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八話 月夜の晩に



「はぁ……超モフい…」

「――ねぇちょっと…もういいでしょ、ウサギ達怖がってるから」



 とある森の中で、一人の人間(俺)に対し一人の妖怪少女が言った。

 俺は辺りにいる大量のウサギを抱き寄せて幸せそうな表情で座っており、妖怪の少女はそんな俺の様子に呆れ半分、怖さ半分といった感じに話す。


「む…まぁ、そうだな――名残惜しいが」

 そう言って少年がウサギを解放すると、ウサギ達は一目散にクモの子の様に散らばっていく。

 そんなウサギ達の様子に、一方の垂れウサ耳が特徴的な妖怪少女は軽く胸を撫で下ろし安堵した。

「はぁ、これでようやく安心だ」

「……安心って、何か心配事でもあったのか?」

「そりゃあどっかの人間の食い物にされないかって事だよ!」

 悩みの種の張本人が全く現状を理解出来ていなかった為、思わず少女は声を荒らげた。荒らげてすぐ、『しまった!』っといった風に慌てて口に手をやる。

「……」


 そんな少女の姿を、俺は無言で見つめた後、

「………」

 スッと徐に少女に掌を翳す。

「……ぃ!」

 っと掌を翳した瞬間に、妖怪少女も即座に体をピクリと反応させ小さい悲鳴を上げた。

 悲鳴を上げ、僅かに震える少女の姿に何とも言えない居た堪れなさが奥底から湧き上がってくる。

 ――どうやら、俺に今できる事は一つのようだ。それは――、



「………えーと、とりあえずごめんなさい、なのか?」

「な、何が?」

 困惑気味の俺と、こちらも困惑気味の少女。 少女の見た目も相まってか、傍から見れば完全に変質者と被害者の図になっている。


「いやさ、何か凄い怖がってるから……俺、何かしたかなぁっと」

「そ…そりゃあ、こんな状況だし……何かされないか心配だなぁって……」

 何かって何だよ…、と俺はガックリと肩を落とした。 相手は確かに妖怪だが、見た目は小さな女の子だ。そんな子にこれだけ恐怖されてちゃ、何か人として大事な物を失った気がするのだ。


(――って、いつかと同じシチュだなこりゃ)

 洞窟でぐっすりと寝ているであろう連れの顔を思い出しつつ、少年は目の前の少女を見据える。

 あの時の少女と同じく、目の前の少女はまだ恐怖を捨てきれていないようだ。

 ――となると、今から俺がやる行動は一つという事になる。




「……守樹だ」

「……へ?」

「へじゃない。守樹、人間の守樹。俺の名前だよ」

 ――今俺に出来るやるべき行動はたった一つ、それはルーミアの時と同じく自己紹介。

 まずは俺に敵意が無い事を彼女に知ってもらう必要がある。そしてその方法は、成功事例もあるこの方法しか無いと俺は確信したのだ。


「ほら、お前さんの名前は?」

「――い、因幡てゐ。妖怪兎の、てゐだよ」

 俺に急かされる形で目の前の少女、てゐも自己紹介をしてきた。

 さてこれでお互いに素性も知れた訳だから、もう見知らぬ他人という枠組みからは外れる事となる。

 これで俺達の関係もより一層……一層……、



「――あれ? 俺達って何で自己紹介し合ってるんだっけ?」

「それ今更聞くの!?」

 首を傾げる俺に鋭くツッコミを入れるてゐ。どうやら彼女にはツッコミの才能があるようだ、会って間もない為確証は無いが。

「――あぁそうだ。お前さんがやけに怖がってるからまずは話し合える状況を作ろうと思ったのだった――んで、何でそんなに怖がってるんだ?」

「それは、だからあんたが私に何かしないかと……」

「何かって何だよ? 別に何ともしないさ」

 生憎こんな少女を泣かして楽しむ欲求等持ち合わせてはいない。 ましてや少女の泣き顔等言語道断だ。

 やはり女の子は、笑ってる顔が一番だと俺は思っている。



 両手を挙げてやれやれとジェスチャーを取る俺に対し、てゐはゆっくりと右腕を上げて指差して来て、

「じゃ、じゃあそのナイフは?」

「……これか? これは狩り用のナイフだよ。凶暴な猪から可愛い可愛いウサギちゃんまで、このナイフ一本で――」

「やっぱり何かする気じゃないのさ!?」

 ……おっとこれはまずった!相手はウサギ、妖怪兎だった。

「だ、大丈夫だよ! これはウサギと言っても妖怪兎まで食べたりしないさ」

「普通のウサギでも食べないでよ!!」

 涙目でそう訴えかけてくるてゐ。――確かに同族が食べられるのは我慢ならないものがあるな、理屈は分かるが、俺も人が妖怪に食べられるのは嫌だし。

「あ、あぁ分かったよ。もうウサギは食べない!一生!約束するよ」

「……ホントに?」

「ホントホント!」

 やけに軽い調子で言う俺が信用ならないのかまだ少し疑いの眼差しを向けてくるてゐ。

 そんな彼女の眼は僅かな涙で濡れていて、潤んでいて―――正直凄く、可愛かった。



(――っと平常心平常心、俺は紳士だ紳士。YESロリータNOタッチ!)

 多少ドギマギしそうになるが、外見上は平静を保つ。

「それで、お前さんは一体こんな所で何をしてるんだ? 見た感じあのウサギ達は野ウサギみたいだし」

 理由としては、あのウサギ達がまだ戻ってこないという事。

 俺がいるから当然、とも言えるがそれにしては群れの頭らしきこの妖怪兎を全く省みない辺り、あまり強い繋がりは無いと踏んだのだ。


「……そう、あのウサギ達は野良だよ。知り合ったばかりだから別に特別友達じゃないし」

「やっぱりか。で、どしてこんあトコに?」

「別に、理由なんて無いよ。たまたま旅してたらここにいたってだけさ」

(つまり……同業者、って事になるのかな?)

 答えは不明である。そもそも旅を職にしてもいいものだろうか。




 さて、あまり目線を合わせようとせず、向こうを向いたまま喋るてゐだが、痺れを切らしたのか、

「も、もういいでしょ! 何も無いなら私はそろそろ行かせてもらうよ!」

 と言い、強引に俺を押しのける様にてゐはずかずかと傍を通る。

「なぁお前さんの旅ってのには目的があるのかい!?」

「……別に無いよ、強いていうなら安住出来る場所…かな」

 先を進もうとする彼女を呼び止め質問し、彼女も立ち止まり質問に答える。

 ――そして、彼女の答えからしてどうやら特別な理由なんてものは無いらしい。




(――してみるだけ、提案してみるか)

 そして足を前へと出そうとするてゐの腕を不意に掴んだ俺は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて言う。

「てゐ、お前……俺達と来ないか?」




 バッと驚き様に振り返るてゐ、そして数秒の無言の後、引きつった顔で彼女は声を振り絞り言った。

「……へ、変態さん?」

「いやちげーよ」

 無論、即否定。 俺はロリコンでは無い、はずだ。現代にいた時も学生ながらクラスの子の事を若干気になったりしていたし。


「旅は道ずれって言うだろ」

「……仮にあんたに着いていくとして、あたしは自分の身が心配なんだけど」

「大丈夫、お前さんと同じ位の妖怪の子もいるし」

「あちゃー遅かったかぁ……って妖怪の子!?」

「遅くねぇし手ぇ出してねぇし! ……そんな不自然かねぇ、人と妖怪が共に旅するのって」

「当たり前じゃん! だって妖怪だよ!? 人食べるよ!?」

「はぁ……だったら、じゃあお前は人を食べるのか?」

「いや、どちらかというと私の方が捕食対象だから」

「……そういえばそうか」


 手の平にポンっともう片方の手を乗せて納得する俺。

 固まるてゐ。

 そして次にポンっとてゐの肩に手を乗せる俺。


「一緒に来るか?」

「……嫌だ」

「一緒に来ませんか?」

「…嫌」

「来る?」

「い・や!」

「……」


 どれだけ問い詰めてもてゐの答えは変わらないらしい。

(……これは仕方無い。かな)

 これ以上やっていても時間の無駄だしと、俺はすっかり暗くなった空を仰ぎため息をついて悟る。二人よりも三人の方が旅は楽しいと思うのだが――諦めるしか無いようだ。

 ……それに流石にこれ以上しつこいとストーカー染みてる気がするし、何かもう手遅れの様な気もするけど……。




「分かったよ。まぁ今生の別れって訳でも無いしな、お互いに旅してりゃあまた会えるでしょ」

「……え?――あぁ、うん、そだね。ははは」

 急に諦めのついた俺に拍子抜けでもしたのか、はたまた実は期待してたり……しないか、てゐは複雑な表情でごまかし笑いをした。

 俺も俺で、そんな彼女の様子にはあえて突っ込まない事にしたのだった。





「さてと、俺は連れの妖怪の為にも急いで獲物を見つけなきゃいけない訳だしな。そろそろ行くよ」

「う、ウサギは駄目だよ!?」

「分かってるって」

 どうやらまだウサギの事心配らしい。俺は心配そうにこちらを見送るてゐに苦笑いで答えて背を向けた。

 また今度会えるのは何年、何十年後か。そんな未来への期待を持って背を向けて、




 背を向けた瞬間、俺の頭の上半分が千切れ飛んだ。













「――え?」

 妖怪兎、因幡てゐは思わず声を漏らし、次に現状を理解した瞬間、目の前の守樹という人間だったものを見下ろした。

 そこにあったのはただの死体、鼻から下しか無い身体。上半分は近場の木に、彼をこんな状態にしたと思しき巨大な斧と共にこびりついていた。

「……な、何が……」

「あぁ、そりゃあ俺がやったんだよ」

 新鮮な血の匂いに思わず鼻を押え、よろめいた直後、後ろに気配を察知する。――が、もはやその時点では遅い。彼女が逃げるよりも早くその"モノ"の腕は彼女の小さな身体を捕らえた。

「ひひひ、新鮮な人の肉に兎肉か、今日はご馳走だぜぇ!」

 彼女の身体はその"モノ"の大きな掌に包まれ、その"モノ"の目の前へと彼女は持っていかれる。

「……妖怪か」

「そういうこった、兎ちゃん」

 てゐが見た"モノ"は大きな牛の妖怪だった。有体に言えば、巨大な牛が二足歩行で歩いているだけの格好。さしずめ西洋風に言うところのミノタウロスといった所か。

 牛妖怪は『ひひひ』と口元を歪ませ、薄汚れた歯を彼女にチラつかせる。その口からは異臭が漂い、思わずてゐは顔を顰めたが、その瞬間、牛妖怪によって地面へと思い切り叩きつけられた。



「――がぁ!」



 今まで健康に気を付けて、それだけで長生きしてきたてゐにとってその痛みは本当に久しぶりに味わう痛み。故に痛覚の刺激から来る久々の感覚は、彼女の精神を必要以上に傷つけた。

「……う、ぅぅ……」

「ひひひ! そうそうそうこなくっちゃなぁ兎ちゃん!」

「っけほ……っぐ!」

 涙目で牛妖怪を睨みながら、ヨロヨロとてゐは立ち上がる。

 どうやら敵はまだ自分の事を見下し、余裕を持っている様だ。そう判断したてゐは頭を切り替える。

(別に戦う必要なんて無い。勝ち目なんて無いんだし……それに私の足なら逃げ切れる!)

 自身の足には自信を持っていたてゐは当然戦闘の選択肢に"逃げる"を選択。常にこうやって逃げて長生きしてきた彼女にとっては当然の選択である。




(――今!)


 そしてタイミングを見計らい、足で地面を蹴ったその時だった。


「そういやぁ、あの野兎達も美味かったなぁぁ……」


 背筋が凍る思い、牛妖怪から発せられた言葉でてゐの足は数歩地面を走っただけで止まった。


「何匹食ったかなぁ…もう覚えてねぇけど、あいつらは今まで食った兎の中でも別物だったなぁ……」

「……やめろ……」

「肉は簡単に噛み千切れるし、良い物食ってるのか味も格別だったぁ…」

「やめ……」

「兎の踊り食いってのもヤバかったなぁ…あれははまった、またやろう……」

「――やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 てゐの絶叫が森に響き渡った。

 涙で滲む瞳で精一杯牛妖怪を睨みながら、てゐは牛妖怪に突撃する。

「はっはっは! 効く訳ねぇだろぉテメェの様な小っさい妖怪兎の攻撃なんざぁ!」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 あざ笑う牛妖怪の言葉を無視して、てゐはそのまま思い切り牛妖怪の腹へと張り手をする。


 瞬間、てゐの掌で爆発が起こる。

 それはてゐが右腕に溜めた妖力で作った"力の塊"、それをてゐは自らの怪我を省みず、牛妖怪の腹で爆発させたのだ。

 そしてそれは飛ばして使うよりもずっと威力が大きくなる使い方。

「……はぁ、はぁ……これなら、あたしでも……!」

 てゐは力の弱い妖怪だ。 だけど仲間を食われ、天津さえ馬鹿にされた怒りには逆らえない。 自身を傷つけてでも一糸報いてやりたかったのだ。




 ――だが、

「……なんだぁ蚊かぁ…?」

「そ…そん、な…」

 彼女の捨て身の攻撃は全くと言っていい程効いていなかった。

 そして同時に、彼女は逃げるチャンスを完全に失ってしまった。

「ひはははぁぁ!」

「――っぁあ!」

 またしてもその巨大な手に鷲づかみにされるてゐ、必死に抵抗してみるも全く効果は見られない。

「――んの! 離せ!離せよぉ!!」

「やぁなこったぁ!」

 てゐの命を弄ぶかの様に、牛妖怪は徐々に握る力を強めていく。

「っが…! ぅぅ…あ!!」

「ひっひっひ! ボッロボッロに砕いてから丸飲みしてやるぜぇ! 抵抗出来ない相手の踊り食いってのも面白そうだぁぁ!」

「やめ……あ……」

「ひひひひ、ははははは、ひははははははは!!」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 牛妖怪の笑いと、てゐの絶叫が重なった。




「ひははは――――は?」

 ――のも束の間の事。

「――な」

 高笑いしていた牛妖怪の顔が見る見る青ざめていく、状況が理解出来ないのだ。

 何故自分がこんな状況に陥っているのか、何故あの妖怪兎が地面に横たわっているのか、何故自分の腕があの妖怪兎の近くに転がっているのか。

「なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁ!?」

 肘から先が無くなった右腕を見て、牛妖怪は改めて絶叫し、

「大丈夫ー? 兎さん?」

 そんな哀れな妖怪の絶叫をかき消すかの如く、幼い少女の声が響く。

「――っ……あん…たは……?」

「私はルーミア」

 まるで十字架に縛られた様な、両手を水平に伸ばした金髪の少女は答えた。

「暗闇の妖怪、ルーミアだよ」

 余りにも場違いな笑顔で、少女は再度そう答えた。



「ルー……ミア?」

「そうだよ……っていうかさ――」



「て…テメェか俺の腕をこんなにしたのはぁぁぁぁ!!」

 まるで何かを探す様にキョロキョロと辺りを見回す金髪の少女に、牛妖怪は怒りの形相で突進する。その太い腕で少女を殴り殺す為だ。

「何時まで寝てるつもりなの?守樹」

「……え?」

 その時、てゐの真横を何かが通り抜けた。

 一瞬だった為はっきりとはてゐには見えなかったが、それははっきりと人の形をしていて、

「――しょうがないだろう。頭は完全に蘇生するまで考える事すら出来ないんだから……」

 死んだはずの人間はそう呟きながら、ルーミアへと突進する牛妖怪の首を簡単に刈り取ったのだった。













「全く!今回は偶々運が良かったから良かったけど、私が来なかったら多分ウサギさん死んでたよ! 守樹の所為で!」

「……悪かったって、今度からは蘇生方法も見直すよ」


 俺達は今焚き火を囲んで暖を取りつつ食事をしていた。

 食材は勿論牛妖怪――っといってもそのままだと気色悪くて食べれないので俺が能力を使って元の牛に戻して、だが。


「っていうかさー、守樹の能力って何でも出来るんだから火や焚き木も能力で調達すればいいのに」

「馬鹿お前、何でも能力頼みは良くないぜ」

「牛は良いのに?」

「牛は良いの、無益な殺生は好きじゃ無いのよ」


 まぁ過去に邪馬台国に押し寄せた妖怪軍を殺しまくった事もあるが、あれは一応世話になった人達への礼も兼ねてるからOKという事にしている。うん、自分ルールだ。




「ほらてゐ、食べないのか?」

「……へ?」

「……守樹、少しは気を使った方が良いと思うなぁ」


 ふと一向に箸の進んで無いてゐに気づき声をかけてみたらルーミアに注意された。

 ――一体何故だろう。


「その牛、兎沢山食べてるんだよ?」

「……あ」


 ルーミアに言われようやく気づく。確かに、俺も人を食ったばかりの鮫のフカヒレを食えと言われても、絶対に箸は進まないだろう。


「どうしよう、今から別の食材探しに行くってのも……」

「……ううん、あたしは大丈夫だよ」

 立ち上がろうとする俺を制止するてゐ、そしててゐは恐る恐る箸を目の前まで運んで、

「……あ」

 食べる。同時にルーミアが小さな声を上げる。

「おいてゐ、お前……」

「大丈夫って言ったでしょ…食べられ損じゃあ、ウサギ達が可哀想じゃないさ……それにほら、別にウサギが中に入ってる訳でも無いし!」

 彼女はそう言うもやはり顔色は悪い。

 ――が、それでもかきこむ様に牛肉を口に運んだ。

「――っケホ…っかは!」

「ウサギさん!」

 咳き込むてゐを心配そうに覗き込むルーミア。 だが、そのルーミアをてゐは右手で制止した。

 そしてそのままルーミアの目の前で手を固定するてゐ。


「……ウサギさん?」

「……てゐ」

「……え?」

「これから一緒に旅する道連れの名前だよ。ルーミア」


 それだけ言うと、てゐはふらりと立ち上がった。


「――もう飯は無いぞ?」

「――心配しなさんな、ちょっと野暮用だよ――守樹」

「……そうかい」


 俺は立ち上がったてゐとそれだけの会話をし、そしててゐはフラフラと森の闇の中へと消える。

「……守樹? 一緒に旅するって……」

「そういうこったよルーミア」

 聞いてくるルーミアの顔には僅かな喜びが見えた。 実年齢は恐らく違えど、それでも容姿年齢的には近く同じ少女同士の二人だ。やはり俺の判断は正しかったらしい。




「明日からは騒がしくなりそうだな……」

 そう呟いて見上げた月は、一際輝いて見えたのだった。



 おめでとう! てゐが なかまに なった!

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