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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第七章 『ヤドリギ』著・いといろ
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つまらない話の運び方 未来からの追跡者

むむむむっ、神様のお小遣い1日に3000円というお話が出ましたがそれはさすがに容認できませんねぇ^^

さて、皆さんは1000円のお小遣いがあったら何を買いますか? 少し贅沢をしたお菓子でしょうか? それとも欲しかった本でしょうか? 私はこの前、少し小さめのスイカを買ってしまいました^^ 冷やして古書店『ふしぎのくに』の皆さんと食べたいですねぇ!

 欄はミレーヌの言葉を聞いてそれがよくない者であると判断、すぐに隠し持っていた銃をイケメンの頭に向けるが欄の行動を読んでいたかのように、軽々と手をひねり上げられる。



「なんなんすかこの人……」



 それにミレーヌは恐怖に顔を歪めてこう言った。



「僕の住む、管理世界の管理人代行『ルーラー』人の行いや生活態度から整合性があるかどうかを測って、40パーセントを越える不整合人間を強制的に更生収容所に連れていくんだ! なんでここにいるの? 嘘でしょ! 過去にまで僕を追いかけてきたの?」



 ミレーヌの言葉にルーラーは反応する。欄を掴む手を放さずに首だけミレーヌに向けるとこう言った。



「アインハルト、ミレーヌ・アインハルト。時間逆行の大罪、有害書籍であるこの時代のWeb小説を閲覧した罪、懲役にして6000年。帰りましょう。私は貴女の罪を軽くする事に努めさせていただきます」



 口の端を噛みながら、観念したようにミレーヌは一歩踏み出そうとした時、ヘカがルーラーの前に出る。

 ルーラーはヘカを見て空いている手を差し出した。それにヘカはへっと笑って握る。「役得なん!」と一言を添えて。

 ヘカに触れたルーラーは五分程何かをぶつぶつと呟いた後にイケメンの表情を崩さず、体中から蒸気を吹いた。



「不整合人間確率940%」



 そう一言述べるとルーラーと呼ばれたイケメンはぶっ倒れた。その様子に欄は呆れ、ミレーヌはその様子に「凄い!」

 と一言叫んだ。

 とりあえず、ご近所の迷惑になると不味いのでルーラーをヘカの部屋に運び込む。こんな状況において欄はルーラーの服を脱がしていく。



「な、なにやってるん! 欄ちゃん、18禁はアウトなんよ! 一発バン喰らうん!」

「何言ってるんすか、ヘカ先生! これ未来の機械なんすよね? ちょっと中身に興味あるんすよ。二人はお茶でもしながら、『ヤドリギ 著・いといろ』でも楽しんでてくださいっす!」



 そう言って欄は見た事もない工具と自分の端末を取り出すと、ルーラーを運び奥の部屋へと消えていく。その様子にミレーヌは空いた口が塞がらず。ヘカは何も無かったかのように言う。



「じゃあ、ミレーヌちゃん。ヤドリギ読むん」

「はい!」



 エアコンの温度を適温にするとヘカは頭から羽ペンを取り出してラップトップに刺す。そして呪文を唱えるが何も起こらない。



「この羽ペン壊れてるんな?」

「ヘカ先生、そんな事よりリアちゃんのパイ食べてみたいね!」



 再び漫画飯、この作品はところどころで人間模様のスパイスを演出するのがいい得て上手い。ナッツのパイという物にヘカは夢想する。



「……むかし、どんぐりのペーストで造ったお菓子を食べた事があるんよな。いつだったん?」



 ヘカがぼんやりと何かを思い出そうとしている中、ヘカの裾をぐいぐい引っ張られる。ヘカが強制的に現実世界に戻ってくる。



「アールって病気なのかな? パイを食べるのを躊躇してるよね?」



 伏線という物の楽しみ方も意味ももしかするとミレーヌは知らないのかもしれない。ヘカはチップスターをパーティー開けして一枚をパリんと食べる。



「アールたんは、アガルタから来たん。アガルタには秘密が一杯なん。ミレーヌちゃんは今嫌な予感を感じてるんな?」

「うん」

「なら、今はそれだけでいいん。ごちそうの中でもデザートは最後に食べるもんなんよ? それより、ギルやんとアールたんの買い物の話はよくできてるんね。つまらない回なん」

「面白くないの?」

「違うん、これといってイベントを立てない回、物語は緩急があって盛り上がるところで盛り上がるん……こういうところで伏線を作るのが基本なんね」



 と言ってもそれもミレーヌには伝わらないので、ヘカは鳥のくちばしみたいにチップスターを二枚咥えてそれを一口でカチンと食べるとミレーヌにこう言った。



「でもここは、中々お目にかかれない『ヤドリギ 著・いといろ』の中々ペアにならないキャラクターとの絡みを単純に楽しむんな!」



 こういうシーンは年代によって楽しみ方が違ってくる。キャラクター物として羨しいと思ったり、つまらないシーンとして安心して読んだり、逆に先読みして切なくなったりと……緩急の話は無限に世界を広げてくれる。

 ヘカは一杯レッドブルをミレーヌに付き合ってもらおうとした時、ヘカの和室からの襖が開かれる。その人物にミレーヌは再びおののいた。



「る、ルーラー!」



 そう、未来からミレーヌを連れ戻しに来たタキシードのイケメンである。それがヘカとミレーヌをじっと見つめて端正な唇を開いた。



「ミレーヌ様に、馬鹿様」

「ヘカなん!」



 いきなりディスられたヘカはルーラーを睨みつける。彼の後ろから欄が一仕事終えた顔をして現れた。



「ふひひっ、いやぁー未来の機械。堪能したっすよぉ! とりあえず私達の言う事聞くように書き換えておいたので、危険性はもうねーっすよ! ね? ルーラーさん!」



 欄がそう言うと、ルーラーは跪いてこう言った。



「はい、欄お嬢様」



 その光景を見て、ミレーヌは自分の管理世界の管理者を服従させる欄に開いた口が塞がらず、ヘカは欄だけ特別な呼び方をしている事に激昂する。



「ちょっと、欄ちゃん! それずるいん! ヘカも! ヘカもお嬢様つけるん!」

「いや、無理っすよ! ルーラーさんブラックボックスが多すぎて私の端末全部ダメになっちゃいましたから、もういじれねーっす! 『ヤドリギ 著・いといろ』何処まで読んだんすか? ルーラーさんは全部今公開してるところまで読ませたんすよ!」


挿絵(By みてみん)



 軽々と欄がとんでもない事を言ってしまっている中、ミレーヌはマックのラップトップを魅せる。

 第二章の中盤。

 そしてミレーヌは手をポンと叩いた。



「欄さんはフリッツみたいなんだ!」



 その言葉を聞いてルーラーが反応する。明らかに無理やり欄が何かを書き換えた為か、ルーラーは一瞬動きを止めた後に口を動かす。



「フリッツとは『ヤドリギ 著・いといろ』において第二章三項から登場する。技師でございます。他技師と違い独断で改修や改造を行う為、鼻つまみものになっていたところ、斑鳩暁に拾われ、詩絵莉の趣味を赤裸々にさせた人物となります」



 という風にルーラーが丁寧に説明してくれるので、ヘカとミレーヌは少々閉口する。フリッツは腕こそ確かだが、明らかに他の人間の理解できない事を行ってしまい、またそれを上手くプレゼンテーションするような器用さは無かった。

 まさに興味のみで行動しルーラー(支配者)を逆に支配してしまう御業をヘカとミレーヌに見せつけたのだ。



「いやいやいや、自分はもう少しコミュニケーション能力高いっすよ? どちらかと言えばフリッツさんは不摂生さもありますし、ヘカ先生みたいな感じじゃねーすか?」

「ヘカはヤドリギなん! 毎回アムリタの代わりにエナジードリンクたっぷり飲んでるん!」



 日々ヘカの飲むエナジードリンク量はまさに致死量。でなくても身体に異常をきたしてもおかしくはない。そんなヘカがレッドブルのプルトップを開けようとした時、ルーラーに腕を掴まれる。



「な、なんなん? 離すん!」



 ちょっと嬉しそうに言うヘカに対して、ルーラーは真顔でヘカにこう忠告した。



「馬鹿様、本日はその有害飲料の健康を維持できる規定量を越えている為、お控えください」



 遠くて腹を抱えて笑い転げている欄を恨めしそうに見ながらヘカは叫ぶ。



「外出するん!」

 


 ヘカが靴を履いて外に出るので、ミレーヌは当然。しかたなく欄もそれにお供する事にした。突然ルーラーがヘカの部屋について語る。



「清潔度80%。よりよい整合人間の生活空間と呼べるでしょう」

「「なっ!」」



 ヘカと欄が同時にルーラーの指摘に反応する。ヘカにはこの環境を肯定されている事へ、欄は自分が散らかった部屋を完璧に掃除したつもりだったが、それでも八割という判断。



「くっ、だからローレッタちゃんみたいな何でも取りやすくしてるんがよかったん!」



 欄が初めて入ったヘカの部屋は腐海の森そのものであった。足の踏み場もない部屋に万年床、それは人の住む空間とはいいがたかった。それと文章で読んだローレッタの部屋を比較する。



「いや、違うっすよ! ヘカ先生の部屋はただのゴミ屋敷っす!」



 ローレッタのようにあえて散らかっている部屋という物も最近ではセンスの一つとして部屋のコーデの一つとされている事がある。所謂理想的は配置というやつだ。

 そんな物とヘカが元々暮らしていた空間は比較にするのもおこがましいレベルの環境であった。外に出たヘカと欄はルーラーの言葉に胸をズキズキと突かれながら、遠くから大きなクレープを持った子供が歩いてくる事に気が付いた。



「あの子供すっげぇ美形っすね」

「神様なん」

「やっぱ……知り合いなんすね」



 ヘカと欄は原宿の竹下通りでクレープを買う奴がまさか地元にいるとはと思いながら、満面の笑みでクレープを見つめてこちらに気づかず向かってくる神様。それにヘカはルーラーにこう言った。



「あの神様、じゃなくて子供からクレープ盗ってくるん」

「かしこまりました。馬鹿様」

「いあ、ヘカなん!」



 いつもの掛け合いの後に、ルーラーは神様の元へ行くとゲンコツを食らわしクレープを奪う。それはなんとも酷い光景であった。神様は「私の一日分のお小遣いで買ったクレープだぞ! 返せっ!」と叫ぶもののルーラーはそれを持ってヘカの元へ戻る。ヘカは渡されたクレープをパクりと食べ「うまいん」と表情を緩ませる。



「き、貴様! 馬鹿ではないかっ!」

「ヘカなん、神様いい気味なんね!」

「ば、馬鹿! 貴様今に見ておれよ!」



 そう言って神様は涙目で走り去っていく。それにヘカは満足したような悪い顔を見せる。神様から強奪したクレープを食べ終わるとヘカは言う。



「このまま街に行くん。気分が晴れたんな!」

「ヘカ先生、あんな小さい子から盗っちゃ可哀そうじゃないのか?」

「あれ、あーみえてもヘカを生み出した神様なん。セシャトさんは神様を甘やかすからお小遣いあげすぎなんよ!」



 またつまらない事で自分の生みの親に牙をむくものだなと欄は呆れるを通り越して感心してしまっていた。



「ヘカ先生は自分に忠実に生きてるんすね」

「そうなん! ミレーヌちゃん、アーリーン・チップチェイスの言葉覚えてるん?」



 いきなり質問されて、ミレーヌは少し目を瞑ると朗読する。



「傲慢になって愚かな周囲を笑うよりも、わき目も振らず戦って、そして死になさい。後悔が残らないように。眠るとき、誰かに胸が張れたとき……そこにこそ、生きた意味はある。だったかな?」



 うんうんと頷いてヘカは人差し指をミレーヌに見せると「正解なん!」と失礼な事をする。そしてヘカは虚ろな瞳で欄とミレーヌ、そしてルーラーを見てこう言った。



「ヘカは神様と喧嘩するん。それはヘカはヘカだからなんな。宿命も使命もあるんよ? でもヘカは自分の生き方を貫くん。それが誇り高くヘカがヘカでいれる事なんよ! だから、未来の世界にミレーヌちゃんとルーラーはWeb小説を持ってかえるん! その為ならヘカは力尽きても協力するん!」



 ギラギラと虚ろは瞳を輝かせるヘカにルーラーが物申した。



「馬鹿様、それでは未来が変わります」

「ヘカなん! 変わればいいん! Web小説のない未来なんてないものと同じなん!」

未来の機械の方を改造してしまう欄さんも凄いですが、ヘカさん……本当に困った方ですねぇ^^

神様を泣かせちゃダメじゃないですか。本編でも語られているように直接本編にかかわりのないお話って実はストレスを感じる反面、本編よりも人気が出てしまう時もあるんですよねぇ^^

私は『ヤドリギ <此の黒い枝葉の先、其処で奏でる少女の鼓動>・著いといろ』の食事シーンが大好きです^^ 是非是非皆さんも漫画飯を楽しんでみてくださいね!

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