表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/31

1-1

タイトルを少し変えました。しっくりこなかったので。あと、あらすじも少し付け加えています。

 ゆっくりと意識がクリアになってくる。少しの間、何が何だかわからなかった。そして、オレは愕然とした。


 へっ、嘘でしょ……、あそこから生き残んのかよ!?


 いやいやいや、無いわぁ……。上げてから落とされる最悪のパターンじゃねーか。オレはしばらく呆然としていたが、猛烈な尿意に我に返った。


 はぁ、早くションベン行けよ。


 こんな状態にも慣れたものだ。最初の頃は、自分のタイミングで行動を起こせないっていうのは物凄いストレスだったけど、30年も経てばね。いっそ何も感じられない方がよかったと思わないでもないが、刺激がなさ過ぎて気が狂っていたかもしれない。それはそれでよかったような気もするが……。


 オレはボーっと天井を見つめながら、誰かが余計なお節介で助けやがったんだろうか、などとつらつら考えていた。それなりの時間が過ぎたはずだった。


 ちょっと、マジで漏れる。


 オレは反射的に息子の口をギュッと閉じ、内股を締め腰を引っ込めようとした。こういう風に半ば反射的に動かせない自分の体を動かそうとしてしまうことはちょいちょいあった。


 中の人としての生活は基本的には四六時中ボケーっと横になって無理やり見たくもない舞台を見せられている感じだ。ただ、驚いたときなんかは無意識に動こうとすることはある。例えば魔宮で急に魔獣が現れたときなんかは身を竦めたり叫び声を出そうとしたりする。


 ちなみにいうと、特に最初の頃は何の根拠もなく気合いとかで身体のコントロール能力を取り戻せないかと必死になって手やら足やらを動かそうとしたものだった。タイプのお姉さんとすれ違う時に妖剣がその人を全然見ないから必死で目を動かそうと……、まぁ、それは置いておこう。……何の楽しみもなかったんだよ、ケッ。


 とにかく、妖剣が寝ているときならいけるんじゃないかとかいろいろ試してみた。時間を持て余していたからね。ただ、ずっとオレの意思で体を動かすことは叶わず、虚しくなって、最近は自分からはあんまり動かそうとはしなくなっていた。


 ……でも、今、なんか動いたっぽくないか?


 いつもと少し感触が違ったような気がした。


 ……ちょっと落ち着こうか。


 目が開いているということは妖剣も起きてるはずだよな……。うん、あの野郎は目を開けたまま寝たことはない。じゃあ何で起きねーんだ?もう漏れそうなんだが。……目を開けたまま気絶してる可能性はあるのか。


 ……うん、まあ、一応やってみるか。……期待はすんなよ。


 オレはとりあえずなぜかわからないけどまず目を動かしてみることにした。右を見た。視界が動いた。左を見た。白いカーテンが見えた。深呼吸してみた。……できていると思う。


 ハッ、と気合を入れて起き上がってみた。起き上がれた。


 ……。


 徐々に徐々に、心の底から歓喜が湧いてくる。


 ……勝った。とうとう来た。


 オレはベッドから飛び降りた。おしっこが出た。


 慌てて息子の口を引き絞り、右手で先っちょを握りしめる。ヤバい。喜んでる場合じゃなくなった。いったん出始めたおしっこを止めるのは至難の業だ。いい大人が、しかも、こんな佳き日にお漏らしは許されない。


 オレは膀胱を刺激しないようにゆっくりと室内を見回した。ドアは二つ、部屋の壁紙と同じクリーム色の簡素なやつとこげ茶色のちょっと重厚な感じのやつだ。よし、と簡素なドアの方に向かおうとしたら、足がよろけた。自分の足じゃないみたいだ。フワフワしてて動かしにくい。またちょろっと出た。


 無理やりせき止めているので、下っ腹が痛くなってきた。なんとか到着し、クリーム色のドアを開ける。ビンゴだ。オレはめっちゃ長い放尿をした。極楽、極楽。


 終了後、洗面台で手と顔を洗い、パンツとズボンに水をさりげないくらいこぼしておく。隠ぺい工作完了だ。そして、鏡を見た。


 ……誰だこの子?


 ちょっと思考が停止した。気を取り直し、よーく観察してみる。どっかで見たことある……ってゆうかオレの子供の頃の顔だよな。へっ?なんで?あれっ?


 一応、オレはパンツの中の息子を確認した。……小っちゃくなっちゃった。おしっこに夢中でよく見てなかったわ。


 えっ、子供の頃に戻ってる!?


 うわ、いくつくらいだろう?10歳くらいか?いや、もうちょいいってるような……。いまいち、よくわからん。顔つきと息子およびその周辺のツルツル感からして8~12歳ってとこだと思う。うん、15までいってないな。15なら我が息子はもっと成長していた……はずだ。


 オレは意味なく顔をペタペタ触りながら、これはぬか喜びパターンだなと案外冷静に思った。テンションがダダ下がりだ。


 子供の頃に戻ってるなんてあり得んもんなぁ。夢?オレがまだ寝てる?まぁ、おそらくそうだろう。その割にはパンツの冷たさが妙にリアルだけど……。


 とりあえず部屋に戻ってみた。今度はじっくりと室内を見回す。勉強机に本棚やらベッドやら見たことあるやつばかりだ。うん、子供の頃のオレの部屋だと思われる。本棚を見てふと思いついた。一番下の段の端に置かれていた絵本を手に取り、表紙をめくる。


 「デレク・ジュライフィールド」と小汚い字で書いてあった。


 おお、これはオレの部屋で確定だな。自分の名前が書けるようになって色んなものに名前を書いたんだよな。3歳とか4歳くらいの頃のことだ。懐かしいな……。


 いろいろ見たり触れたりしたあと、体を動かしてみた。屈伸、ジャンプ、パンチ、キック。うーん、ちょっと違和感はあるけど、自分で動かせる。まぁ、でも、夢なんだけど……。


 すると、突然、部屋のドアがノックされ声を掛けられた。


「デレク様、朝でございます」


 びっくりして変な声が出そうになったのを辛うじて抑える。ふーっと気を取り直し、「どうぞ」と言おうとして、あれっ、貴族的には「入れ」だったけか?としょうもないことで迷ってしまった。どっちだったけ?そうこうするうちに、ドアが開けられた。メイドと目が合う。


「あっ、どうも」


 変な顔された。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ