その少年、主人公&その少女、ヒロイン Part-A
・文章能力0、素人丸出し。
・ラノベ調(であると願いたい)。
・語彙力が乏しい。
・部活系。
『その少年、主人公&その少女、ヒロイン Part-A』
桜も散りに散ってチリと化した4月の最終日。
僕と彼女、瀬兎無月と猿酉乾との出会いの日であり、僕が巻き込まれる日だった。
自転車のベルを2個ほど装備した時計、通称では目覚まし時計が枕元で鳴き叫ぶ。
その鳴き声に夢の世界から現実の世界に呼び戻される。
マンガのように投げ捨てたり、手探りでアラームをきったりせずに半眼の状態で視認しアラームをきる。
理想は目覚まし時計ではなく幼馴染が起こしに来てくれることなのだけど……残念。
「はぁ……」
僕の1日の始まりは幸せの放棄をすることだった。
何ともダメな人間だと自覚と自負はある。
体と意識を覚醒するためシンクロ率を400%になるまで上げる。
端的に言えばボーとすることである――。
いくらか経ったのちに、枕元の目覚まし時計を見ると8時を10分ほど過ぎ去っている。
アラームの時間は7時に鳴るようにしているのだが。
謎。
「ふむ、遅刻だな」
などと、内心は余裕ぶっている。が、遅刻すると目立つのでちょいとばっか鬱ってる。
「よっと」と公園の池でカップルがギーコーバッタンとしてそうな船の名前を呼びながらベッドから起き上がる。
「ん?あれはボートか」と制服に着替えながら脳みそに訂正文を入れる。
ヨットって何物(当て字)?
制服に着替え終わり1階のリビングへと降りて行く。
「なんで起こしてくれなかったんだよ」
と、母親とのコミュニケーションのため起こしてくれなかったことに対する責任転嫁の定例文を言う。
「……………………」
へんじがない ただのむじんのようだ。
そうだった。
両親は時間を取ることに成功し遅い結婚記念日を旅行先で祝っている。
1つ年下で妹の卯月は友人宅でパジャマパーティー。
どちらも2泊3日。
そして今日は2泊3日の内の、1泊2日目に該当していた。
「忘れてた。てか、まだボーとしてるな」
言いながら食パンを焼き始める。
椅子に腰かけ、今日の学校のことについて思案。
「どうせ遅刻するなら1時間目の体育はサボタージュ使用」
『しよう』という決意と、「使用」というダジャレを思いついたので言ってみた。
「そもそも体育の授業は嫌いなんだよな。球技に関してはそれぞれの部活動をしている方々と1部の声の大きい方々が頑張り始めますから。はいはい、かっこいいかっこいい。しかも授業後には教室の床に良い臭いのワックスでお掃除でもしたのですか、と質問したくなるほどの匂いが立ち込めるわけだよ。まぁ、皆さん青春してますから汗の臭いが気になっちゃて制汗スプレーをこれでもかとぶちまけていますからねえ。本当にありがたいことです」
おや、脳内で言っていたつもりが声帯の独断行為によって独り言になってしまった。
危ない危ない。声帯に注意を促さなければ。
などとくだらないことをやっていると食パンが焼けた。
教室の床にワックスを塗るかのように、制汗スプレーとは掛け離れた自然の匂いしかしない無香料の自家製イチゴジャムを塗りつける。
これでもかというほどに、『誰に』とは言わないがイヤミったらしく、ね。
イチゴジャムを塗った焼き食パンを咥えて道路を駆け出す。
「わー。遅刻、ちっこく~」
50メートルほど駆け、角を曲がる。
するとそこには少女が歩いていた。
お互い止まれずに、主に僕が止まれずにぶつかる。
「わっ!」「きゃっ!」
僕は踏ん張りが利き転ぶことはなかったが、ぶつかってしまった少女は転んでしまった。
「ご、ごめん。遅刻しそうで急いで、たっ!」
少女を起こそうと手を差し伸べたら、目の前には少女がお尻をこちらに向けて四つん這いの状況だった。
スカートがめくれて乙女の秘密を守る水色縞々模様の守護者と目が合う。
目と目が合う瞬間好きだと気付いたワケではなく、もともと好きですたい。眼福眼福。
「いたたた」と言っていた彼女が自分の状態に気付いたのか急ぎ立ち上がる。
水色縞々模様の守護者との突然の別れ。
あー、ご無体なお代官様ぁ。
こちらに振り返り、もじもじと恥ずかしそうにする彼女。
頬を赤く染め下をうつむき、時折上目遣いで僕を見てくる。
この一連の動作を見ているだけで心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
それだけでなく彼女自身の存在で自分の顔が熱くなるのも感じる。
身長は160センチあたり。幼くも見えるがそこはかとなく色っぽさや艶やかさを感じる少女。黒のセミロングを2つ結びにし、色・ツヤとともに指通りの良さをも見ただけで感じ取れる髪。見たものの瞳を引き付ける大きな瞳。定例文で申し訳ないがスッと通った鼻筋。ぷるぷると潤った麗しい小さな唇。全ての各パーツに職人技が見て取れる1級品。そしてそれぞれが活かし合うかのように顔の絶妙な位置に埋め込まれている。
初めてだ。人を見てこれほどまでに見蕩れたのは。呼吸を忘れるほど視覚に集中したのは。
なにより完全なる『美』を持った少女を見たのも。
「ああ、あの……、その……」
透き通った綺麗な声音には癒し効果あり。
マイナスイオンを擬人化してアニメ化したら声優はこの子で決定だな。
会話としては不成立な言葉を口にしたっきり唇を動かさない彼女。
ははん、なるほど。ここは紳士としてレディのコミュニケーションをエスコートするべきだな。
明るめの声で相手を怖がらせないようにして、
「ごめんね、大じょ――」
「ごご、ご、ご、ごめんなさい」
と言いながら頭を下げて僕の横を猛ダッシュで消えてしまった彼女。
エスコート失敗。何故か振られた気分になった。
出会いを開始してから会話が成立せずに僕の目の保養をし、人生初の告白に失敗た気分を味わっただけでお別れ。
しかしこれが僕と彼女との初めての出会いであり、始まりであった。
という妄想をしてみた。食事中なのに。
「まぁ、多少の性癖は露見してしまったが、イチゴジャムを塗った焼き食パンを咥えるとは斬新。……うん、そうでもなかった。それに問題点もあるな。僕は自転車通学だから、この出会いは不成立だな。もし出会ったとしたら事故だよ、コレ。これぞまさしく、『出会い頭事故』。なーんてねっ」
これが言いたくて文章にして40行近い妄想をしました。
くだらない。我ながら全てがくだらない。
そして独り言の多い人間だ。
家にいると寝そうで、1時間目どころか学校をサボタージュしてしまいそうなので登校する。
家から学校まで自転車で約20分。
頑張り次第では12分前後。
橋を1つ渡り、心臓は破らないが足に乳酸を蓄積させるには十二分の坂を超える。
平坦な道を数分間走らせると学校に到着。
僕の愛すべき母校である私立城西学園に。
学校の外観は擬洋風建築の類似品。
中身はどこにでもある学校を思い浮かべればそれが私立城西学園である。
外見と中身がデスマッ――……ミスマッチである。
ある意味でここの一画はマンガの世界に該当する。
そして僕の世界での非常識の1つである。
校舎だけの簡単な説明。
校門から見て2棟ある。
手前から職員・移動教室・文化部棟。
職員室に職員研究所、資料室、音楽室や理科室、文化部の部室などがある4階建ての棟。
次に教室棟。
1階に3年文系教室。2階に2・3年理系教室。3階に2年文系教室。4階に1年教室となっている。
そして何より、横に無意味にデカい。
玄関で上履きに履き替え廊下を歩く。
教室棟へと続く渡り廊下を歩く。
1年教室のある4階に行くため階段を上る。
階段を上りきる。
僕の教室である1-2に向かい歩く。
教室前に到着。
扉に手をかけて横にスライドさせ、無人の教室に入る。
………………………………訂正。
1人いた。
僕の机を本人の許可なく、本人の目の前で荒らしている女子高生が。
あまりの予想も出来ない出来事に思考回路はショート寸前になった。
人間、咄嗟に起こることに対して本性が出る。
そんなことを持論として語ったこともあったなぁ、と思いでポロリ。
僕は思考が止まるらしい。
が、復帰は早い。
本題に戻るとして、この女子高生どうしようかな。
授業をサボタージュして人の机を荒らしている『人』になど関わりたくないというのが本音だ。
ほんとにどうしよう?
なんとなくだけどこれって分岐点だよね――僕の高校生活の……。
そんな気がした、午前9時。