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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
第二章 『邪神転生バビロニア リバース・オブ・ナイアルラ』著・ユーチューバー・イレーナ
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キャラクターのリストラとキャラクター紹介のタイミングwithマグロちゃん

さて、最近やや日の出ている時間が長いなと思うようになってきました。

もうすぐ三月ですからね! 三月は白酒を飲んであられと菱餅でパーティーです。

物語の中に入るという事は一度は誰しも考える事ではないでしょうか?

もし、ご希望であれば一度「古書店ふしぎのくに」へお越しください。

「英雄になる為の外道。何かをなそうとするには道を外れなければならないというこの表現は私は個人的に好きですね。まさに覇道です」



 この世界をセシャトは物語として読み込んでいる。それがとても嬉しくて、そして男は逆に悔しくもあった。

 自分がこの世界を隅々までセシャトに解説と共に案内してやりたいと思っていたが、共感できるレベルにセシャトは達していた。



「ここからの話をセシャトさんはどう思う?」

「そうですね。現在全章において最高の盛り上がりを見せるシーンの一つと言っても過言ではないでしょう。 歴史を動かす者は短命です。それは物語の中でも現実世界でもそうではないでしょうか?」



 男は、いくつか歴史の偉人達の名前と容姿が浮かぶ。それはリアル。現実世界での話である。物語の中とはどういう事なのか?

 男の疑問符を含んだ表情にセシャトは、今カノンが戦争という名の虐殺を行っている真横で男に言う。



「そうですね。物語の中でもストーリーを動かしすぎる存在は早急にリタイアします。いわゆる作者が扱いきれなくなってしまった状態ですね。バトル物であれば、明らかに強すぎてストーリー上消えて貰わなくならないといけなくなってしまったとかですね。特にこの日本の物語では作者都合で退場するキャラクターが多々います。カノンさんは歴史を単独で変えうる主人公です。今のところ天衣無縫でしょう。そして主人公であるが故に、作者都合の退場を回避できるわけでもあります」



 果たして作者がそこまで考えて物語を書き込んでいるかはさておき、セシャトの考察に関しては男も一つ物申す事があった。



「セシャトさんは、もしかしてのん様がデットエンドする展開を想像していたりするのかい? まさかとは思うけど」



 セシャトはその男の質問に関して十万の命が一瞬にして蒸発する様を眺めながら考える。男もその様子を見て綺麗だなとか思っていたが、それがわりと異常な事であると気づくもセシャトには物語を読んでいるようにしか感じていないのかと気づきゾッとしていた。



「そうですね。さすがです! 私はこの物語における最強最悪の主人公カノンさんが死して終わる最後も予想しています。彼は、スケベで悪知恵が働き、それを実行するだけの力量とカリスマを持ち合わせてはいます。そして、尊いくらい優しい主人公です。どれだけ低い確率かは私にはわかりませんが、寿命が短いという設定以上にそこに死亡フラグを感じ、そしてカノンさんの魅力が引き立ちますね」



 クスクスと笑うセシャト。

 それもそのはずである。セシャトと男はモブもとい幕間からカノンとマグロが『死にそうゴッコ』をしている姿を見ているのである。



「幕間といえばこんな物も見る事ができますよ」



 男はセシャトが言わんとしている事を今目の当たりにしていた。等身大のフィギュアの如く『邪神転生バビロニア ─リバース・オブ・ナイアルラ─』のキャラクターがそこに聳え、キャラクターの説明書きがなされている看板が横に設置してある。



「物語の中で見ると、52.5話はこんな感じなんだ」



 Web小説における、やらない方がいい事という物がある。ルールがあるわけではないのだが、このキャラクター説明という物もその一つであった。

 少なくとも読者目線で書いた場合は作者の独りよがりになりがちな為良しとはされていない。

 しかし……



「ここまで読み込んでくると、逆にこのキャラクター説明はありがたくもありますね。ある意味読者サービスと言っても過言ではないです。この『邪神転生バビロニア ─リバース・オブ・ナイアルラ─』を読んでいると、Web小説の新しい側面を見る事ができます。あの、触らないでくださいね!」



 二丁の銃を構える等身大アルマ・ランゴに触れようとする男を軽く叱咤し、次のページへの扉を開く。



「ジャンプコミックスに影響されているとは聞いていますが、こうやってモデルにしている作品を言っていただけるのは助かりますね。そちらにも興味がわきますし、先に荒潰しもしておけるので一石二鳥です」



 元々ワンピースに影響されていたという本作品、確かにそうなのかもしれないが、自分の色という物を十二分に成長させたと言える。

 Web小説はこうあるべき姿であるといえる。

 一番人気の異世界転生物という強力なジャンルが存在する。これもどれも始まりは似たり寄ったりの物が多い。

 されど、評価される物という作品はそこからの成長のさせ方が違うのだろう。『邪神転生バビロニア ─リバース・オブ・ナイアルラ─』は九十年代のラノベ読みからすれば懐かしい作品。最近の中高生からすれば斬新な物語に感じるのではないだろうかとセシャトは考える。

 男は幕をぺらりをめくって次のシーンを覗き見していた。それは、獣人の女王アルテミシアの口上に対してカノン達が呆れてしまっているシーン。



「まぁ、よくあるカルト教団の教祖みたいなもんだよね!」



 男は、彼女の話す言葉を聞き、そして喜々とした表情を見せる。ここは素直に笑うシーンなのだ、だが、セシャトといえば違う。



「異能という物がいつ何時にでも使える物ではないのも事実なのかもしれませんよね? 昔こんな事があったようです」



 セシャトが語る話は昔超能力者を語る男がメディアに出演し、スプーン曲げを行った姿を見せた後、それをテレビで見た子供達の多くがスプーン曲げをやってみせたという事だった。



「セシャトさん、それってユリゲラーだよね? その子供達もイカサマがバレたんだよ? という事は……」



 ふむと、セシャトはチョコバットを取り出すとそれを剥いてパクりと食べる。そして中を覗き、それが当たっていた事に笑顔を見せる。

 可愛い子だなと男は心底思うが、次のセシャトの言葉に耳を疑った。



「という事は超能力はあったのかもしれませんよ? いつ何時でも使いたい時に使えない。だけど、使わなければ超能力じゃないと否定されてしまう。と考えると、このアルテミシアさんの言い訳がましい言葉も尊く感じます」



 それはまた突飛した考えである。

 そして、両手を胸の前で拝むように物語を楽しんでいるセシャトの姿をどこからかクスクス、ふひゃひゃひゃひゃ!

 と笑い声が聞こえる。

 男は自分ではない。ともちろん自覚、そしてセシャトと男は目を合わせてその大爆笑している不思議な羽虫。

 もとい、着せ替え人形サイズの少女と鉢合わせた。



「これはこれは、アザートスさん」

「えっ? マグロちゃん? マグロちゃんなのぉ!」



 セシャトは小さく手を振って見せ、男は目の前に『邪神転生バビロニア ─リバース・オブ・ナイアルラ─』のレギュラーキャラクターである邪神アザートスことマグロがいるのだ。

 さらに言うと、マグロは遠く離れた先でカノン達の近くでも爆笑している。



「貴様ら、あれだな? 転移者。いや読者か?」



 物語の中のキャラクターであるアザートスことマグロは当然の如くセシャトと男を自分の世界にいる存在ではない者。

 それも読者であると気づいた。



「マグロちゃんは俺たちの事知ってるの?」

「馬鹿にするな! これでも一時期は世界を腐れる程の力を持っていた我だぞ! 世界のさらに先に何があるかくらい知らぬわけがなかろう!」



 そう小さな身体で、偉そうに胸を張るマグロを見て、セシャトと男は単純にこう思った。



「あらあら、可愛いですね」

「これ、欲しいな」



 全くもって違う部分で評価されている事にマグロはなんともこれじゃない感を一人感じてはいたものの、この二人の異端者に対してこんな事を考えていた。



(こやつら取り込んだら我の力が少しは戻るんじゃないか? 特にこの女の方は、何か特異な力を持ってそうだし……ふふふっ、こ奴らを案内するという名目で隙あらば……)



 幼稚かつ、くだらない事を考えているマグロ。それは自分の世界の存在であればまだ意味もあったかもしれない。



「へぇ、考えている事が普通に吹き出しとして見えるんだ。そして、さすがはマグロちゃんだね。とてつもなくくだらない事を考えている」

「ですねぇ! この小賢しいところがまた可愛いですねぇ」



 男は卑猥な目で、セシャトは小動物でも見るようにマグロを見下ろす。この屈辱感、段々とマグロの涙腺はいまや崩壊し、そして涙と鼻水と共に感情は決壊したダムの如く溢れた。



「ぞんなふうにいうなぁああ、われの! われのほんとうのちからなら、おまえらにびょうでごみくずかくていなんらからあぁあああ」



 じたばたと泣きわめくマグロをそっとセシャトは広い手の平に乗せると、マグロに一枚のペラペラの駄菓子を見せる。



「アザートスさん、これでも食べてご機嫌戻してください」



 甘辛い匂いにマグロがピタりとそれを見つめ、ゆっくりと受け取る。そしてマグロは自分の半分くらいはあるそれに牙を切れた。



「……ウマー! なんだこれ? 人間の干し肉か?」

「いえ、『かば焼きさん太郎』です。私たちの世界は子供のオヤツですね。鰻のかば焼きを模して作られているんですが、実際はスケトウダラという魚のすり身で作られているんですよ! この駄菓子がまた番茶に合うんです……ってそんな事をアザートスさんに言っても分からないですよね!」



 自分の頭をコツンと叩いてマグロと男にそう言って見せると、マグロが男の方を見てこう呟いた。



「この女、あざといな」

「あー、うん。本人気づいてないんだろうけど、セシャトさんそういうところあるよね。まぁ、可愛いからいいけど」



 突然ディスられる二人に対して、セシャトは少し考えると彼らの思惑通りに演じる事にした。ウィンクをすると微笑してこう言った。



「そんな事ばっかり言ってますと、めっ! ですよ」



 男とマグロはわざとセシャトがあざとく演じている様子を見て、お互い悪い笑顔で顔を見合わせてる。



「「はずかしくない(か)?」」



 二段構えのそれにはさすがにセシャトも憤慨した。



「私で遊ばないでください!」



 この自然に怒っているセシャトに対してこれがもっともあざとい怒り方だなとか思った男はマグロにこう言った。



「アザートスって、あざとい女の邪神の事?」

「お前、我の事絶対馬鹿にしてるだろう!」

さて、まさかアザートスさんに見つかってしまうとは思いませんでしたね。

これはあまり宜しくはないのですが、私たちから直接関わったわけではないので、ギリギリセーフと言ったところでしょう。マグロちゃんことアザートスさんですが、何処か私を作った神様に似てなくもないですねぇ。では次回もお楽しみに!

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