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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第六章『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語』著 言詠 紅華
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キャラクターの人数と読み分け難度 桜と菊の名所

雨の音というものは私は凄い好きなんですよね^^本を読んだり、お茶を頂いたりしながら雨音をBGMに楽しみます。ですが、さすがに梅雨シーズンは気がめいりそうになりますねぇ!

湿度が高いと体調を崩しやすいそうなので、皆さんも体にはお気をつけを^^

 セシャトは東京の神保町へとやってきていた。二週間に一回は訪れる日本最大の本屋の街、ここにいるとセシャトの体調はすこぶるよくなる。Web小説の為に存在するセシャトではあるが、様々な人の手に取られた古書という物の力は、インターネットが無かった時代で今のWeb小説に匹敵するとセシャトは考えていた。有名な作品もさる事ながら、一作しか出せなかったような歴史の影と共にあったようなレア作品それらの空気を吸う事は温泉に浸かるに等しかった。



「これ、昭和初期発行なのに百二十円です。買っちゃいましょう!」



 古書店『ふしぎのくに』には高価な本は殆どない、ないと言い切ってもいい。何故なら、国家予算を出されたとしても売れない本は実際2点程ある。されど、その価値を理解できる者は多分いない。間違って買われないように母屋に大事に飾ってある本。

 それ以外は全て数百円で買う事ができる本当に儲ける事を度外視したお店であった。セシャトが目を輝かせて古書を選んでいる間、大き目のスタジアムジャンパーを着たヘカが眠たそうに言う。



「まだ終わらないん? 多分神様達が癇癪起こすん、シアちゃんが店番してくれてるのはちょっと驚きなん、西のセシャトさんみたいな人だからてっきり古書店めぐりについてくると思ってたん」



 セシャトは本を選びながら、ヘカにこう言った。



「少し、ご対応頂きたいお客様がいらっしゃったので、その方は多分私よりもシアさんの方が作品を心から楽しめるんじゃないかと考えました」

「何の作品なん?」

「『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語・著 言詠 紅華』です」



 その名前を聞いてヘカは少しばかり冷や汗が出た。少し前にこの作者の物語繋がりでえらい目にあったのがまだ記憶に新しい。



「この作品、鴉がわりといい役割持ってるのが悪くないん。六華将は作者が可愛く、カッコよく描こうとしているのが伝わるん。でもヘカはもっと上手にかけるんよ?」



 ヘカお得意の、自分もこの程度はできるアピールをするがセシャトはいつもの事なのでそれを聞き流しながらいくつか本を棚から引き抜く。

 それにハァとため息をつくとヘカは店を出た。鞄の中からレッドブルを取り出すとそれを飲む。そしてスマホを開くと『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語・著 言詠 紅華』のページを開いた。そこでヘカは独り言を呟く。



「同時に複数のキャラクターを書き分けるのは見事なん……でもたまに誰が喋ってるのか分からなくなるん」



 小説の基本という物がある。これは基本でしかないので必ず守るべきというわけではないが、キャラクターは少なければ少ない程、情景描写は想像しやすい。小説という物は作者の意識を越えて想像をする場合と、作者の創造力に追いつけない場合という物がある。それが、今回ヘカが読み分けが出来なくなった瞬間であった。

 一度戻り読み直し次の項目へとヘカは目を走らせる。



「六華将同士の戦……胸熱なん」



 スマホの画面を見ながらレッドブルの空き缶を屑箱に入れるとヘカは自然に手を上空に上げる。電線にとまっている烏がそれを見てヘカの指の上にとまる。ヘカはその事に気にも留めず小説を読み進める。カァと鳴く烏にヘカは視線を向ける。



「狼と貴方達どっちが強いん?」



 どちらも群れなす動物、されど狼と烏であれば烏に勝ち目はまずないだろう。烏は何を言っているんだコイツはという目でヘカを見つめる。



「ヘカは、狼よりヤバいラーテルと喧嘩してるんよ?」



 スマホをしまうと鞄からあたりめを取り出し烏に与える。そして空に烏を戻すとヘカは自分もあたり目を口にした。



「桜である薙瑠と菊である狼莎、どちらも日本の国花なん、菊の方が若干優遇されてるんけどね」



 ヘカはこの神保町で桜と菊が見れる場所に行きたくなった。丁度ほこほことした顔でセシャトが紙袋一杯の古本を持って店より出てくる。



「ヘカさん、お待たせしましたぁ! これから何処かで甘い物でもごちそうしますよぅ! 何処がいいですかぁ?」



 ヘカは目を少し瞑ってから希望を伝えた。



「靖国神社行くん」

「えっ? 神社ですか?」



 ヘカの希望を聞いてセシャトはついていく。立派な境内のある神社、国際的には色々とややこしい事を言われているこの神社だが、実は桜の名所として有名な事を地域住民以外はあまり知られていないのがもったいない。



「甘い物は中で食べれるんよ」



 それは……とセシャトは思うと手をポンと叩いた。お土産兼食事処、最近では随分減ってしまった家庭的食堂のような場所が神社の中にあるのだ。

 ソフトクリームを二つセシャトは頼むと一つをヘカに渡す。ヘカはそれを無言で受け取ると一舐めして今は青々とした桜の木を見つめる。



「ヘカさん、何見てるんですか?」

「セシャトさんには見えないん? 百花繚乱……違うねん。大華の乱舞、桜並木と菊の紋。ここは厨二心をくすぐられるん」



 ヘカはこの場所で、英霊が眠ると言われているこの神聖な場所で薙瑠と狼莎の剣舞を夢想した。セシャトはヘカが見ている物を想像、そしてシンクロする。



「ダメですよヘカさん、不謹慎です。確かに最高のロケーションかもしれませんが、ここはダメです」



 ヘカの瞳に色が戻る。今まで何処かにトリップしていたかのようだったヘカは少し不満そうな顔を見せる。



「人の夢想にまでケチつけられたらダメなん。ここは烏も多いし、ヘカの具合が随分よくなるん。セシャトさんが古書店巡りしてる時と同じなん」

「それって……」



 ヘカは珍しく大人っぽい笑みを見せてソフトクリーム部分を全部食べるとコーンを空に投げた。その瞬間、大勢のカラスたちによってソフトクリームのコーンは空高く上がっていく、それそのものが生き物のように……



「この物語は三国志、それも日本で造られた物語をベースによく練られてるんね。何処かで見た、読んだ、知ったって感じがするん。でもパクリじゃないん。姜伯約が鬼として出てきたん。この男、最後はクーデター未遂を起こして処刑されるん」



 それは史実と呼ばれる話であり、実際のWeb小説はベースこそ三国志であるが、まったく違う世界の物語、どちらかと言えば扱い的に日本の物語なのだ。

 がしかし、今のヘカにはセシャトも口出しがしにくかった。病院でしばらく入院していた頃くらい健康的で目の下の隈がなくなっている。それ程までにヘカに合ったパワースポットなのかもしれない。



「桜、薙瑠は、鬼切丸の事なん?」



 さて、日本には鬼を切ったという刀が何本か存在する。有名な物として髭切、同一あるいは別の物として安綱。恐らくはこれらの逸話もモデルに同じく鬼切丸の異名を持つ穢れた天下五剣の鬼丸国綱。

 薙瑠は鬼を切る桜であると濁の首領に子元は教えられる。結局意味を理解はできないのだが、戦をするにしても圧倒的不利な濁が動くという事の意味を軽んじては読めない。このままヘカをこの神社にいさせると本当に神の領域に到達しそうだったので慌ててセシャトはヘカを引っ張る。



「もう、ヘカさん行きますよ!」



 ヘカは靖国神社を出ると段々ときりりとした美少女の表情から髪の毛はあらゆる方向に跳ね、一層目の隈は酷くなり、瞳は虚ろで死んだ魚のようになる。この時期に熱くはないのだろうかとセシャトは思うが、ロングマフラーにくるまるヘカ。

 虚ろな瞳で神社を見つめているのでセシャトは無理やりヘカをこの場所から離した。



「どうしたんですかヘカさん?」

「作品との同化をしたからなん? ちょっと見えないモノが見えたん」



 それは先ほど夢想していた物語という事ではないのだろう。セシャトは基本的にそっち系耐性はない。



「なななな、なに言ってるんですかぁ! 冗談はやめてくださいよぉ!」



 おどけるセシャトにヘカはいつも通りのダウナーな感じで横に並び歩く。沈黙の時間が続く中ヘカが呟いた。



「セシャトさんは体を持った時の事、覚えてるん?」



 それはまだ神様が天の声のような存在だったころだろう。当然覚えている。2018年一月一日のその日、自分は自我と体を持った。



「え、えぇ。ヘカさんは?」

「覚えてるん。でも、その前の事は覚えてないん」



 それは……とセシャトがヘカに聞き返そうとした時、華が咲くようにセシャトは経験した事のない情景が目に浮かぶ。

 これは一度目ではない。ヘカがインフルエンザにかかり、欄と即売会の会場でも同じ感覚に陥った事がある。



「ヘカ達はまだ『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語・著 言詠 紅華』で言うところの蕾華なんかもしれないん」

「まだ咲いてないと? もし、華が咲いたらどうなるんです? 開花したら凄いパワーアップとかしちゃうんでしょうか?」



 セシャトのその幼い質問にヘカは口角を緩ませる。ヘカはそれに対して面白い反応を見せた。



「華の命は短いん、蕾華が開華した時、それは同時に散華するときなん……とかだったら激しく嫌なんね」



 てへっと普段絶対にしないような表情を見せるヘカ、それにセシャトは呆れ、ハッと気づいた。



「ヘカさん、もしかしてパワースポットに充てられて酔ってます?」

「……正解なん……セシャトさん、エチケット袋」

「あ、あるわけないじゃないですかぁ! お、お手洗い、お手洗いまで我慢してください!」


さて、和風作品を読むのに神社という場所のロケーションは外れないですねぇ^^ 実際に神社で本作『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語・著 言詠 紅華』を読み、かき氷を頂きながら話し合い、読み合いをしてたりします^^ 紹介小説をお届けするにあたり、いくつかの書籍による資料も当然用意するんですが、こうやって神社に行くという体感型の資料も紹介小説には必要になってたりします^^

ヘカさん、そういえば紹介作品の作者さんの作品に二回程絡んでるんですよね!

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