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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第七章 『ヤドリギ』著・いといろ
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やどりぎクラスタ 名作への一つの条件

皆さん、あまり梅雨なのに雨が降らないな~と思っていましたが、なんだかすごい事になりましたね^^

自然災害の多いこの国ですが、人々は古来からこの自然災害とやりあってきましたから起きた時はまず深呼吸をして、冷静に行動をしていきたいですね! 今回もサイゼリア神〇町店が登場します^^

たまにここでミーティングをしていたりしますねぇ!

 一同は近所のサイゼリアにやってきていた。ヘカは虚ろな瞳でサイゼリアの禁煙席につくとこう言った。



「今日は欄ちゃんの奢りなん、ミレーヌちゃん、なんでも遠慮なく食べるんよ!」



 欄はヘカのマンションに身を隠させてもらっている。確かにそれから、自分の身が危険にさらされる事はなくなった。ヘカ自体が何かをしているとは思えないが、彼女達は欄の想像を絶する奇跡を起こす。その影響の一つだろうかと、宿代わりに欄は食費の負担を買って出ていたが、このヘカ遠慮がない。



「ヘカ先生、それ私がお金出すんで、私がミレーヌさんに言う事じゃねーっすか?」

「気にしないん」



 ミレーヌは、ファミレスという名前こそ聞いた事はあるが、食事は全て管理され栄養バランスを考えられた給食だったので自分でメニューを選ぶなんて事は考えた事もなかった。

 そしてスマホ、タブレット端末、ラップトップ、携帯ゲーム機とテーブルに広げる欄とヘカ、この行儀の悪さは管理世界では粛清ものである。



「食事はたのしくっすからね! ヘカ先生のこの流儀だけは自分も賛成っす」

「あたりまえなん、動画を見ながら、アニメを見ながら、歌を聞きながら、ゲームをしながら、Web小説を読みながら好きな事をしてご飯を食べるん。チョリソー三人前なん!」



 ヘカはよほどの常連なのか、店員さんも異質なヘカ一行をなんとも思わず接客する。フリードリンクを三人分頼んだので、ヘカはミレーヌを誘ってジュースを入れにいく。



「これ、自分で入れるの?」

「そうなん! ミレーヌちゃんWeb小説はじめてだから新鮮に何もかも読んでるんけど、この『ヤドリギ 著・いといろ』は前書きの使い方が上手いん。ヘカの予想なんけど、この作者漫画を描きたかったんじゃないんかなって思うん。それか目下修行中なん……とかねん。この作品、前書きで前回の簡単なあらすじを使って、あとがきを使わないん。挿絵を多用する事で、固定意識を読み手につけさせるん。見事としか言えないん。弱点があるとしたら、文章のみの時にキャラクターの書き分けが分からくなる時があるんな」



 ヘカが山ブドウサイダーを入れながらそう言うのをミレーヌは小型のスマホみたいな端末を出してメモを取る。

 欄は運ばれてきたチョリソーをフォークで刺しながらまたヘカがいい加減な事を言っているんだろうなと呆れていた。



「まぁ、自分誰の子分でもいいんすけど、ヘカ先生程ヤバイ人、見た事ねーっすね。そもそも『ふしぎのくに』関係者ってどうやって生活してるんすか?」



 ラップトップの画面を見て欄は『ヤドリギ 著・いといろ』の素直な感想を想った。正直、痛い(古い)と思える表現がところどころあるのだが、それが痛いというより、しっくりくる。そしてその所以は……



「なんか、漫画みてーっすね」



 その一言はヘカを調子に乗らせる。



「欄さんも漫画みたいって……やっぱりヘカ先生すごいぞ!」



 欄の一言がヘカの株を上げる。ヘカは鼻高々な表情をして席に座ると欄にウーロン茶を渡す。そしてこう言った。



「今、ミレーヌちゃんが読んでるところで矛盾の回収をしてるん。ヤドリギの小隊は本来、斑鳩達の二倍から三倍のところ、斑鳩達は四人で行動してるん。そこに最新設備を持っているとか付加価値を当てて、表現を書ききれる四人に収めてるん。むかし、とあるラノベで一人称で四人分の視点を書いてのけた作家がいたん。それは特異なパターンなんけど、三人称でも人を多用するのは難しいん。さらに会話文を長くしないという趣向もこらしてあるん」



 ヘカは山ブドウサイダーをワインのように揺らして、エスカルゴを食べる。



「でんでんむし美味いん」

「ヘカ先生、食欲無くなる事いわねーでくれっす!」



 ヘカがでんでんむしというエスカルゴをミレーヌは恐る恐る箸でつまむとそれを口の中に放り込んだ。



「あっ……おいしい」



 サイゼリアの食事は値段に反して味はしっかりしている。ヘカがめちゃくちゃ食べても1万程あれば事足りるだろうと欄は明太子パスタを上品にスプーンを使ってまとめる。



 ラップトップの画面を凝視して、パンチェッタにかぶりつくミレーヌはそれをごくんと飲み込んでから素朴な疑問をヘカに投げかけた。



「ヘカ先生、このヤドリギの世界で元々仲間だった人がタタリギとして出てきた時、斑鳩達は当然戦うつもりでいるけど、ヘカ先生なら戦える?」

「戦えるん。むしろ仲間だから自分が討つん。違うん?」



 ヘカはあたりまであるという顔でサーロインステーキを大きく切り分けてそれを口に放り込んだ。この一言にはさすがの欄も笑えなかった。ヘカは多分出来てしまう側なんだろう。それは命を救われた自分だからよく理解できる。ただし、ヘカとセシャトさんが戦った場合、ヘカは返り討ちにあるのではないかと欄は表情を変えずに想像していた。



「僕は、この斑鳩班みたいな仲間が……羨ましいよ」

「ヘカもなん」



 それには欄も反応する。



「そりゃ自分もっすね! 創作物に出てくる仲間ってホントいいっすよね! 利害関係で動いていないみたいな! ヘカ先生なんていつも自分に食事たかるんすから! 少しは斑鳩班、見習ってくださいっす!」



 作品世界の関係が羨ましいと思った事は、何かしらあるんじゃないだろうか? 所謂部活物であったり、スポーツ物であったり、はっきり言ってリアルにあの関係はほぼ存在しえない。本作ではその羨ましい関係を読者に読ませている場面が多々見つかる。それは一つの魅せる作風の方法とヘカと欄考えている。

 そしてここでミレーヌが二人も考えもしない事を言ってのけた。



「詩絵莉さんは、なんだか遊んでいるというか。気が緩んでいるというか、緊張感を感じなくない?」



 それを聞いたヘカと欄は食べている手が止まる。おいおい、そんなところ突っ込んじゃうのという欄の表情に対してヘカはぴくぴくと怒りを隠せないでいた。

 これはミレーヌが悪いわけではない。はじめてちゃんと読むWeb小説……どころか、エンタメ作品なのである。だから、荒廃した世界で、呑気に話をしている人がいるとは思えないミレーヌ。

 欄は恐らくこの物語のファンであるヘカに口を開かせる前になんとか諫めようかと、辛味チキンを手で割って食べると汚れた手を拭いてから話し出す。



「そうっすね! ミレーヌさん、追い詰められた状態で常に張り詰めた心境でいたら人間病気になっちゃうっす! 有名な本で『ナルニア国物語』って作品があるんすけど、その作者さんの言葉で、どうしようもない状況では妄想や物語に意識を遊ばせるのがいいみたいな事を確か言ってるんすよ! この状況での詩絵莉さんにとっては今この状態が日常なんす。だから、特に焦る必要もなく、焦る程の状態でもないんす。余裕があれば冗談の一つでもいうのが人間ってもんすよ? ですよね? ヘカ先生」



 これで、ヘカの事もたてつつ、この場を抑える事が出来るだろうと欄はハァとため息をつく。ミレーヌにとっては今の時代は情報の宝庫であった。

 それ故に学び、そしてそれを答えてくれるヘカと欄がいる事は彼女にとっては自由に飛び回れる空のようなものであった。



「もう一ついいかな? 斑鳩班の人たちって優秀なんだよね? どうしてその優秀な人たちが不遇な対応を受けるてるの? 僕の世界なら、優秀な人たちは上位市民権を得て、それなりの仕事と、それなりの生活を約束されてるんだけどな……」



 ミレーヌの疑問に対して、こちらも欄が上手く答える。



「世の中ってのは、馬鹿の方が出世するようになってるんすよ。あまりにも賢すぎたり、できすぎる連中は、無能者よりも排除されるもんなんすよ……それは小説の世界も現実世界も変わらないのかもっすね。ソースは私って事でいいすかね?」



 少し喋りすぎたと欄は後悔したが、三杯目の山ブドウサイダーを飲んでいるヘカが重い口を開いた。



「大小あれど、どんな物語でも書いてるのは現実を生きる人間なん。その生きる人間の生活と、環境と、想像を物語の世界が超えるのは難しいん。それを超えた時その作品は真の名作になるん」



 ……とヘカが言うので、ミレーヌは目を輝かせてそれをメモる。だが、欄は何処かでそれは聞いた事があるようなセリフだなと思っていた。

 だが、ヘカの次の言葉を聞いた時、欄は絶句した。



「詩絵莉たんは、おちゃらけてるけど、一番この物語でマジな生き方をしてるんよ? 有能だけど欠落し、のけ者にされた自分を必要としてくれる仲間と居場所があるん。それは、とても嬉しいことなん。詩絵莉たんは、斑鳩班の中で誰よりも、それを感じてるん。だから、絶望的な世界でも冗談を言えるん。今が彼女にとって最高なん」



 このいいかげんな不摂生の化身があのセシャトみたいな事を言っている事、欄は目頭が熱くなるのを我慢し、口の両端を噛んだ。終始感動しているミレーヌを横目に冗談ぽく欄はヘカに言ってみる。



「たまにはヘカ先生もいい事言うんすね?」

「ヘカは、読み手としては……セシャトさんに1mm程劣るん。だから、ヘカはヘカのやり方で物語を楽しむんよ」



 そう言ってウィンクすると「あっ!」とミレーヌが驚く、そしてマックのラップトップの画面を指さした。



「斑鳩さんのセリフ!」



 それはローレッタを暁が誘うシーン、ヘカ程読み込んでいれば暗記でもしているのだろうが、ミレーヌは自分が今読んでいる作品の楽しみ方をあらぬ方向から教えてくれるヘカにある種の恋をしているような表情を向ける。



「ふふっ! ぞくぞくっと来たん? それならミレーヌちゃんもヘカと同じ、やどりぎクラスタなん!」



 その言葉を聞いて「ん?」と欄は首をかしげる。



「ヘカ先生、それって何かあんま良くない言葉じゃないんすか?」



 創作クラスタという物の中では、それは禁忌として使われる事も多いこの『クラスタ』という単語だが、実のところ、オタク界隈で同じ物を愛する連中の集まりである。そもそも、IT用語からきている物を厨二病をこじらせた言い方なのだが、Web所説界隈では悪しきイメージが非常に強い。



「欄ちゃん、有名な言葉を教えてあげるん。好きな物を好きと言えないなら、それはその世界が狂ってるん? クラスタがアレなら、ヘカはやどりぎレギオンなん!」



 それって意味一緒じゃねーすか? とヘカに言いたいが彼女はあらゆる言葉を使い、自分の考えを曲げないし、両手を組んでヘカを拝んじゃうミレーヌを見て、欄はため息をつくとこういった。



「ちょっとカプチーノ入れてくるっす」

さて、ヘカさん勝手に語りますねぇ。物申させていただくと、業務外ではないでしょうか?

もしかしたらお気づきかもしれませんが、読み手としての私、書き手としてのヘカさん。やはり物語を読んだ時の感想という物は随分違います。心の何処かで、自分ならどう書くか、あるいは越える事が出来るのかとか考えてしまうヘカさんです^^ そして、ヘカさんの推し作品ですからねぇ。熱が篭ってます!

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