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2-10

 倒れ伏した魔獣の頭のすぐ横でへたり込んでいるリナと目が合う。助けるのをやめて帰りかけたことを思い出して、オレは思わず目を逸らした。すぐにマズいと思い、辺りを警戒するかのようにグルっと視線を巡らしていく。かなり大きな池があることに初めて気づいた。だが、今はどうでもいい。


 落ち着け。


 オレは自分に言い聞かせた。黙ってりゃ、バレようがない。大丈夫だ。


 リナの顔が頭に思い浮かんだあとのことはよく覚えていない。頭の中が真っ白になって、気付いたらここにいるって感じだ。てゆうか、なんか大型魔獣を倒しちゃってるし、逃げる予定だったような……。


「デレク……。ありがとう」


「お、おう……、たまたま通りがかっただけだ。気にすんな」


 ……何言ってんだ、オレ?もっと、他に何かあるだろ。ま、まあ、間違ってはいないか……、などと考えていると、リナが見たこと無いくらい真剣な顔で言った。


「命の恩には命で返すのがロウ家の流儀だ。何かあったらこの命いつでも使って欲しい」


「いやいや……」


 結構長いことボーっと見ていただけだったことが思い出され、居たたまれない気持ちになった。


「お、大袈裟なんだよ。……今度、飯でも奢ってくれ」


 ダ、ダメだ。なんか、もっと、リナの気持ちが軽くなるような、こうユーモアを交え……って、それどころじゃない。


 鼻に入ってきた血の匂いがオレに気付かせた。このままここにいるのはマズい。大型魔獣の血に釣られて、新たな魔獣が来る。そして、リナはもう完全に戦力外だ。普段なら俺一人で勝てる魔獣でも、リナを庇ってとなると……。


 「立てるか?」と言って、オレはリナに手を差し出した。リナが手を掴んだので、引き上げようとすると、オレも疲れていたのか、思ったより足に力が入らなかった。オレはリナの上に覆いかぶさるように倒れこんだ。


 まさにその瞬間だった。オレの後頭部スレスレを何かがゴウッと音を立てて通り抜けた。


 へっ?……。


 オレは何かが通り抜けていったと思われる方を見た。少し離れたところにある大木といっていい木がスパッと切断され、ゆっくり倒れていくところだった。ハッとして、何かが来たであろう方に振り返った。デカい火の玉が飛んで来ていた。


 あっ、死んだ。


 妙に冷静にオレは思った。しかし、火の玉はオレたちの真横にあった大型魔獣の頭部に着弾した。ドンっと爆発音がし、魔獣の血や肉に土や石やらがオレたちの体を叩いた。


 えっ?……。


 火の玉が飛んできたと思われる方を見た。池の向こう側に人が4人いた。ローブのフードを目深にかぶっているので、顔は見えないが、ソイツらがコッチを見ているのはわかった。


 一瞬焦ったが、大丈夫だと判断した。今すぐに魔法が飛んでくる気配はないし、今から詠唱を始めても余裕で逃げられるだろう。それに、剣士がいたとしても、池の周りをグルッと半周しないといけない。その間に逃げられる。一応、左右と後ろを確認した。


 しばらくすると、4人組はオレたちに背を向け去って行った。


 クソっ、アイツら何だ?


 普通に殺されかけたんだが……。オレはそう思うものの、今はここを離れるのが先決だ。オレは「おぶされ」とリナに背を差し出す。リナは「ゴメンね」と言って、背に乗った。オレは走り出した。


「デレク、ソッチじゃない」


「えっ……、どっち?」


 肩越しにヌッとリナの手が伸びてきて、左側を指さした。オレは再び走り出した。そのとき、とある考えが頭をよぎった。


 もしかして……、オレって方向音痴なのかな?


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