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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第六章『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語』著 言詠 紅華
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シア姉さん登場 真直ぐに叱れる者

さてさて、台風がそろそろ来るシーズンですねぇ^^ 皆さんコロッケもいいですが、今川焼を買いだめして台風を乗り切りましょう! 今回は大阪のシアさんがやってきますよぅ! このシアさん、西日本 関西・中国・四国・九州と全ての方言を操る私も色々勉強させて頂いている方です! 今年の5月から古書店『ふしぎのくに』をお手伝い頂いています!

 珍しく古書店『ふしぎのくに』で店内にラジオが流れていた。基本的には店内のBGMはクリスマス等のイベントシーズでもない限り静かなクラシックをセシャトがチョイスしている。



「ありがとうございましたぁー」



 本日の古書店『ふしぎのくに』の店番は出向社員として古書店運営の勉強をしにきているシア。着物にエプロン、少し青みがかった御髪の色は赤い着物がよく映えた。

 一般的な接客、本のメンテナンス、仕入れた本の整理、そして古書店『ふしぎのくに』名物、オススメのWeb小説紹介と言ったところであった。

 シアと話をしにきたのは高校生くらいの女の子。



「シアちゃん、また何かちゃっと読めて楽しめる作品ってないかな?」

「そうやねぇ、お客様は少しミステリアスな作品を好まれますから、『隠世の存在 著・言詠 紅華』なんて楽しめるんとちゃうやろかぁ?」



 セシャトのノートパソコンでその画面を開き、女性徒に見せる。それを少し読んで満足した女性徒はシアに微笑む。



「後でじっくり読んでみるねぇ! そうだ今度ケーキでも食べに行かない?」

「よろしおすなぁ、こういう不思議な物語は、不思議な存在を呼び寄せたりするから、お客さんも寄り道せんとはよお帰りなさいませ」



 シアの少し面白い語りかと思って女生徒はシアの頭を撫でて店を出ていく。入れ替わりのように一人の少年が入店する。



「ほぅら、宜しくないお人が迷い込んできなさった」



 シアの瞳が猫みたいに鋭くなる。入店した少年はシアを見つめて少し考えると挨拶をする。



「こ、こんにちは」

「いらっしゃいませ、でもこんばんわの時間ですねぇ、店長代理のシアです」

「あっ、最近来るようになった宮藤です」



 入店した少年は和、セシャトに会いに来たのだが知らない店員が働いていて少し戸惑っていた。どう考えても儲かっているようには思えない古書店『ふしぎのくに』セシャトが一人で切り盛りしているものだとばかり思っていた。



「あーあ、セシャトさんがいなくて来て損したなぁ~、みたいな顔をされていて大変心苦しいのですが、店主のセシャトは只今留守にしております。もし、御用がセシャトさんであればお帰りはあちらですえ?」



 そう言ってシアは入り口を指差す。妙に帰れオーラを出しているシアに従おうかと思ったが、和はもしかすると彼女でも『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語・著 言詠 紅華』の話ができるのではないかとふと思った。



「あ、あのシアさんはWeb小説とか読まれるんですか?」



 ギロリと和を睨みつける。彼女の金色の瞳は獣のように縦割れし、和を捉える。そしてカウンターで頬杖をつく。



「このシア姉さんに、Web小説を読みますかぁ? どこのクソほっこか知りませんけど、なめとったらくらしますえ?」



 表情は変わらず、聞きなれない方言、きっと罵声を浴びせられているのだろう和は素直に頭を下げた。



「気分を害させたようでごめんなさい」

「はん、東のセシャトさん、西のシア姉さんって言ったらWeb小説伝道師の二大巨頭ですえ? 覚え時はなれ、宮藤和さん。『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語・著 言詠 紅華』の話しにきたんでっしゃろ? セシャトさんに聞いてます」



 とんでもない地雷娘を前にしてしまったと和はビビる。セシャトさんと同い年くらいなのか? それとも見た目的に年下なのか? あるいは年上……の可能性も考えられる。



「あきまへんなぁ、女の子の年を考えたら、それより何処まで読みはったん?」



 エプロンを置いて少しはだけたように着物を着崩すシア。恐る恐る和は二章に入った事をシアに伝えるとシアはどしっとカウンターの椅子に座る。



「間章が面白くありませんでしたか? 三国志を舞台にしているのに、六華将はその殆どが火の国の国花ばかり……和はん木花咲耶は何の花かお判りで?」



 受験生の和にはなんとも簡単な質問かと思った。そしてそれは自分も考えていた。



「不死身の桜花……でしたっけ?」



 不死身というのは富士、富士見の事である。そこに花開く山桜、その化身を木花咲耶姫と言われ祀られ伝えられ、あらゆる物語にこの名称は登場する。



「桜の鬼……この物語での鬼は人を超越した存在でんなぁ? どういう事でっしゃろ? 桜は日本人の愛してやまない花だから……でしょうか?」



 悪戯っぽく、それでいて面白おかしくそう言うシアを和は冷静に突っ込んで、というよりは質問してみせた。



「実のところ、日本人が桜を愛し、愛で歌うのは随分新しいですよね? 実際は桜よりも前にに儚さの象徴として梅を詠う事が多かった、あの菅原道真も彼を追って梅の花が追いかけたなんて言うじゃないですか!」



 セシャトは優しい、それに反してシアは違う。西の気質を持っているからか、そういう屁理屈じみた事を言う和を一括した。



「和はんはつまらん男でんなぁ? それはリアルの話とちゃいますん? それとも何か? 『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語・著 言詠 紅華』にケチでもつけたいんやろか?」



 当然和に悪気があったわけではない。Web小説という物の特性上いくらでも穴を見つけようと思えば見つける事ができるし、疑問に思う部分という物もある。これらをそのままストレートに感想として述べれば、もうそれはWeb小説においては戦争である。


 作家、読み手間だけでなくこの場合は読み手とファンの間である。Web小説作家というのはアマチュア、一般人であり、お金をもらって創作をしているわけではない。言うなれば承認される事こそを賞与としてただひたすらに書き綴ってきた。

 当然、マイナスの感想という物も成長に大事なスパイスなのかもしれない。今回に関しては和の作品世界への否定。感想という枠を超えた暴言とシアは捉えた。



「この物語はそういう世界と考えてへ読めへんもんやろか? 最近、和はんみたいな読者はん、増えとってなぁ。ホンマに怒り狂いそうやわぁ、目えぐって読めへんようにしたいなぁ」



 本当にシアは怒っているのだろう。表情こそ出さないがチック症状のようなイラつきを彼女から感じる。和は今までもこういう事があったなと少し反省した。

 自分はいつも物事を合理的に考えすぎる。知らず知らずに相手を不快にさせてきたのかもしれない。なんせ、このシアのようにまっすぐに怒りの感情をぶつけられた事が無かったのだ。静かに自分から離れていくか、後々そうだったと人づてに聞かされるか……

 あの踏切に飛び込んだ自分の友人……もしかするとあの子もと和は思う中現実に戻される。



「圧倒的な力を持つという六華将、されどそれをも恐れない仲達というキャラクターの造形には感動を覚えへん? これは主人公よりも目立ってしまうジョーカーキャラ、だけど最初の鬼って人の言葉には従順なところがまたええよねぇ、可愛えぇわ」



 うっとりと物語を思い出して楽しむシアに和は口を滑らせる。



「でもこの仲達さん、なんか危なっかしいというか、死んじゃうんじゃないかなって思いませんか?」



 自分で言ってまたやってしまったと和は思ったが、シアの反応は和の想像していた物とは違った。



「少しはマシな反応ができるんやねぇ、この仲達さんの妙に感じる死亡フラグを楽しみながら読むんは一般的な感性とちゃう?」



 言っている事の意味は殆ど分からなかったが、とりあえず褒められたのでそのままシアの話を聞く事とした。正直最初は少し苦痛だったが、セシャトとはまた違った新鮮さを感じていた。


(あれ? 僕ってこんなどMだったのかな?)


 満足そうに笑うシアは奥に一度消えると缶コーヒーを二本手に持って戻ってきた。それは微糖と無糖。



「甘いのと苦いのどっちがええ?」

「じゃあ甘いの……ではなく苦いので」



 微糖を選ぼうとした時、シアの表情が少しばかり冷たくなった。という事で和は無糖を選ぶ事が最善だろうと判断。

 そしてそれは正しかったようだ。



「よう分かってますなぁ……そうそう、そうやってWeb小説も少しは読まな、面白いところも楽しめませんよぉ。はい、ご褒美」



 シアは微糖の缶コーヒーを和に渡す。そして自分はブラックの缶コーヒーのプルトップを開けた。



「ふしぎのくにの皆さんは舌が肥えてはるから、あんまり缶コーヒーなんか飲みませんの。でもアタシは缶コーヒーが大好きですの」



 和も確かに缶コーヒーは珈琲と似て非ざるものだと思っていた。これはこれで美味しいと思うのは少しシアと感性が似ているからなのだろうかと和は思った。



「最初の鬼という存在を曹操にしているのは分かりやすいですね。三国志最強の武将、いや政にもかかわっていたから知将なのかな? 知っている名前だけにドキドキしますね」



 どうしても理屈っぽい和だったが、この最初の鬼を曹操としたのは素晴らしい一手だった。和の言葉通り分かり易い。単純にけた違いの存在なのだろうと読者に思わせるにたるビックネームであった。

 自然に粗探し、理屈っぽい和ですら納得させられるこの項にシアは嬉しそうに口角を緩める。ほんの少しではあるが和は物語を楽しむという比率を変え始めている。読書を楽しむからストーリーを読み込むという本来の小説の楽しみ方へとシフトしつつあるのだ。



「桜の鬼が薙瑠さん以外にもいたという事に関して和はんはどう思うん? 矛盾しているとかそう想いはるんかなぁ?」



 それに関してはシアの斜め上の回答を和は返した。



「それが、一本取られたなという気持ちの方が強いです」

「へぇ、なんでなん?」

「桜の鬼と呼ばれている存在が薙瑠さんの事だと思っていたんですが、桜の鬼っていうのは称号じゃないですけど、そう言った不特定多数の存在を指す事だったのかと感心させられましたね」



 やはり理屈っぽい。

 されど、シアは面白いなと嗤いこう言った。



「そろそろ遅いしぶぶ茶漬けでもどうです?」

「あっ、こんな時間か、じゃあ頂きます」



 それを聞いてシアは噴出した。この言葉はもう通じないのかという事と意味を知らずにそれを所望する和。



「ええわぁ、じゃあちょっと作ってきますえ。待ってなはれ」

『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語・著 言詠 紅華』の大ファンであるシアさんの逆鱗に触れてしまった和さんですが、シアさんの怒るポイントというのは簡単に説明をしますと、私達は読みに行くのではなく。読ませてもらい行くいう考え方なんですよね^^ ここ数話で相当『三國の華』について粗探しをした和さん、ついにシアさんの雷が落ちましたねぇ^^ 私はこうやって強く怒れませんので凄い事だと思いますよぅ!

シアさんの言うように、理屈っぽくなりすぎる読み込みというのも危険な場合があるというお話です!

では気を取り直して『三國ノ華 ◇ 偽リノ陽ノ物語・著 言詠 紅華』を楽しみましょう!

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