月光光線。
「もうこんな時間か⋯」
ずいぶんと長いこと、教室で夕日を見ていた。
もう帰ろう。
そう思い、荷物をまとめた。
今度はちゃんと資料もいれた。
完璧だ。
廊下に出て、ふ、と月に目をやる。
あぁ、月が屋上を照らして⋯。
屋上?屋上⋯。
「⋯え?」
人影⋯。
こんな時間に?
屋上に動く影。
何をするでもなく、ただ景色を眺めるその人影。
俺は珍しく思い、その人影をしばらく見ていた。
その人は、何をするでもなく、フェンスにもたれて屋上から景色を眺めている。
金髪で、細身。年齢はおそらく、俺と同い年くらいだろうか。
外国人か?
なんであんな場所に?
その時だった。
今まで雲に隠れていた月が顔を出して、その正体を照らした。
月光が照らした顔。
雷亜か?
芦川雷亜⋯なのか?
その瞬間、何かがプツンと切れる音がした。
俺は屋上へ全力で走った。
はあ、はあ、と息が切れる。
今は身なりも何も気にしていられない。
わざわざ取りに帰ってきた資料も投げ捨てて、期待と不安、
そして怒りと喜びでガクガクと力が入らない膝を動かして走った。
となりの校舎へと繋がる、長い長い渡り廊下を走り抜け、階段を上り、走った。
ガチャ
俺は屋上のドアを勢いよくあけた。