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セシャトのWeb小説文庫2018  作者: セシャト
最終章 『セシャトのWeb小説文庫2018』著・ ????
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第七話 『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む』著・ 洸夜

貴方は誰でしょう? 私はセシャトです。 最近、深夜の決まった時間に電話が鳴るのでさすがに怖いなと思っていたらアラームでした。 これはだれかの悪戯でしょうか……セシャトのWeb小説文庫2018.本当にどれも面白い作品を紹介させて頂き、1日、1日経つ事になんだか物悲しさを感じています。

そして、私がそれを感じてはいけないなとも同時に思って頑張ってますよぅ! 

 孝臣は数日前の事を思い出していた。棚田クリスの後ろ盾は大きい。

 場合によっては警察権限よりも強力になりうる。

 さてどうしたものかと、孝臣は古書店『ふしぎのくに』があると言われている店に何度か足を運んでみたが、誰も戻ってくるそぶりもないし、営業されているようには思えない。

 そんな中、女の子がやたら集まっている一件のカフェ、そこの店名を見て孝臣は固まった。



「ブックカフェ『ふしぎのくに』だとぉ!」



 今風のカフェ、関連性はあるだろうと孝臣は入店する。年代は様々のようだが、比較的若い女性で店内は満たされていた。中には男性客もいるが、女性と同じように店主らしい人物を見てニヤニヤしている。


(なんだこの気持ち悪い客層は)



「邪魔するよ」



 そう言って明らかに毛色の違う孝臣はブックカフェ『ふしぎのくに』に入店した。そして孝臣を出迎える店員……あるいは店長だろうか?



「いらっしゃいませでありんす」



 小学生くらいの少女……燕尾服を着ている事から少年なのかと孝臣は一歩引いてしまう。この東京というイカれた街は平気でこういう店が存在してしまうのだ。

 警察ではないが、孝臣はコホンと咳払い。



「君はおいくつかな?」

「あちきはこのブックカフェ『ふしぎのくに』店長代理の汐緒でありんす。お好きな席に座ってくれなんし」



 またややこしい言葉を使う子供だなと思って席を選ぼうとしたが、自分はこの少年に年齢を聞こうとしたが、その事を一瞬忘れていた。

 そして驚愕の事実が目の前で起きる。

 二人の警官が入ってくると汐緒に頭を下げる。



「お巡りさん、いらっしゃいませでありんす!」



 何やら店内の年齢確認をしているようだった。若そうな女の子に頭を下げて年齢確認。どうやら十八歳以上だったのだろう。



「ご協力ありがとうございました!」



 そう言って去って行く警官二人を孝臣は呼び止める。



「おいちょっと!」

「どうしました?」

「あの店員の子は年齢大丈夫なのか?」



 孝臣は店内にいる客から不審な目で見られる。そして警察は「あーそういう事ですか」と言って汐緒が十八歳以上であると伝えて店を出て行った。


(そんな馬鹿な!)


 孝臣の驚愕に対して汐緒はこう言った。



「とのさん、鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔をされるでありんすな? そこな座らんし」



 カウンター席に座る様に促されて、お冷を出される。



「本日は宮沢賢治を読むハズだったでありんすが、予定を変更して三か月ぶりに『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む 著・ 洸夜』にしようかや」



 汐緒の言葉を聞いて店内の客はスマホやタブレットを取り出す。一席に一つタブレットが備え付けてあり、それを使う者もいた。

 孝臣は自分のスマホですらやっとこさ使えるようになったので、指示のあった作品を検索する。



「店員さん」

「汐緒でありんす」

「汐緒さん、ここはWeb小説を読むのかい?」

「一般書籍も読むでありんす。でも今日はとのさんみたいな特別なお客様がきてるかや! 特別にこの作品を読むのも興でありんす」



 簡単なあらすじを汐緒が説明してくれるので、全然知らない孝臣もある程度理解が出来た。

 『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む 著・ 洸夜』元々、現代日本のアラフォー紳士が少女を守り死んでしまう。

 が、その死は予定されている物ではなかった。別の世界で今死にかけている少年アデルへと転生を行う。その姿や見てくれはいいハズなのに、不摂生がたたり太りに太っていた少年。そしてある事から態度も粗暴になり、周囲の信頼をも失った状態。

 そこに人間の出来上がっている最上紳士の意識が入り、努力奮闘の末、元の貴公子になり、態度も言葉通り生まれ変わったかのようになる。

 笑いあり、恋愛あり、異世界異能力バトルが展開されていく作品となる。



「ほぉ、こりゃ面白い。洋画でありそうな物語だな」



 異世界転生ラノベなんてジャンルは知らない孝臣の素直な意見である。



「とのさん、面白い見解でありんすな?」



 頼んでもいないのにコトンとシャンパングラスに入った何かが置かれる。



「こんな時間から酒は……」

「いさみではないでありんす。ソーダ水で作ったアイスフルーツティーでありんす。先ほどの見解いかに?」



 生まれ変わるのではなく、元々存在している誰かに意識が入る。そしてその人物としての人生を生きる。

 孝臣の人生においてこういった初期設定が凝ったものはハリウッド映画が定番だった。今や設定の日本と言っても過言ではないくらいあらゆる技法に手法、被りにかぶるくらい色んな設定が量産され、今や新しいジャンルの開拓が難しいくらいである。



「この紳士って男が当たり前として生活している事の全てが出てくる登場人物が驚いているなんて高度なコメディじゃないか、そしてそれを崩さない最上紳士以外の人々からすれば普通の日常に、物語の中に人が現れたような感じなんじゃないか?」



 なんという暴論。

 そして、これは汐緒にこの物語を教えたトトでは絶対に考え付かない、思いつかない発想だった。読者からすれば、現実の最上紳士が異世界に転生したという当然の構成。

 それを孝臣は異世界からの目線で見ていた。異世界を現実、あるいは物語の主軸としてそこに物語の中の存在、まさに非現実のキャラクターである紳士が現れたと……



「それは……どういう?」



 汐緒はマドラーをかき混ぜる手が止まらない。警察は裏の裏を読む。物語の読み込み方ですら、一般人とは違う見方を持つ孝臣に汐緒の理解が追い付かない。

 そんな汐緒に孝臣はフルーツティーで喉を潤すと聞いた。



「なぁ汐緒さん。あんた古書店『ふしぎのくに』って知っているか? それと『ワリカタ』について何か知らないか?」



 汐緒は表情を変えずに「知らんかや」と答える。



「知らないか」

「わかりゃせん」



 可愛らしく微笑む汐緒。孝臣は成程知らないかと胸ポケットから小さなメモ帳を取り出した。それは重工棚田の総帥、棚田クリスから共有をうけていた情報。



「じゃあ、トトって男の子については知っているかい?」



 孝臣の質問に関して、汐緒は目が大きく広がる。それは知っているという証拠。孝臣は前職でこの表情を何度となく見て来た。

 これは嘘をつけない者の反応なのだ。



「このお店の店長でありんす」



 そして汐緒は嘘をつかない。孝臣としてはできればここもはぐらかしてくれた方が質疑応答で本当に知りたい事を引き出せると思っていたが、中々どうしてこの汐緒という子供はガードが堅い。



「そのトトさん、店長さんは今どこに?」



 汐緒はトトの事を思い出しているのだろう。顔を赤らめてやや上気している。いくらか色っぽくなった表情で言う。



「しゃむに、店長は何処を旅してるのかわかりゃせん。悪いお人」



 そう言うと手で顔を隠してキャーと恥ずかしがる。この態度で孝臣は本当にこの汐緒は男なのかと疑問に思い始める。



「とのさん、この作品においてアデルのとのさんは他人の異能に触れたらその異能を使えるでありんす」



 それは第一段階に関してである。しかし、孝臣からすればこの使い古された設定ですら斬新に思えた。



「全く同じ技が使えるなら経験が上の方が強いだろうな。だけど自分と同じ技を繰り出された時の絶望は計り知れんだろう」



 誰よりも自分が信じ、自信を持つ力と技、それをそのままそっくり返ってくる事の脅威は計り知れないだろう。

 自分の能力であるが故に攻略の仕方を知らない。実際自分自身の弱点を本当に知っている人は殆どいないだろう。人間は自分に甘い生き物だから。



「とのさんは攻略できるかや? アデルのとのさんの「――――英雄達の幻燈投」」



 孝臣は正直、驚いた。

 こいつは何を言っているんだ? というのが孝臣の正直な気持ちであり考えだった。それ故に孝臣は聞き返す。



「汐緒さん、何を言っているんだ? これは小説だよ。私が攻略できるわけないし、する意味なんてなくないか?」



 あまりにも当たり前すぎて汐緒は虚を突かれる。物語を楽しむという感覚は孝臣も同じなのかもしれないが、彼は作品にはまりすぎて同化するという事はありえないようだった。

 それは何処か現実を見ているからなのだろう。



「とのさん、どうやったら勝てるかなぁとか思わないでありんす?」

「全然……むしろ思うのか?」



 細かい事は気にしない。これは昔の読者の見解なのだ。今の読者は膨大な知識や、手元ですぐに世界中のあらゆる情報を閲覧できてしまう。

 それらが作品との真なる同化を、作品世界に没頭するという事を躊躇させる。特にこれはクリエイターであればある程に大きくなる。

 自分ならこうするだろうという向上心が妨げになる場合。大人になって子供の頃楽しんでいた漫画や小説等を読んだ時、これはさすがにないなと思う感覚に似ているのかもしれない。ごく一部、作品を、読書を楽しむという心を大事に大事に育てて来た者は大人になってもこの気持ちを忘れないのかもしれない。



「じゃ、じゃあアデルのとのさんがモテモテなのはどう思うかや?」



 ハーレム状態の主人公に孝臣は違和感を持つのか? それとも持たないのか? 汐緒も何を説明すればいいか分からなくなっていた。



「まぁ、見た目がよくて、人柄もいいんだ。モテて当然だろう。優柔不断でもないし、硬派を貫いていて私は好きだけどな」



 全然大丈夫だった。しかもアデルを硬派であるという。確かに一途なところがありそういった一面が無きにしも非ずではあるが……



「汐緒さん、あんたの雇用主であるトトって人は多分古書店『ふしぎのくに』の関係者だと思う。何が目的でこの町にやってきたかは分からないが、犯罪に手を染めている可能性がある。あるいはその犯罪について何か知っているかもしれない」

「それはなんでかや?」



 汐緒は余裕の表情で聞き返す。本当に何も知らないのかもしれないなと孝臣はメモに書いてあった事を言った。



「この店の礼儀作法は、元々古書店『ふしぎのくに』の物と同じらしい。『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む 著・ 洸夜』に出てくる最上紳士の作法は新しい。それに対して君達はまだ騎士がいた時のものみたいだな」

「よく見てるでありんすな! 店長も同じ事を言っていたでありんす。もしよければ店長が戻ってきたら連絡をするので連絡先を教えてくれりょ?」



 はっと孝臣は毒気が抜かれたようだった。この汐緒は何も隠す気がない。ここでは何の情報も得られないかと孝臣は苦笑。

 まぁドリンクが美味しいからまた通うかなと思って勘定を申し出た時、汐緒よりも年上に見える女の子の店員が入って来る。



「おーっす店長代理!」

「大友君、5分遅刻でありんすよ!」

「まぁいいじゃないですか」



 見た目は女の子だが声は完全に男。『ワリカタ』とか古書店『ふしぎのくに』だとかよりこの国は大丈夫だろうかと真剣に孝臣は頭を抱えた。

さて『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む』著・ 洸夜 を振り返ってみましたが、お分かりいただけましたでしょうか? 紹介小説時点では知識量の多いトトさんの理屈っぽい考察に対して、孝臣さんの作品に従う読解なんですよね。特に、異世界転生系作品はツッコんで読んではいけない部分があります。当然、作品制作に関してそこをどう読ませるのか、という技法もさる事ながら読み手もフィクションを受け止めれるか? ここが所謂、テンプレートが好きか、それと異常にアレルギーを感じるかかもしれませんね!

そんな、中異世界転生をとっかかりにしかしていない『最上紳士、異世界貴族に転生して二度目の人生を歩む』著・ 洸夜 を今一度読み直してみてはいかがでしょうか?

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