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空、仰ぐ。  作者: 亜紅亜
2/6

2度目の春から、3か月。


「荒木!」


名前を呼ばれて振り向くと、見たことのある顔が、ひとつ。


「なんだ、工藤か」


「なんだってなんだよー」


工藤は苦笑いしながら手招きする。


「帰ろうぜ!」


「おう!」


鞄を持って教室を出る。

授業を終え、賑わう廊下。

家路を急ぐ者も居れば、部活に勤しむ者も居る。


「工藤、今日部活無いのか?」


「あー、サボった」


「サイテーだな、お前」


ジトっとした目で見ると、爽やかな笑顔で


たまにはいいだろ


と言われたので、何も言えない。

この工藤遼って奴は、爽やかだしイケメンだし、サッカー部のエースで勉強も出来て、いい奴なんだが、どこか抜けている。

しかしそれがギャップ?かなんからしく(俺には全く理解できないが)とりあえずモテる。

今流行りのギャップ萌え?ってやつらしい。

てか、エースが部活に行かなくていいんだろうか。

あ、エースだから部活行かなくていいのか。

なんて自己完結してみる。


階段で一階まで降り、下駄箱で靴を履き替え校舎を出るときだった。


「あの⋯工藤くんっ」


後ろから女子が工藤に声をかけた。


「俺?」


「ちょっといいかな?」


「あー⋯」


工藤は俺と女子を交互に見る。


「俺は別にいいよ。行ってやれよ」 


そう言うと、工藤はその女子に「ちょっと待ってて」と告げると、俺の元へ駆け寄って来て、


「裕也、ちょっと」


(なんだよ。俺は別に一人で帰れますよ。ガキじゃねえんだから!それにあの子告白だろ?行ってやれって。)

(そうじゃなくて⋯)

(?)

(⋯雷亜から⋯連絡あったか?)

(⋯⋯無い。)

(そうか⋯。)

(お前が心配することじゃないって。あいつ口では言わねえけど寂しがり屋だからさ。そのうち帰ってくるって。)

(おう⋯)

(じゃあもう行けって。女の子待たせてんじゃねーよ。)

(⋯じゃあ、連絡あったら教えろよ!じゃあな!)


そう告げると、さっきの女子の元へと駆けて行った。

俺は靴を履き替えて、校舎を出た。

7月とはいえ、さすがにもうブレザーは暑い。

俺はブレザーを片手に持ち、立ち止まって西に傾いている夕日を見上げ、空を仰いだ。

オレンジに染まった空が綺麗だ。

そして、アイツを思い出した。



「雷亜、お前⋯どこ行っちまったんだよ」



それだけ呟くと、俺は校門を出た。



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