連携アプリにはご用心 フォロワーさんとバトルロワイヤル
これは、あの古書店「ふしぎのくに」のアヌさんが悪ノリで書かれた作品です。
連携アプリ、フォロワーさんんとバトルロワイヤルで表示された内容を物語にしたようですねぇ
セシャトは金の鍵の力を使ったわけではないハズだった。たしかツイッターにおいてフォロワーとバトルロワイヤルをしたらというようなアプリを押したハズだった。きがつけばそこは何処かの工場のような場所、いや、研究所だろうか? まずはここが何処なのか捜索しなければならない。
ウィーンというなんとも玩具みたいな音とともにシャッターみたいな扉が開く。そこに倒れている黒髪の少女の姿。
「へ、ヘカさん!」
セシャトの親友であり、仕事仲間のヘカ。彼女の頭に何やら棒が刺さっているのである。もう一度言うが棒がすっぽりと刺さっている。
「セシャトさん……この奥に化物がおるん……第五話でディスった腹いせ……か、かほっ!」
そう言ってヘカはぱたりと倒れる。まぁこの程度でヘカが死ぬとは思えないセシャトだったが、案の定ヘカは不自然にメリケンサックをセシャトを差し出すような形で息絶えていた。
「なんなんでしょうねこの茶番は……しかし、金の鍵を使ったような奇跡をあの連携アプリは持っているという事なんでしょうか? 実に興味深いですねぇ」
セシャトはヘカの手からメリケンサックを受け取るとそれを装備してみる。そしてなんだか空しくなったのでそれをポケットにしまった。
「さて、この先にいるのは一体誰なんでしょうね」
この研究所は地下にあるのか、一体どのくらいの広さがあり自分が今何処にいるのかも分からない。早く古書店『ふしぎのくに』へ帰ってセシャトはパンケーキを焼かなければならない。何故なら……
「本日は秋文さんが遊びに来られるんですから……」
成城石井でわざわざ買ってきたお高めのホットケーキミックスをこの日の為に買っていたのだ。卵も宮崎から取り寄せ、牛乳は小岩井の農場に買いに行った。お店にも負けないようなパンケーキを作る準備をしていた矢先にこれである。
「ふむ、ここが物語の中であれば金の鍵を使えば出られるのかもしれませんが、分かりませんねぇ」
研究所を先先と進むとこの研究所の研究員らしき人物が腹部から大量の赤を流して倒れている。
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ……大丈夫です。我々はとんでもない者を目覚めさせてしまったようです。みてください。木の棒一本でこれですよ。トマトジュースをもっていなかったらと思うとゾッとします」
彼を赤く染めている物は血液ではなく、理想のトマトというトマトジュース。この研究員は一体何をしているんだという疑念を感じるセシャトだったが、一つ間違えると重症になりかねない。何か恐ろしい者がこの研究所内を闊歩しているのは間違いなさそうだった。
「一体、何がいるんでしょうか?」
「試験体、123番KH。あいつは……がく」
そこまで言うと研究員は気を失った。セシャトはポケットのしまったメリケンサックを使うべきは今なのではないかと思ったが、なんとか平常心を保ち、わざとらしく研究員が指差す方向へ進んでいく。
「このチープでバタくさい感じがまぁ、悪くないんですが。今日でなければもう少し楽しめたんですけどね」
セシャトがたどり着いた場所はこの研究所の休憩室なのか? ラウンジのようなところがあり、本棚やパソコンがいくらか見える。
「少し喉が渇きましたねぇ」
ラウンジにお邪魔すると、きょろきょろと見渡して誰もいない事を確認するとカウンターの前に立つ。
「ふふふのふ、一度喫茶店のマスターをしてみたかったんですよね。今現在のヴァージョンアップのタスクが終わったら、出資者さんに聞いてみましょうか、最近だと一日だけのカフェとかも開けるらしいですし……」
そんな独り言を言っているセシャトの元へまさかの来訪者。落ち着いた雰囲気の女性。カットソーにロングコートを合わせたセシャトも一瞬見とれる美人。果たしてこの人は若いのか、それともと年齢を感じさせない。
「い、いらっしゃいませ」
当然、セシャトの店でもなければセシャトはマスターでもない。いつもの癖でそう言うとその女性はにっこりと笑う。
「マンデリンを」
「承知しました!」
電動のミルの中にそれを入れるとセシャトは手早くお湯を用意する。フラスコ型のコーヒーサイフォンにマッチで火をつける。出来上がったコーヒーをハケで混ぜるとその女性に出す。付け合わせは冷蔵庫に入っていたボンボンチョコレート。
セシャトは内心、喫茶店業も悪くないなぁとか思いながら笑顔でコーヒーを愉しむ女性を見つめていた。そしてなんとなくこう聞いてみた。
「何処かでお会いした事ありました?」
女性はセシャトの言葉を無視したのか、聞こえなかったのかチョコレートをシャンデリアの光に照らしてから飲み込むようにそれを食べる。
「むむっ! 斬新な食べ方ですねぇ」
「一つ物語を紹介すれば、一つ業が生まれる」
「はい?」
セシャトの聞き返しには反応せずにその女性は何かを呟く。セシャトは彼女が何を言わんとしているのか見極める為に続きを聞いた。
「無限等という言葉はまやかし、世は全て有限でできている。貴女は尚有限の世界で業を深めるつもりなの?」
二つ目のチョコレートをペロりと食べると女性はセシャトを見つめる。彼女の首元には123という数字。
「あ、貴女は試験体、123さんでしょうか?」
「ペン一つあれば物語をはじめ、終えれるように、木の枝一つあればその命を散らせる事も容易い……」
女性の瞳から光が失われた。ぐりんと振りかぶった木の枝はセシャトを襲う。セシャトはあざとく「きゃっ」とか言いながら避けると、大理石のテーブルに木の枝は穴を穿つ。いよいよこれは不味いとセシャトはカウンターから逃げる、試験体123は焦点の合わない瞳でセシャトをおいかけてくる。
「あらあら、これはまずいですねぇ」
セシャトが逃げ込んだ先はカプセルホテルのような……いや、そんないい場所ではない。ここは何かおぞましい事を行われている場所であると確信した。
番号が振ってある中で皆同じ顔をした女性。成長具合が違うけれども恐らくは同一人物なのだろう。閉めておいた扉はガンガンと打ち付けられる音が響く、しばらくは持つかとセシャトは何か彼女を止める方法を探す。
「ここは、子供部屋……でしょうか?」
そこには子供のお絵かき……セシャトらしき人物と中華系の衣装をきた女性二人の優しくて可愛い絵。それにセシャトは見覚えがあった。
「まさか……ここは彼女を作り出そうとしている場所なんでしょうか? でも何故?」
セシャトは何か手がかりになりそうな物を探していくと、なんとも意味深な事が書かれていた。
ここは、彼女がとある作品を書かなかった未来なのである。あの作品を書かなった未来。それはセシャトにとって想像できない未来。何故なら、今ちょうどあの作品を紹介しているのである。そしてあの作品を書かなった彼女の代わりに何者かが彼女を創造し、あの作品を書かそうとしたのではないかと……
「ワリカタさん……でしょうか? いえ、もっと違う何かかもしれませんね。ならば私にしてあげる事は一つです」
セシャトは今まさに扉を突き破らんとしている場所でと歩む。ポケットにしまっていたメリケンサックを取り出すとそれを握る。。
ばきっ!
彼女は扉を突き破り、セシャトに一本の木の枝を向けて振りかぶる。
「貴女に紹介する作品は決まりました!」
メリケンサックを手の平にのせるとそれはみるみるうちにタブレットに代わる。その画面を素早く切り替えるとセシャトは女性にとあるWeb小説の画面を見せる。
「ふふふのふ! 愉しんでくださいよぅ!」
画面を食い入るように見つめる女性、彼女は木の枝を手から落とすとぎこちなく笑って見せた。
「この世界でもきっと貴女ならいつか書かれますよ!」
きがつくと古書店「ふしぎのくに」のキッチンで寝落ちしていたセシャト。全くパンケーキ作りは進んでいない。お店の玄関ではガラガラと来店の鐘が響いた。自分は夢を見ていたのか、それともキツネに騙されたのか、どうやって手に入れたのか分からないメリケンサックが一つ足元に落ちていた。
「きっと、ヘカさんの仕業でしょうね」
それをゴミ箱に入れるとセシャトは自分の客人をもてなす為に玄関へ出迎えた。そしてそこでどこかであったであろう女性が木の枝を持って立っていた。
「あら? あらあら」
本作はどうなんでしょうね^^ たまにはこういうのもいいかもしれませんね!




