第23話~切望の騎士~
「なっ」
俺は、思いのほか動揺していたらしい。アークナイトが近付いているのに数テンポ遅れてシャドウソードを防御に使おうとしてしまった。そう、シャドウシールドがあるはずの左手を動かしてしまった。死ぬなこれ。
「!?」
「ぐっ」
「エクシーラ、お前……」
エクシーラは、俺を庇ってアークナイトの攻撃を受けた。上段に構えていたので斬りだと思ったのだが、突きだったみたいで、エクシーラの腹を突き破り、大量の血が俺にかかる。
「!?」
エクシーラが何かをしゃべっているが、それを聞き取ろうとする前にアークナイトが止めに首を斬った。
「イシーラちゃん」
「何よラシア?」
「大丈夫かな?」
「私達がここにいるんだから大丈夫でしょ」
「そうだね」
「どうしたの? そわそわして」
ラシアは、手に持っているギルドカードを見てからそわそわとし始めていた。
「私の家のことどれくらい知ってる?」
「確か異世界からの住人としか結婚できないとか、得意な力を封印して一番苦手な力を使うとかぐらい」
「それは結果。異世界人としか結婚できないということはない。でも、護衛していくうちに結婚までしちゃうの。得意な力を封印してるのは……使うとき以外は不要な力を使わないようにするため。あれでもお母さんは魔法が得意なの」
「えっ、あんたの母さんって有名な剣士でしょ、何で魔法が得意なのよ。私、あの人真似て大剣使いになったんだけど」
「話を戻すけど、何でそわそわしているのかっていうとね、あのお兄さん、ヨシツグさん何だけど……」
ラシアは再びギルドカードを見る。
「そのおっさんのギルドカードがどうしたのさ」
「称号が信愛の騎士、ギルドランクがダイヤのクイーンなの」
義嗣をおっさん扱いしたイシーラに不快感を抱きながら話すラシア。
「クイーンって、うそ」
「正直、クイーンはどうでもいいの。でも、信愛の騎士の称号は……私の家系が代々守ってきた騎士なの。しかも、今回は2人の神様から直々にお願いされてるからヨシツグのところにいかないといけないの……でも、形式上、本来の力を使うには神様に許可を貰わなくちゃいけないのに……」
不意に、イシーラの周囲が明るくなる。そして、収納していたイシーラのギルドカードとエクシーラのギルドカードがイシーラの目の前に現れ、その下に魔法陣が出現した。
「えっ」
エクシーラのギルドカードが砂のように消滅し、イシーラのギルドカードが銀色からクリスタル色に変化した。同時にイシーラにも変化が訪れる。出血のために体力が尽きかけて体に力が入らなかったが、一瞬にして疲れが吹き飛び、今まで以上に力が溢れている。そして身なりも変わっていた。
彼女の象徴たる大剣は反りのある2本の片手剣に変化する。装飾はないが、鞘と刀身の色はシルバーの表面にそれどれクリアレッド、クリアブルーを塗ったかのような感じだ。
次に、もともとの彼女の服装は、動きが阻害されないようにしている皮の鎧以外は特にこれといった特徴はない。インナーは上下赤いものを着ていたみたいだが、今は、上下黒のスーツに、黒のコートと、まるで義嗣が着ていた格好のようだ。
「……ラシア、神様に連絡がつけばいいのよね」
「うん、そうだけど……イシーラちゃん?」
「『切なる望みを叶える為、我等騎士に力を!』」
「お願い、イシーラちゃん、ラシアちゃん、義嗣を救って!」
「救愛の騎士、切望の騎士の封印解除、行きなさい!」
「「はい!!」」