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二話 人間、飛鳥との出会い

東方キャラの霊圧が……消えた?(元から皆無)



「なぁみあぁみだぶつ……っと」



 俺は適当に手を合わせ、又適当にそう呟き閉じていた瞼を開けた。

 視線の先にあるのは不自然に盛り上がった二つの土の山と、その上に申し訳程度に乗っている小さな石……という名の墓標だ。


 この墓の一つは俺がつい先程殺したネズミもどきの化物、もう一つはそのネズミもどきの食いかけの猫のものだ。

 正直墓なんぞ作ってやる義理なんか無かったが、別に俺はそこまで人間が出来てない訳じゃない。猫は当然として、ネズミもどきの方も曲がりなりにも俺が殺してしまった訳だ、いくら相手が俺を喰らおうとしていたとしても、だ。



 さて、ここで大半の人間はこう思うだろう。

「お前絶対人間じゃないだろう、って」

 だがその考えは間違いだ。

「だって俺は、正真正銘"人間"なのだから」

 間違ってもつい先程までいたネズミもどきの様な化物じゃない。



 俺はただ一寸だけ、そうほんの一寸だけ変わった人間だというだけなのだ。

 ある特別な能力を持った。

 神よりも上位の、"存在"というよりは"理"と言うべき何か、あるいは概念、そういったモノと文字通り"融合"してしまっただけの、俺はそんな唯の人間なのだ。


 起きてすぐじゃあまだ自覚出来なかった。

 違和感を気づいたのはあのネズミもどきに襲われた時。

 確かに俺に迫るネズミもどきに、俺は何故か明確な"死"の感覚が掴めなかった。だからこそ俺は最初、放心した様に動けなかったんだ。


 状況を把握してすぐ、俺は違和感を探った。

 ネズミもどきから感じないなら、死は何処に感じるか?

 明確に死は迫ってきてる、そう思ったが違った。死は俺の中にあったんだ。

 俺自身が、"死"という概念の結晶と言うか、そのものだったのだ。

 一瞬狂いそうになったが、あの時はそれ所じゃなかった。俺はすぐに頭を切り替えて、その感覚の先を見定めた。



 そして、その先にあった答え。それが、この、


『存在の有無を操作出来る程度の能力』


 その存在を認識してすぐ、俺は更に奥へと潜った。

 深く暗い海の底へとダイブする様に、ずっと奥へと。

 海底の宝を拾い集める様に、足りなかったパーツを付け足していく様に俺は能力の使い方を理解していった。




 そしてまず俺は、自身の"死"を否定した。

 否定して直ぐネズミもどきの攻撃はヒット、俺は瀕死の傷を負うが、その時点で俺に"死"は存在しない。

 どんなになっても、例えこの世から肉体や魂が消えたとしても、それでも俺は死なない。そういう存在へと俺はあの時成ったのである。


 次にやった事は、"痛みを無くして"痛覚の消去。

 思考を消して、回復するまでの行動をあらかじめ自身にプログラムしておく為のコードの生成、勿論そんなプログラミングを行う技術も場所も人体には存在しないが、無ければ俺が作ればいいだけ。

 そして最後に自己再生能力の生成。



 そうして完全に復活した後、俺が最後にやったのは簡単な事だ。

 命の消去。

 あのネズミもどきの持っていた"命"という存在を塵一つ残す事無く完全に消滅させた。

 それは輪廻転生の輪に戻る事無く、未来永劫、俺が戻さない限り戻る事の無い物となったのだ。

「ま、最後のは融通が利かないのが難点だな。殺せさえすれば命そのものを消す必要は無い、だけど今のやり方じゃそんな中途半端な事は出来ないようだ」

 ここで無くなった魂を呼び戻そうとしないのも、冷静に能力の応用性について考えるのも、俺が冷めた人間だからだろうか。


 ……まぁそんな事、どうでも良い事だが。




 事の始まりは少し前、俺が高校からの帰路についていた時だった。

 何気なく俺が道を歩いていると、上から"名状しがたい何か"が降って来た。そしてぶつかった。

 気づけばここにいた。



 以上回想終わり。

 うん俺も分かってる、早い、早すぎる。だけど分かってるのはこれくらいだし、俺に文句を言われてもどうしようも無い。


「……って俺は誰に言ってんだよ、しかも心の中で」

 はぁ、と小さくため息をして、頭に手をやったまま状況を整理する。


 俺は普通の高校生だった。

 すると上から"ナニカ"が墜ちて来た。恐らくは人が理と呼ぶモノ、あるいは概念、あるいは世界。

「全は一、一は全ってホントだったんだなぁ…」

 そして気づくとこの場所にいた。これについては今の段階じゃどうも言えない、不確定要素が多すぎる。

 して最後に、つい先程俺は能力を行使して化物を文字通り"消して"、今の現状である。っと。








「………あれ、俺ってば物凄く大変な事になってるんじゃね?」

 今更である。




 それからすぐに俺は山を下山した。

 というのも、中々に便利…を通り越してチート…もまだ生ぬるいこの能力、こいつを使って俺の中に"飛行能力の存在"を生成する事で、ライト兄弟もびっくりの性能で自由に空を飛ぶ事が出来たのである。

 使えるものは使う主義の俺はすぐさま山を降りて、今はとある国の中にいる。




 ……あれ?

 今何か飛んだ?










「守樹殿? どうしましたか?」

 そう声を掛けてきたのは俺と同い年くらいの少年(又は青年、この時代だしどちらの分類も可)。

「おぉそうだった、そう言えば君がいたねワトソン君」

「誰ですかそれは。我の名は飛鳥(あすか)です! 後勝手に忘れないでください!」

 憤慨する様にツッコミを入れるこの少年、名を飛鳥といい、一国の長の弟らしい。

 一国、といってもそれは日本を指して日本を指さない。

 一体何を言ってるか、それはとても簡単なお話し。


 そう、それは下山して直ぐの事だった。









―――回想―――




「だ、誰かぁぁぁ!」


 下山して直ぐ、さてこれからどうしようかと悩んでいた俺の耳に叫び声が飛び込んできたのだ。

 この叫びに対して俺は、これ幸いと声のする方へ走った。理由は当然、声の主から情報を得る為だ。


 そうして声の主の元へとついた俺の眼に飛び込んで来たのは、とてつもなくデカイナメクジと、そのナメクジに襲われる一人の少年。

 ナメクジは今にも覆いかぶさる様に少年のマウントポジションを取り、少年はヌメヌメのナメクジの体液に対し気味の悪いという風な顔をしながら抵抗している。

(この光景……腐ったお姉さん達が見たら歓喜なんだろうなぁ)

 一刻を争う状況にも関わらずそんな事を考えていると、襲われている少年の方がこちらへと顔を向け、

「――そ、そこの人!頼む!助け、助けてくれぇぇぇ!!」

 必死にこちらに手を伸ばし、涙を流しながら懇願している。

 というか別に助けない理由なんて無いから助けるのだけれどもさ。


「こんなもんでいいかな」

 少年の叫びを聞いて、俺は地面に転がっていた一つの石を手に取った。

 そしてそれを一度無駄に宙に放り、キャッチして振りかぶる。うん、格好つけたかっただけ。



(ボール)を相手のゴールにシュゥゥゥゥゥーーーッ!」

 叫び、思い切り俺はその(ボール)を放る。

 石はナメクジの頭部(?)辺り目掛け一直線に進んでいき、直撃、そのまま内部に侵入しそして、

「超エキサイティン!!」

 爆発したのだった。




「あ、ありがとうございます。お陰で助かりました!」

「なぁに礼には及ばんよ少年、まぁどうしても礼をしたいというなら聞いてやらん事もねーけど」

「はい是非ともお礼を!」

「あぁ、んじゃまずここは一体――」

「では参りましょう!」

「ど――へ?」

「お礼に我が国へ招待します恩人!」

「あ、え?…いや別にそこまでしなくても、つーかさっきの怪物って……」

「あぁぁ!申し遅れたあぁぁぁ!!」

「いやうるせーよ」

「我は飛鳥と言います。是非お見知りおきを!」

「あ、あぁ……俺は守樹っていうもんだ」

「おぉ守樹殿ですか!良い名ですね!」

「そりゃありがとうよ、それじゃあ俺はとりあえず情報を教えてもら……」

「さぁ行きましょう守樹殿!」

「あーはい……何処に?」











―――回想終了―――





「……何このうるせー奴!?」

「ッ!? い、一体急にどうしました守樹殿?」

 いやどうしましたじゃねぇよ、何か流れに流れて変な村(ここでは"くに"というらしい)に流れ着いちゃったけれども!

 一体全体どうして俺はこんな所に!?


 つーかこの飛鳥っての、助けたはいいが面倒臭い。

 別に悪い奴じゃないようだが、何というか……善意の方向が全く逆のベクトルに走ってる。そんな感じだ。



「どうしました守樹殿?」

「……いや何でもない」

 どうやら急に黙りこくった俺を怪訝に思ったらしい。

 まぁこの飛鳥という少年からどう思われようが知った事では無い俺は、一先ず辺りの様子の観察に入った。

 この村、飛鳥曰く国、確かに広くデカイ、まだ国と呼ぶには狭いけれど。

 そして至極気になる点、それは道行く人々全てが物凄く!昔風な格好という事だ。俺の様に学生服に身を包んだ者等一人もいない。


「時に守樹殿」

「……なんだ飛鳥殿」

「どうして守樹殿は、その……そんな奇怪な格好を?」

「き・か・いなのは……お前らの方だぁぁぁ!!」


 飛鳥の質問に思わず叫んでしまった。周りの人々が何事かと驚いた様にこちらを振り返る。

 というか、完全に頭がすっきりした所為か元のテンションに戻って来てやがる。さっきまでの中二病テンションが嘘の様だ。




「お、脅かさないくださいよ守樹殿」

「驚くのはこっちの方だよべらんめぇ!」

 むしろ普通なのは俺の方だ。そうだそうに決まってる、だってこの学ランは全国のほとんどの高校生が袖を通す割りとオーソドックスなタイプのものなのだから。

「出合ってまだ間も浅いですが、守樹殿は変な人ですね」

「お前はお前で結構変な人ですがね」

 ジト目で言い返してみる。笑われた。何か負けた気分になった。




「ほら守樹殿、無駄話をやってる内につきましたよ」

「自覚してる無駄話程無駄なモノはないよね、でどこについたの?」

「我の姉の家です」

「へぇー、お前姉ちゃんいるんだ。で、まさか目の前に聳え立つ馬鹿でかい謎の建造物がお前の姉ちゃんちなんて言わねぇよな?」

「当たり前じゃないですか、ちなみに我の家でもあるのですが」

「何その余裕! 勝ち組?勝ち組なの!?ちくせう!」

 そうして飛鳥は門の前に立つ二人の門番(つーかどんだけ金持ちなんだよ)と二三言話して、


「じゃあ入りましょう。姉さまがお待ちです」

「身内なのに様付け敬語かよ、一体お前の姉さまってのはどんだけ位が高いお方なんだっての……」

 呆れる様に言う俺に対し、飛鳥は逆に驚く様な素振りを見せた。

「え……まさか本当に姉さまをご存知で無い?」

「ミジンコ程にもな」

 極めて冷静に返す俺。

 そんな俺に対し、飛鳥は一度だけ深呼吸して真剣な顔で言う。

「いいですか。我に対しては別に構いませんが姉さまに対してはあまり粗相の無い態度で臨んでくださいね」

「おう、任せろ!」

「心配でならない……」

 がっくりとうな垂れる飛鳥。

 俺はそこで、本当に何気無く一言呟いた。

「で、お前の姉さまってのは一体全体どんな名前なんだい?」

 そんな俺の何気無い問いに対し、うな垂れたまま飛鳥は答える。




「そんなの決まってるじゃないですか、"卑弥呼"様ですよ」

「ふー……ん?」

「邪馬台国の卑弥呼様。力もあって恐ろしい方です。もし万が一卑弥呼様の機嫌を損なうと―――」


 邪馬台国の卑弥呼だって? そんな馬鹿な話が……、それじゃあ……ここは、ここは……!


「呪い殺されてしまいますよ?」

 あ、いえそこは問題無し(モーマンタイ)です。



 ここから先は気が向くままに書いていきます。遅筆ですがすみません。

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