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デレクが「失礼しました」と部屋を出ていく。
私は冷たくなったコーヒーを口に含み、先ほどの話を思い返した。
ゲーリーのところに来ていたスーザン流の剣士の型稽古を見た、だっけ?
ふむ、ゲーリーの剣名を慕って、特に若い剣士が稽古をつけてもらいにやって来るとかって話は聞いたことがある。
しかし、ちょっと覗き見しただけの動きを部屋で練習して、アレかよ……。
正直、そんなことあるのか?としか思えない。
「どう思う?」と聞こうとした矢先、ゲーリーが口を開いた。
「御屋形様、実はデレク坊ちゃんの師にふさわしい双子派スーザン流の者に心あたりがあります」
「……」
「昔馴染みの者でしてな。奴こそ相応しいでしょう。このあとすぐに文を認めます」
ゲーリーがなぜかドヤ顔だ。なんかムカつく。
「そ、それは構わないが……。それより、どう思う?」
「何がですか?」
「……いや、さっきのデレクの話だよ」
「ああ、……真の天才かもしれませんな」
「いやいや……」
「御屋形様は疑っておられるのですかな?」
「まあ……な」
「あの強さは本物でしたぞ。実際に立ち会った私が断言します」
「まぁ、それは見ていただけでもわかるけど……」
「そして、あの強さ、あの動きは修練を積まねば身に付きません。これも断言できます」
うーん。まぁ……ね。
「それに、誰もデレク坊ちゃんに双子派スーザン流を教えていない。誰もデレク坊ちゃんが細剣を持ってるところすら見ていない」
「……」
「となると、部屋で練習していたというのも頷けなくもないでしょう?」
「……」
「確かに少しは本当かなと思わなくもないですが、デレク坊ちゃんが嘘をつく必要がありますか?」
うーん……。そうなんだよなぁ。嘘つく意味がないんだよなぁ。
それに噓をついているようには……、いや、ポーカーフェイスでよく分からなかった。口調も妙に坦々としていたし。
改めてデレクをじっくり見てみたが、やっぱり雰囲気が変わっていたように思う。
小さい頃はもっと表情がコロコロ変わる子だった。最近は……、はぁ、わからない……。
「別に強くなったのですから、良いではないですか?」
そりゃ、お前はな。剣術バカめ。
悪くはないけど良くもないんだよ、親としては……。あんなに急に変わられちゃうと……ねぇ。
はぁ、なんかなぁ……、釈然としないし……、心配だし。
……だが、親としてこのままではダメだということはわかった。




