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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
古書店『ふしぎのくに』の大晦日
109/109

2018年 12月31日 セシャトの道標

皆さん、本日夕方より紅白WEB小説合戦ですよぅ! 参加者様はもちろん、お暇な方は是非楽しんでくださいねぇ! 私は早めに本日の計画をたてつつスタンバってますからね! ふふふのふ^^

 セシャトはソバのだし汁の味見をする。



「うん、こんな感じでしょうか?」



 気が付けば一年、色んな人に出会ってきた。ツイッターアカウントは一年で3000人近くに増えて、そんな中でも仲良くさせてもらっている人も沢山いる。

 一年間で出会ってきたWeb小説。一体何作読んだだろう? セシャト個人で400作品くらい。そして古書店「ふしぎのくに」としては2000程だろうか。そんな中不思議な読者が尋ねてきたり、ライター達と集まってミーティングをしたり、セシャトは実にこう思った。



「本当に、一年間楽しかったですねぇ」



 カラガランと古書店『ふしぎのくに』の扉が開かれる。セシャトはお昼で今年の営業を終了していたのでここに来る人は限られている。

 セシャトが入り口まで出迎えると、防寒着代わりに青い雨合羽を着た神様の姿。ビニール袋一杯に駄菓子を持っている。

 神様。

 4月1日に今の実体を持った全書全読の神様。物語や書物に関わる事であれば信じられない奇跡を起こすセシャト達の生みの親。

 だがその実体はジンベイザメを依り代にした大喰らい。毎日1000円のお小遣いを貰っているのにも関わらず貯金ができない浪費家でもある。



「セシャトよ。一年間ご苦労だったな。褒美だ」



 駄菓子屋で買ってきたお貸しの詰め合わせ、その金額や1000円分くらいはあるだろう。それを受け取るとセシャトは笑顔で言った。



「今日の紅白Web小説合戦楽しみですねぇ!」

「そうだの。景品のお年玉はアマギフとアップルカードどっちにしたのだ?」



 セシャトは二枚のカードを用意した。



「ふふふのふ、アマゾンギフトカードの方がいいというアンケート結果でしたので、優勝に貢献したMVPの方とふしぎのくに賞の二枚となります」



 それを聞いて神様は嬉しそうな顔をする。



「一年か、しかし早いの……明日はお前の誕生日でもあるんだな」

「そうですね! 1歳の誕生日ですよぅ!」



 セシャトは母屋の椅子に腰掛ける神様にホットココアを入れる。それを両手で持ってゆっくり飲むと神様は言う。



「良い事ばかりではなかったかもしれんが、本当によくやった」



 セシャトが紹介した小説のいくつかは現在もう読む事ができない作品も存在する。そしてそれ以外にも色々大小合わせれば、問題は起きていた。

 セシャトは嫌な顔ひとつせずによくまぁ色んな事を対応してきたものだと神様は心から労った。



「そうでもないですよ神様。読めない作品でも私が紹介する事で永遠に名前や内容を残す事ができます。いつか、それを見た作者さんが再開や新連載を始めてくれるかもしれませんし、問題が起きるという事はそれけ成長できるチャンスなんじゃないでしょうか? 私も明日から1歳ですし、もっと頑張りますよぅ!」



 そういってあざとくガッツポーズを見せるセシャトに神様は優しく微笑む。が刹那、カラガランと少し大きな音が鳴る。

 神様の表情が鋭くなり、「馬鹿がきよったか」と呟く。



「ただいまなんっ!」



 古書店『ふしぎのくに』絶対エースであり、トラブルメーカーのヘカが両手に即席麺やらエナジードリンクやらを大量に持ってやってきた。



「ヘカさんいらっしゃい!」

「ヘカくらい売れっ子の作家には年末も年始もないん! わざわざ時間割いてきたんよ!」



 ヘカはど底辺Web作家である。忙しいのは全て自分のタスクであり、たまに月間紹介のライターをする程度。そんなヘカの話をセシャトは流して言う。



「今日はみんなでお蕎麦をいただきますので、インスタントラーメンはいりませんよぅ!」



 セシャトの言葉にヘカはチッチッチと指を振った。



「セシャトさん、今日は大晦日なんよ! 除夜の鐘を待ちながら小腹がすいたらカップ麺食べるん! それが日本のわびさびなんな!」



 微妙にわけの分からない事を言うヘカだったが、セシャトはヘカが忘れている事を教える。今日が何の日かという事。



「ヘカさん、今日は紅白Web小説合戦ですよぅ! ヘカさんも読み手として楽しんでくださいねぇ!」



 ヘカはそれを聞いて表情を少し歪める。



「ヘカも参加するん!」

「もうさすがに無理ですよ! ヘカさんの眼鏡にかなう作品があるといいですねぇ!」



 少しばかり納得がいない表情を見せるヘカ、そしてすぐにいつも通りの余裕一杯の表情を見せた。ヘカは姿を読者に作ってもらった少しイレギュラーな存在。

 レギュラーになりえなかったハズの彼女はいつのまにか、セシャト達と一緒にここにいる。そして神様も知らない謎の力を持っている。

 まさに、魔力ヘカそのものなのである。ジャンクフードが好きなわりには、案外上品に物を食べるヘカ。



「ふぅ、もう一年なんな? 参加型作品紹介イベントが昨日の事みたいなんな?」



 ヘカがはじめて古書店『ふしぎのくに』の業務に参加したイベント、彼女の役目はそこで終えるハズだったのだが……不思議な縁だなとヘカはセシャトが入れてくれた砂糖がたっぷり入ったミルクティーに口をつける。



「1月の紹介作品、ホラーなんな? 縁起悪くないん?」

「私もそう思うんだがの、9月頃に募集しよるから、ハロウィンという固定観念で決まったんだろうの」



 そういう事かとヘカは静かにミルクティーを啜る。セシャトは笑顔こそ崩してはいないが、やってしまったという雰囲気を全力で醸し出していたが、神様とヘカは空気を読んで何も言わない。



「二人とも、そこはツッコんで頂かないと何だか私が一人寂しいじゃないですかぁ!」



 指を立ててプンプンと怒る様、嗚呼、ブレずにあざといなと二人は思って目を合わさない。そんな時、再び古書店『ふしぎのくに』に訪れる者。最後のメンバーであるトトが母屋へと入ってきた。



「お邪魔します。そして、皆さん一年間お疲れ様でした!」



 今日のトトは少しラフな格好だった、黒いシャツにサスペンダー、このメンツだから見せるトトの姿と言ったところだろう。トトがお店で出しているケーキの残った物をお土産に持ってきていた。トトの作るお菓子は、しっかりと洋菓子屋で修行をしているだけあり実に美味い。なんせセシャトにお菓子作りを教えたのもトトである。

 ブックカフェ『ふしぎのくに』オーナーであり、セシャトと同じWeb小説紹介を主な業務としているが、旅行好き故お店が開かれる事はあまりない。かわりに出張ブックカフェとして日本、海外と普及活動をいそしんでいる。

 神様の姿を見つけるとトトは神様の前でしゃがんだ。すると大きな煎餅を齧っていた神様は手を拭いてトトの頭を撫でた。トトは少し嬉しそうに目を瞑る。



「貴様もご苦労だった。良い一年だったか?」

「はい!」



 トトの姿はセシャトによく似ている。トトはセシャトに席に座るように言うと、持参した茶葉でセシャトにお茶を淹れる。



「あらあら、トトさんの紅茶だなんて久しぶりですねぇ」

「セシャトさん、一年間お疲れ様です!」



 トトはセシャトを尊敬している。あらゆる障りをいつも笑顔で、一人で受ける。全てのWeb創作家のファンでありサポーターであれという古書店『ふしぎのくに』。それを律儀に正確にいつも変わらないクオリティーで彼女は提供してきただろう。

 それはある種の……



「めでたい席でやめておきましょうか! 紅白Web小説合戦。紅組と白組どっちが勝ちますかねぇ?」



 トトの質問にセシャトは答える。



「分かりませんよぅ! 偶然というのは非常に面白いです。凄いいいカードが選ばれてしまいました。これは対戦カードを操作したと言われてもおかしくないかもしれませんねぇ!」



 本日開催する『紅白Web小説合戦』今年最後の古書店『ふしぎのくに』イベント。トトも楽しみでしかたがない、セシャトは先に作品を読んでいるので悦に入っていた。

 楽しそうに笑うセシャト。



「一年は本当に早かったですねぇ! 少しくらいは皆さんに貢献できたでしょうか?」

「どうでしょうね。無駄ではないと思いますよ。僕達は好きな作品をただ個人の主観で読んで、楽しみ方の一例を挙げているだけですが、きっと興味をもってくれる人はいると思います」



 紹介小説を深く考えないで欲しい。

 あれは感想文なのだ。

 我々、古書店『ふしぎのくに』一同から作品への、作者への、そしてそれを読まんとする読者への。

 全然違う! そう言ってもらっても構わない。

 共感できる! そう思ってくれるとまたありがたい。

 そして、読者の私は、僕はこう感じる。こう思う。こう楽しんだ。という気持ちを次は楽しめた作品に、貴方のまた貴女の言葉で返してみてはいただけないだろうか?


 書籍化された作品は永遠となるが、Web小説という作品はいつ消えるかも分からい非常に不安定な物。

 人気作品、コアな作品。各種ジャンル。そこに差はない。あるのはこのWeb小説先進国である日本、いや全世界Web創作に関わる熱量の結晶なのだ。

 本作『セシャトのWeb小説文庫 著・セシャト』もまたそんな熱量の一欠けら、だから我々は願う。

 時々、楽しかった作品を思い出してあげてほしい。連載中の作品、完結した作品、書かれなくなった作品、削除された作品。

 その全ては思い出の中で永遠を得る。そしてそれを我々は名作と呼んでいる。

 月並みな言葉となるが、一年間『セシャトのWeb小説文庫』にお付き合い頂き誠にありがとうございました。


 セシャト、彼女達がここまで可視化されてきたのは他でもない。読者・フォロワー・関わって頂いた全ての人が作り上げた作品が本作なのだ。

 神様はそう思ってセシャトに言う。



「なぁ、私の小遣いなんだがの……」



 セシャトは神様の声が聞こえていないのか、ノートパソコンを開いて何らかのWeb小説を楽しんでいる。

 あざとく、Web小説と甘いお菓子が好きな女神の物語は再び始まる。そしてそれは必ずいつか訪れる本作の完全な完結へと向かう為に……



「ふふふ! この物語は素敵ですねぇ!」


…………to be continued


さて、一年間長かったのか短かったのか本当に不思議ではありました^^

毎月の更新ペースを守る事、皆さんの作品を1日1作以上のノルマで読み続ける事、それが出来たのは一重に皆さまが仲良く、優しくして頂けた事でしょうか? そして、新参の私に対して色々とご指摘を頂ける方々、そんな方達とも手を繋で笑って協力し、この業界を楽しく盛り上げて行ければ嬉しいなと思いますよぅ^^

セシャトのWeb小説文庫2018年 完結という形で、協力頂いた作者様、作品のキャラクターの皆さま、そして当然読者様。一年間ありがとうございました! 来年もどうぞ宜しくお願い致します!

至らぬ点が多い私ではありますが、来年も頑張りますよぅ^^

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