第二話:あたし。
アイラ━━━。
・本名/出身地/生年月日等未公表。
・200*年07月26日、シングル
「フィルター」
でデビュー。
・翌年発売した1stアルバム
「理解者」
が70万枚の大ヒット(2ndでミリオン達成)。
・以降シングル5枚、アルバム3枚(ミニアルバム含む)をリリース。
・全作詞・作曲・編曲(共同)・ピアノをこなす。
・ライヴでのパワフルなステージングと、MC時の言葉少なでシャイな感じのギャップが面白い。
…くだらないプロフィール。
昔から歌手にはなりたかったけど、こんなデタラメな世界だとは知らなかった。
あたしには二人組デュオで一度デビューした過去がある。
シングルを2枚出したけど、さっぱり売れず解散…と云うか自然消滅。
「キミは今日から『アイラ』だ。必ず売れる様にオレ達が形作って行くからな。…まずは、歌い方。これから聴かせる音源のマネをする様に」
流れてきたのは、聴いた事も無い外国人歌手の歌声。
「これ、日本では売れてないんだけどさ、歌い方が個性的だろう?キミをこの歌い方で大々的に売り出せば、きっとウケる!」
熱っぽく語られて、少し退いたのを覚えてる。
でも、あたしは一度頂点に登ってみたかったから、成すがままにうなづいて居た。
それから、その歌い方を完璧に習得するのに半年かかり、正直
「やめよう」
と思わずには居られない日は無かった。
けど、そんな状態の中、粗削りだけど形が見えて来たのを感じた時、あたしを含め、スタッフ全員が売れる事への
「確信」
を持ったと思う。
『作り物』とは云え、曲は自作。
その世界観を語るのに、まごついたり、ただ用意された台詞を読みあげる必要も無い。
ただ…、リスカしないと曲を産み出せない身体になったのもこの頃。
ギブ アンド テイクみたいだ、と思う。