第19話~危機~
俺の銃での戦闘は、まあ、アニメで見た程度だ。イーグルなんてものを片手で使えば反動で手首を痛めることぐらい知っている。それに、命中など、到底不可能であることも。でも、洞窟では刀は使いづらいのでイーグルを使っているのだが、連射しなければなんとかなることを、さっきの戦闘で確認した。だが、この時は何故か左手にイーグル、右手に桜蒼を握りなおした。
俺の手は、幼少の頃は左利きだったが、右利きに矯正したらしい。記憶にはないしその残滓なのかは分からないが、右手は力がある。利き腕だからだが……
それとは逆に左手はコントロールが右手よりも高い。まあ、右手のように箸を使えるわけではないので、わずかな違いではあるのだがそれが無意識に働いたのだろう。
声の方向へ向かうと大剣使いと魔法使いの格好をした少女達がいた。大剣使いは腕と腹部から出血をしている。魔法使いの少女も体がガチガチに固まっているようだ。二人を見ていると視界の端に何か見えたのと同じくして寒気がした。
「ちっ」
俺はとっさに左手で持ったイーグルで見えた敵に連射すると、銃をしまう。
「くっ、少年!二人は大丈夫か?」
「魔法使いの子は魔力を使い切ってしまっただけみたいです。でも、剣の子は意識が無いです。どうして戻れなんでしょうか?」
「そんなことは後だ。逃げるぞ。まともに戦えるのは少年だけだからな。」
刀を納刀し、魔法使いの子を右腕で抱えて逃げる準備をする。
「えっ?」
「利き腕で銃を持ってなかったからな。とっさに連射したせいで腕やられた。魔法使いは装備も軽いから辛うじて利き腕で抱えられる」
「早く逃げてください。……敵は、アークナイトですっ!!」
魔法使いの子の声と同じくして敵が向かってくる。アークナイトは、棺の鎧をまとった戦士。棺の鎧に大剣を持つシュールなモンスターであるが、その力は歴戦の戦士と言える。
「ちっ」
俺は、痛めている左腕で銃を連射しようとするが、ホルダーにしまうときにロックも掛けてしまったのを忘れていたので動作が遅れてしまう。
「ファイヤーアロー!」
炎の矢が一本敵に向かい、アークナイトを硬直させているときになって準備ができて連射する。
「帰ったら医者行かなきゃな」
「はぁ、はぁ、もう、ま、ほう、使えません、よ」
俺達は、後ろを見ずに出口へと向かった。
「はぁ、はぁ、少年」
息が切れてきた。肉体年齢を感じる。休みたい。
「何ですか?」
「こんなにこの迷宮は長かったか?」
「あっ、そう言えばもう出口に出てもいいはず」
「神様達が何も言ってこないのもおかしいし、剣の子のこともある」
「待てよ……携帯で」
紅暗と総合診療の神とエトファに救難のメールを送ってみた。
「……メーラードメイン……だめか」
「ヨシツグさん?」
「俺の携帯は、通信機になっててな、知り合いに連絡がつくかと思ったが無理みたいだ。一応、少年のギルドカード貸してくれ?」
「これで少年と通信できるはずなんだが……できないな……それに、少年のカードを見て、俺のも見て見たが……神に関連する信仰神や称号が消えている」
「こう、なると、まずいぞ。出れないし、敵は俺達よりも強いし、けが人がいるし、疲れている」
「でも、時間が経てば誰かが来てくれますよ」
「それも無駄だと思うぞ」
「どうしてですか!?」
「少年、この携帯の画面、少しの間ずっと見ていろ」
「……」
「見ましたけど?」
「さっきから変わらなくちゃいけないものが変わってないんだ」
「えっ?」
「時間がさっきから変わってないんだよ」
「じゃ、どうすればいいんですか!!」
「おそらく、アークナイトを倒さないと出れないのだろうなぁ」
「まずは、回復だな。」
「魔法使いの子、名前は?」
「ラシア……です」
「回復魔法使える?」
「使えますが、魔力が……」
「じゃ、これ飲んで」
「何ですかこれ?」
「栄養ドリンク。多分、少しは魔力が回復する。疲労回復に効く飲み物だけど、魔力回復も疲労回復も両方必要だからいいだろ?」
「ごく、ごく。凄い、楽になりました。」
「魔力は?」
「3回くらいなら使えます」
「じゃ、3回全部その剣の子に使って」
「はい」
「ヒール」
「ここは」
「良かった。イシーラちゃん」
「綺麗な布がないから洗顔シートを重ねてマフラーを斬って包帯の代わり……」
「これで、少しは戦えるだろう」
「ありがとう」
「ラシアのヒールで出血は治まったし傷もふさがったが、失った血が結構ある、これ飲んどけ」
「はい」
「後は……栄養ドリンクまだあったな。不味いけどかなり効くのが……少年、念の為飲んどけ。凄いまずいが」
「はい……うわっ、な、んでこんなに……甘いんですか……」
「えっとイシちゃん以外はこれを飲んでおこう。コムラガエリの薬」
「コムラガエリ?」
「足とかの筋肉が使いすぎで動かなくなるのを和らげる薬。俺がそれになりやすいから常備薬として持ってたんだ」
「でも、何でイシーラさんは飲んじゃいけないんですか?」
「筋肉を柔らかくするものが入ってるかも知れないから、怪我してるのにうかつに飲んだらどうなるかわからん。あっ、風邪薬使えるな。これ飲んどけイシちゃん」
「風邪薬? 何で?」
「怪我したんだから、解熱剤の代わりに」
「解熱剤?」
「風邪薬は、その名の通り風邪に効くけど、その中には熱下げる成分あるから……気付いてないのかもしれないが、平熱より若干高いと思うぞ」
「後は、少年はいいが、他はあまり若くない、体力ない俺と怪我人と精神使う魔法使いだから言っておく。それ飲んでからまともに動けるのは3時間だ。戦うとなるともっと短くなる」
「えっ?」
「どういうことですか?」
「道具屋で売っている回復薬とは違って一時的な疲労回復、回復を促進するような力しかない。その分体にかかる負担は少ないが、常飲すると効き目が無くなるし、こいつでも、胃に負担がかかる」
「僕のだけやけに不味かったのは、やっぱり」
「胃への負担が高いが、健康な少年なら大丈夫だろうからな。だけど、2人が飲んだ方も少なからず負担があるからなぁ。一応錠剤もあるが、こっちは今は使わない方がいいし」
「どうしてですか?」
「長く効くように、簡単には消化されないんだ。だから、寝る前とかに飲む用とでも思ってくれ」
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名前:宮下義嗣
レベル:1
職業:システムエンジニア、運用オペレーター、エンバーマー
職種:システムサービス、葬祭サービス
称号:信愛の騎士
筋力:2
体力:2
速度:3
魔力:3
知力:2
器用:2
精神:2
運勢:2
霊力:3
超能力:3
称号特性:遺族、ご遺体の信愛度が高ければ、高いほど、そのご遺体の能力を受け継ぐことができる
祝福:
プログラミング能力上昇
特技:
混乱上昇、記憶力低下、コミュニケーション能力低下、気力低下、二重人格、霊力、超能力使用不可
特記事項:
職業はSEだが、不況の影響で運用オペレーターをやっていた。
特殊基本能力:
霊力、超能力
所持金:200円、60万ミラ
持ち物:
ビジネスバッグ、仕事用のノートと書類、クリアフォルダ、うがい薬入り喉飴、栄養剤、風邪薬、洗顔シート、筆記用具、煙草、ライター、胃薬、折りたたみ傘、スマートフォン、iP○d、携帯食料、飲み物、銃弾。
着ている服:スーツ、コート(ナイロン製薄くて安いものと、取り外し可能な2枚重ねのコードで高いやつの2着)
折りたたみ携帯の転送登録:
スーツ、携帯食料、飲み物、栄養剤、銃弾 ビジネスバック
装備
武器:折りたたみ式携帯、桜蒼、デザートイーグルカスタム50AE
胴体:防弾刃ジャケット
足:グラスファイバー製プロテクター(黒)
腕:グラスファイバー製プロテクター(黒)
アクセサリー:時計、(眼鏡)
装備特性:
火炎耐性、対弾耐性、対刃耐性、(射撃命中率上昇)
【使用アイテム】
栄養剤(栄養剤と栄養ドリンクのセット)
コムラガエリの薬
洗顔シート
マフラー
風邪薬
栄養ドリンクの内訳(強力内服液・高額な良い成分入り栄養ドリンク)すべて使用
栄養剤ビン入り2個
強力内服液は、普通の人が薄めずに飲むと気持ち悪くなるほど強力なドリンク。(強烈に甘くて紹興酒や養●酒が美味しくなるくらい。作者は飲んだ後吐き気と頭痛が治まらなくて1日寝込んだ。)
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アークナイトは、メガテンに出てくる棺の悪魔に剣持たせた奴をイメージしてください。木製なのに燃えないとか凄いけど。