第01話~異世界への誘い~
「はぁ」
疲れた。
「何で働いてるんだろう」
俺は今日も体力がないのに体と頭を動かす仕事をしている。26歳にもなったのだから今更体力つけようとするのは難しい。やる気もないし。
「先に帰っていいよ」
チームリーダーにそう言われて集中力が切れる。体と頭を使う10時間労働に嫌気がさしても仕方ない。
この仕事の良いところは、通常の仕事より休みが多いというのと決まった時間に帰れるってことだろう。それ以外は何もメリットはない。
昔の方が良かったとは思う。プログラム組んだり、色々な人達と雑談にて知識を深めたり。今の仕事、人間不信になるのははっきりしていて、それでいて達成感もない。常に動いていないといけなくて、参入時には人伝えでしか教われるものがないのだ。
何年も稼働している仕事なんだからもっとまともで楽だと思ったのに、全然楽じゃねぇし、これならSEの仕事の方がやりがいがあるわ。と思う。
因みに、今やっているのは、運用オペレータだ。オペレータなのに何故かJCLという古臭い言語を使ってプログラム修正をしなくちゃいけないのは頭に来る。
要求される実力とかはしょうがないとあきらめているが、変に雑用とOA機器の使用等を頻繁に行うからむかつく。
「はぁ」
「そろそろ医者の仕事に戻ろうかな、だけど、そんな場所ないしなぁ」
俺は、医者の仕事をやるなら個人で営業したいと考えていたが、個人経営はいろいろ考えないといけないから疲れる。俺の場合週休3以上定休日を設けていないとだめかもしれない。
そんなことを考えながら電車の車内の椅子に座っていると、眠気が酷くなってきた。
「ぐぅ~、がぁ~」
「すぅ~、すぅ~」
「次は、板倉東洋大前~、板倉東洋大前です」
「次は―――」
「次は―――」
「すぅ~、すぅ~」
「次は、異世界、シュエン、シュエン、終点です」
「はっ」
俺は、ドアが開くと同時に電車から降りた。それはもう、運動不足なのに反射で降りたせいか、若い時に迫る速さだった。