブルを取り出すとそれをガブ飲みし、もう一度羽ペンを使った。そして一本の巨大な対物ライフルを取り出す。



「ディケイダーを込めてるん。これであのポンコツ君にとどめを刺すん!」



 ミレーヌは受け取ったそれを抱きしめるようにアールとアーリーンに頭を下げて頷いた。その状況で不気味なくらいにパカっと口を開いたヘカは叫ぶ。



「てかWeb小説を未来で消した奴なんなん! ヘカはWeb小説を今年の1月から書きだした古参なん。Web小説を消すとか、親を消された気分なん。ルーラーにも分かるん。Web小説の楽しさが、ヘカはブクマ3件に閲覧数軽く三桁行ったんサーセンなん。 多分、この一撃はミレーヌちゃんとヘカ達が一緒に読む最後のWeb小説になるん。我等宿木友永久超絶不滅!」



 ゲーマーの欄がそういえばそういうコピペがあったなとか思ったが、それに合わせてアールとアーリーンが駆ける。

 超兵たるアールの速度と同等の動きを見せるのは、アーリーンが作品の中のさらに作品キャラクター所以か、彼女の神技とも言える斬撃が、アールの比類なき撃牙が現実世界最強手りゅう弾でもびくともしないイラーシャの足を崩した。



「「今!」」



 二人のスーパーヒロインの掛け声と共に、ミレーヌは詩絵莉を思い出し、見せてもらった対物ライフルの狙撃姿勢で引き金を引いた。事実とはあまりも無情、体制を崩したイラーシャーはそれに救われ、ミレーヌの放ったディケイダーの直撃を回避。アールとアーリーンは第二撃の体制を取るが、イラーシャーの砲台が動くので退避する。その砲撃は当然の如くミレーヌへと向けられた。

 全てを消し去るイラーシャの光。その前に立つ人物。



「ルーラー!」



 誰が叫んだのか? 誰に向けてなのか……彼は消去されながらも親指を立てる。



「Web小説は未来に必要な物、そう判断いたしました。欄お嬢様、ヘカ様、ミレーヌ様をどうか元の世界へ」



 ルーラーは光を受けきり消滅した。イケメンの消失はヘカの心に大きな負荷をかける。虚ろな瞳をより一層暗くさせ。静かに言う。



「ヘカはみんなを駒だと思わないん。ヘカを含めて盤面なん! これだけのメンツを集めて変わらない未来なんてないん! 欄ちゃん観測手をするん。ミレーヌちゃん、あと一発残ってるんよ! 構えるん。隙はヘカが作るん。ポンコツ君にもう二度目はないん!」



 そう言ってヘカはイラーシャの元へと駆ける。そしてそのままアールとアーリーンに声をかけた。



「アールたん、アーリーンたん! 思いっきり地面を殴るん! 砂塵を巻くん」

「なんで?」

「分かった」



 物分かりのいいというよりは指示に的確に従うアールにアーリーンも渋々従う。イラーシャーの壊れた足元を再び装甲を越える破壊力でダメージを与え、そのまま地面を討つ。イラーシャの目の前にヘカ。自らを大きな的にヘカは言う。



「ヘカごとでいいん討つん」



 それを見て唾をのむと欄は静かに言う。



「ミレーヌさん、発射っす! 信じてください。あの馬鹿だけど愚かじゃない不摂生の化身と私と、貴女が読み心震えたキャラクター達を」



 覚悟を決めたミレーヌは引き金を引く。砂塵の中誰にも見えない状態でヘカはイラーシャのカメラアイに向かってこう言った。



「ポンコツ君の……ううん、ふざけた未来(神)の最期なん。ミレーヌちゃんは純種の最期を一人で読むんよ」



 ミレーヌはまだ純種にディケイダーを叩きこんだところまでしか読んでいない。その決着を知らないのだ。

 カメラアイが捉えたヘカの姿は表現する事のできない真っ黒な翼を持った獣。それに向けてイラーシャの放つ光はその黒に届かず、その黒の中から一発の回転する弾丸がイラーシャを撃ち抜き、周囲をまばゆい光で包んだ。

なんでしょうね^^ ヘカさん、ちょっとカッコよく書かれすぎじゃないでしょうか?? なんだか、戦ってしまってますしねぇ! 『ヤドリギ <此の黒い枝葉の先、其処で奏でる少女の鼓動>・著いといろ』本作ですが、何も考えずただ一重に楽しんで頂きたいと思っています! それだけの力を持った作品ではないでしょうか? 次回、7月紹介作品最終話『Re:Birth Arkadia』

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