2度目の春から、3か月。
「荒木!」
名前を呼ばれて振り向くと、見たことのある顔が、ひとつ。
「なんだ、工藤か」
「なんだってなんだよー」
工藤は苦笑いしながら手招きする。
「帰ろうぜ!」
「おう!」
鞄を持って教室を出る。
授業を終え、賑わう廊下。
家路を急ぐ者も居れば、部活に勤しむ者も居る。
「工藤、今日部活無いのか?」
「あー、サボった」
「サイテーだな、お前」
ジトっとした目で見ると、爽やかな笑顔で
たまにはいいだろ
と言われたので、何も言えない。
この工藤遼って奴は、爽やかだしイケメンだし、サッカー部のエースで勉強も出来て、いい奴なんだが、どこか抜けている。
しかしそれがギャップ?かなんからしく(俺には全く理解できないが)とりあえずモテる。
今流行りのギャップ萌え?ってやつらしい。
てか、エースが部活に行かなくていいんだろうか。
あ、エースだから部活行かなくていいのか。
なんて自己完結してみる。
階段で一階まで降り、下駄箱で靴を履き替え校舎を出るときだった。
「あの⋯工藤くんっ」
後ろから女子が工藤に声をかけた。
「俺?」
「ちょっといいかな?」
「あー⋯」
工藤は俺と女子を交互に見る。
「俺は別にいいよ。行ってやれよ」
そう言うと、工藤はその女子に「ちょっと待ってて」と告げると、俺の元へ駆け寄って来て、
「裕也、ちょっと」
(なんだよ。俺は別に一人で帰れますよ。ガキじゃねえんだから!それにあの子告白だろ?行ってやれって。)
(そうじゃなくて⋯)
(?)
(⋯雷亜から⋯連絡あったか?)
(⋯⋯無い。)
(そうか⋯。)
(お前が心配することじゃないって。あいつ口では言わねえけど寂しがり屋だからさ。そのうち帰ってくるって。)
(おう⋯)
(じゃあもう行けって。女の子待たせてんじゃねーよ。)
(⋯じゃあ、連絡あったら教えろよ!じゃあな!)
そう告げると、さっきの女子の元へと駆けて行った。
俺は靴を履き替えて、校舎を出た。
7月とはいえ、さすがにもうブレザーは暑い。
俺はブレザーを片手に持ち、立ち止まって西に傾いている夕日を見上げ、空を仰いだ。
オレンジに染まった空が綺麗だ。
そして、アイツを思い出した。
「雷亜、お前⋯どこ行っちまったんだよ」
それだけ呟くと、俺は校門を出た。