その少年、主人公&その少女、ヒロイン Part-B
その少年、主人公&その少女、ヒロイン Part-A
の続きです。
ヒロイン(予定)と主人公との絡みがようやく実現。
主人公がぶっ壊れてます。
ぱんつ。
さて、この危機的状況にどう対処すべきか。
扉を開けた際に気付いてくれていれば強制イベントだとでも思えたのに。
不本意ながら選択肢を与えられてしまった。
逃げたい。この現実から、非常識から逃げたい。
出来るのなら図書室で本という非現実に目を向けて、この非常識から目を背けたい。
否。
非現実に目を向けても現実は変わらないし、非常識から目を背けても現実は変わらない。
結果的には変わらないしいずれは向こうから、女子高生から向かってくる。
じゃあ声をかけよう。
結果的に来るんだったら準備ができる今が好機じゃないか。
しかし、なんて声をかけよう。
第一声はかなり大事なはず。
第一声で相手に与える危機感が変わるといっても過言じゃない。
『何してるの?』
いや違う。もう少し上から目線で。
『人の机荒らしてんじゃねえよ!』
キャラ違う。第一人称が確実に「僕」じゃくて「俺」or「俺様」だよ。もっと僕らしく。
『水玉模様が素敵ですね』
素敵ですけれども。僕に限りなく近いけれどもさ。
『縞々ならさらに良し』
柄違い発言。水玉も好きですけれど。
『クンカクンカしても良いですか?』
変態だよね。常識的にも非常識的にも変態だよね。
『ぺろぺr』「無視すんな!瀬兎無月!」
怒鳴り声と言っていいほどの大音声で、僕の机を殴る音とともに、フルネームで呼ばれた。
女子高生に。
準備段階で気付かれちゃった。
テヘッ(笑)。
ありがたいことに言ってはいけないあの言葉は頭の中でも再生されずに済んだ。
止めてもらえて良かった。
女子高生の容姿について説明するなら一言で済む。
朝の妄想の子。
知らない人のためにもう一度頭に浮かべてみる。
『身長は160センチあたり。幼くも見えるがそこはかとなく色っぽさや艶やかさを感じる少女。黒のセミロングを2つ結びにし、色・ツヤとともに指通りの良さをも見ただけで感じ取れる髪。見たものの瞳を引き付ける大きな瞳。定例文で申し訳ないがスッと通った鼻筋。ぷるぷると潤った麗しい小さな唇。全ての各パーツに職人技が見て取れる1級品。そしてそれぞれが活かし合うかのように顔の絶妙な位置に埋め込まれている。』
である。
違う点は髪の色が茶色であることと釣り目。
綺麗な茶色に、各パーツと調和してる釣り目でこれまた美少女。
補足説明として胸が弥生時代と現代を比べるほどの発展の無さであった。
妄想を90%現実にする力でも手に入れてしまったか、偶然見た彼女を脳内保管&修正したかで今後の生活が540度変わる。
前者でも後者でもなく、単純に自分の好み(妄想)に限りなく彼女が近かっただけだろう。
さて本題に帰るか。
ファーストコンタクトは先手を取られて失敗に終わり、強制イベントとなり危機的状況に追い込まれたのは僕だった。
最悪の立ち上がりだ。
「で、結局いつからそこに突っ立てたの。それともまだ無視するの?」
強気に言ってくる彼女中心に物語が進もうとしてる。
「だんまりってわけね。机を漁ってるところは見てるんでしょ?」
展開的にまずい。
これは僕が語り部であるべきだというメタ発言をしてみる。
ここらで一発デカい不発弾的な不意打ちが必要だな。
「まぁいいや。机に入れt――」
「素敵な水玉模様だね」
「……っ!」
一瞬何を言ってるのか分からなかった彼女だが、スカートを押さえ、何故か弥生時代も押さえて顔を赤らめる。
ここでさらに畳み掛けるべし。
「5日前の縞々模様だったらさらに良かったんだけどなぁ」
「ななな、ななんなんでワタシの5日前のパンツの柄知ってんのよ!」
もちろん5日前のパンツの柄なんて知らないし、5日前は彼女自身知らない。
今もだけど。
しかし言葉だけでは完全には勝てないので表情と行動でさらに優位に立とうではないか。
真剣に考えてるかのようにして顎に右手を置きながら彼女に近づき、
「ピンクも捨てがたいけど、癒し効果のある水色が僕は好きかな。あぁ黄緑色も好きだよ」
笑顔で右人差し指を立てて好青年風変態の完成。
柄ではなく色に移り万人に対しての話をすることで相手のことを知らないことを悟られないようにする。
これぞ妙技。
またの名をコミュニケーション能力という。
冗談です。
コミュニケーション能力を持つ人はこんなことしないです。
何故か彼女より優位に立とうとしたら変な方向に進んでしまった。
自業自得です。
彼女の青ざめ寸前の引きつった顔を見て僕の発言がどれほどに常識人離れしているかが分かる。
いきなりパンツの柄が素敵とか、5日前のパンツの柄を言われたり、僕の好みのパンツの柄を聞かされたりすればこうなるのは当たり前なのだけれども。
さて、優位に立ったので先ほどのことは冗談だと言わなければ。
信じてもらえないだろうとは思っている。
だってほぼ真実だし。
嘘偽りがほとんど混ざってない純度の高い真実。
あの様子からして縞パン持ってるし。
しかも水色か黄緑色。
嘘をついたつもりが真実になってしまう。
オオカミが来たと嘘をついたらホントに来ていて村から感謝されるオオカミ少年。
僕の場合は確実に村八分されるけど。
おっと、本題に戻りますか。
「ははは、冗だ「しゃべるな!」」
「いや、ちょ、話を「しゃべるなって!」」
僕の話を聞いてくれません。
やっぱりな。
「ちょっと考えるから、しゃべらずに待ってなさい!」
頭を抱えて目をつぶり、ブツブツと何か言っている。
残念ながら全文は聞き取れない。
『いいの?』『大丈夫?』と疑問形の言葉が多々聞き取れた。
まぁ彼女の世界が形成されてしまっている以上待つしかない――。
「よし、オーケー!」
30秒ほどしてそう切り出した彼女。
「よろしでしょうか?」
「よろしい」
何故か上下関係が反転した。
「とりあえず完結的に言うと、机の中の封筒を見なさい。以上。それだけ。じゃあ」
片手を挙げ、教室の後ろのドアから出て行った。
一体なんだったのだろうか、彼女は。
封筒とか言っていたが、まさか愛の手紙だろか。
さっきのやり取りでも愛してくれるなんてポイント高いなぁ。
まぁそんなことはないのは知ってます。
なら果たし状か?
とりあえず自分の机(黒板から見て横6列、縦7列ある。僕の机は横3列目の縦1列目という教卓前のポジショニング)から彼女の言う封筒を取るべく近付く。
とその時、黒板の張り紙の文字が目に入り苦笑い。
『席替え表』
入学式から変わっていなかった席をタイミング良く変えたらしい。
黒板から見て横1列目の縦6列目という、日当たり良好で寝心地最高の窓側の席だった。
ドジっ娘属性なんだな彼女は。
強制イベントだったが回避可能な設定とは嬉しいことだ。
ありがたく回避させていただきます。
さようなら。
新席に座りお昼寝の準備をする。
ではでは、おやすみなさい。
Q.この後どうなるの?
A.さぁ?