第10話~夜に蠢く時~
義嗣に対して紅暗は、体を濡れタオルで拭いている。紅暗が体を拭き終わる時には、義嗣は眠りについていた。
寝る前の身支度が整った紅暗は、義嗣が熟睡していることを確認してエトファに連絡を取ることにした。早速握ったのは、先ほど銃に変化したカード。
「エトファさん。義嗣さん、眠りましたよ」
『そう。で、名前で呼んでいるってことは、うまくいっているのね』
「いえ、いつまでもあなたじゃ失礼ですよ。従者ですし。で、エトファさん、どうしてこの人に私を宛がったんですか?」
『そうね。紅暗も知っての通り、異世界からこの世界に来れる人は、電車や新幹線、モノレール等の乗り物に乗っていて、自分の住んでいた世界に失望してたり、目標や指針等、大切な何かを見失ってしまった人ね』
「はい」
『義嗣はいろんなものを見失ってるの。そして疲れ切ってるから、義嗣の世界の神達は救いたかったのかも。直接、関係のある上位の神様達に頭を下げてお願いしてたの』
「疲れきっている?」
『どんな原因か分からないけど、魂すら磨耗しているの』
「なっ!」
『このことを知っているのは世界神と一部の上位神だけ。世界神すらお手上げしているの』
「そう、だから私達が...でも、それならエトファさんが適任なんじゃ」
『そうね、私ならなんとかできるかもしれない。―――私が全力全開でいけるなら』
「そ、そんなの駄目です!」
『わかってるよ紅暗。だから貴女に頼むの。私じゃ、無茶してでも、救いたくなっちゃう程、義嗣は素敵すぎるの』
「?一体どこが」
『紅暗、どうして私達が義嗣を担当することができたと思う?』
「そういえばそうですね。職業的にIT関連の神様が担当するのが……?」
『紅暗、忘れてない? 葬祭関連の職業で唯一、安全の為に隠しておかなければならない職業』
「えっ、嘘ですよね」
『嘘じゃないわよ』
「えっ、えっ、えっ、そ、それじゃ、この人、疲れないわけないじゃないですか!!」
『そう、だから、紅暗、ちょっと羨ましいけど、義嗣は私よりも貴女の方が好きみたいなの。だから、頼むわ』
「えっ」
『気付かなかった? 表情には出なかったけど、貴女を見るときは必ず目の焦点をずらしてるの』
「えっ、こんなこと、なんて答えれば」
『もう、大分時間がたったね。そろそろおやすみかな……って思ったけど』
「?」
『もうそろそろ、サエさんが来るわ。葬祭の神の代理として対応して』
「は、はい……。わかりました」
数分後、サエがやってきた。どうやらギルドの近くに居るらしく、念話でエトファに話しかける。だが、紅暗の目の前には、幻術の魔法で、サエの若かりし頃だろう姿が映し出されていた。
『紅暗、今暇かのう?』
「ちょうど、エトファさんからサエさんのことお願いされました」
『そうか……』
「私はのう、恋人に近い人がいて、その人の為に命を張ってな。死んだ後、葬祭の神の計らいで、シュエンに来たんじゃ。まあ、その後も、新しい恋とかは目覚めなかったがのう」
「そうだったんですか」
「死んだ後も、ずっと見ていたんじゃ。彼以外は好きにはならないとまで思ったんじゃが、こんな老いぼれになってから義嗣が好きになってしもうた。だから、義嗣には幸せになって欲しいんじゃ。じゃが、わしができるのは、これを渡すことだけじゃな」
「いいんですか?」
紅暗は、受けっとったものを見ながらサエに問うた。紅暗が受け取ったのは、高額の現金の引き渡しに際しての契約書、魔法カードと、その専用武器『リバース』そして―――だった。
そして、サエの幻影は消え去って、紅暗は眠りについた。
「エトファさん」
『なに?』
「サエさんは、死にに行くんですか?」
『……サエさんは、かつての恋人を殺しに行くの』
「そうですか」
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名前:サエ・ダイヤ
レベル:300
職業:異世界案内人
職種:フィナンシャルサービス
信仰神:葬祭の神(案内の神)
クラス:救愛の騎士(先行者)
称号:信愛の仮面
称号ストック:シュエンの(母シュエンの人々に愛される。)
所属ギルド :バックロード
ギルド種別 :ダイヤ
ギルドランク:QUEEN
※称号特性反映後
筋力:7
体力:10
速度:EX
魔力:EX
知力:13
器用:A
精神:EX
運勢:11
ギルドランク特性:
射撃能力上昇、腕力上昇、脚力上昇、火炎魔法強化、幻想魔法強化、魔力吸収能力、略奪能力、暗視能力
称号特性:
全てのステータスワンランクアップ。
クラス特性:
自らの死を持って願いを叶える。
(先制攻撃の確率が上がり、バックアタックの確率が下がる。)
祝福:
どんな状況下でも笑顔を絶やさず、案内者に安心感を与えることができ、信頼も得やすくなる。
特技:
プログラミング、無詠唱、速射、精密射撃(ピンホールショット、ワンホールショット等)
魔法耐性:
火炎魔法耐性、幻想魔法耐性、精神魔法耐性
使用魔法:
加速魔法、強化魔法、幻術魔法、飛行魔法、火炎魔法、特殊魔法
魔法カード:
METAL(銃に強化魔法をかける)
PANCH(パンチの威力強化)
KICK(キックの威力強化)
TRICK(幻術系分身魔法)
FIRE(炎魔法攻撃)
CHARGE(魔法カードの魔力を補充)
FLY(飛行魔法)
CHANGE(登録しているカードの中で、プログラムされたパターンからその場で所持している最適な魔法カードになる)
NASTY(不快な音波を発生させる)
ACCEL(瞬間的に加速する)
BOOST UP(99.9秒のアイドリング時間の後、ステータスを2ランクアップさせる)
FUSION(10枚の魔法カードを融合し、同時発動させる)
FINAL EVOLUTION(葬祭の神の力の一部を行使することができる)
装備:
武器:専用武器『キングサイクロン』、日本刀、小型ナイフ10本
胴体:炭化チタナイト繊維のジャケット
腕:龍の髭で作ったグローブ
足:計測の足甲
アクセサリー:受け継がれしダイヤの指輪
持ち物:
魔法の袋、携帯食料、薬
装備特性:
魔法カード使用可能、火炎耐性、地形の目視計測力上昇
所持金 :8900ミラ
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