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探索する

《チュートリアル⑥:暖まろう!》


 ……やっとか。


 クラフト系のゲームなら、暖を取る――つまり火の確保は、どのゲームでも序盤も序盤に来るものだ。


 だいたい最初に素手で木を殴らされるんだよなぁ……。

 木を殴って木材ゲットして、焚き火くらいはすぐ作らされる。


 まぁ、あれはゲームの表現の問題だから、実際は殴るんじゃなくて枝を折るんだと思うが。

 ここに木なんてどこにも見当たらないけど。


 ここまでのクエスト傾向を見ても、「これを作れ」「これを集めろ」と、やること自体は分かりやすかった。


 だからこのチュートリアル⑥も、きっとすぐ終わる。

 ……終わってくれ。

 終わるだろ?

 そろそろ本気で寒いんだよ。


「よし、となれば……どうやって暖まるんだ?」


 この指輪、どう考えても俺の声を拾っている気がするんだよなぁ……。

 独り言に反応してクエストを出してきた前科もある。

 だから、こうやって口に出せば続きを表示してくれるはずだ。


 ――ぴこん。


 ほら来た。


《暖を取れそうな素材を見つけよう!》


「…………は?」


 思わず間の抜けた声が出た。


 暖を取れそうな素材?

 なんだその、ふわっとした条件。


 今までは《石を集めよう》《床を作ろう》みたいに、やることがはっきりしてたのに。


「今回はちょっと不親切じゃないか……?」


 しかも。


「……は、は、ぶぇっくしょい!」


 またもや盛大なくしゃみ。

 鼻水もずるっと出る。


「……マジで時間ないんだけど」


 濡れたパジャマは相変わらず冷たいし、指先の感覚も鈍い。

 試しにパジャマの水だけ吸えるかぽこりんに指示したけど案の定ダメだったし。

 もちろん一回脱いで地面に置いてからな。

 着たまま、俺ごときゅぽんとされそうで怖かったから。


 さておき、こうして突っ立って考えてるだけで体温が削られていく気がする。


「……考えても分からん。探すしかないか」


 どうせ、この空間のどこかに答えが置いてあるんだろ。

 序盤だし、チュートリアルってそういうもんだ。

 ……たぶん。


 俺は立ち上がり、ぽこりんたちを一瞥する。


 じっっっっ。


「……行くぞ。探索だ」


 返事はない。

 だが、いつものように二体はぴったり後ろについた。


 ☆


 広い空間を歩き出す。

 やること自体は変わらず、これまでと同じだ。


 壁や床に生えたひかり苔を見つけては、


「……ぽこりん、回収」


 きゅぽん。


 石を見つけては、


「……それも」


 きゅぽん。


 素材が溜まれば、


「……ひかり石、クラフト」


 ぽこっ。


 光る石を一つ手に取って、ぽい、と前方に放る。

 転がったひかり石が淡く周囲を照らす。


 それを目印に、また進む。

 拾う。

 作る。

 投げる。


 単調だけど暗闇を進むにはこれしかない。

 単調作業は別に嫌いじゃない。

 ……作業してるのはコイツラだけど。


 少し歩いたところで、壁に違和感を覚えた。


「……あれ?」


 壁が途切れている。

 いや、正確には――横に穴が開いている。


 横穴、というより通路だ。


「……また道か」


 立ち止まって中を覗き込むけど、当然暗くて先が分からない。

 入り口からひかり石を一つ投げ込んでみる。


 ころころ、と音を立てて転がる。

 だが、光は途中で飲み込まれて奥までは見えない。


「……深そうだな」


 今はスルーだ。

 探索の途中で横道に逸れるのは得策じゃない。


 目印として入り口の前にひかり石を一つ置き、そのまま歩き続ける。


 しばらくするとまた横穴があった。

 さらに進むと、もう一つ。


「……おい、多くないか?」


 同じような通路が等間隔で現れる。

 その数はさっきのも含めて、全部で五つ。

 その度にひかり石を投げ込んで、目印を置いておく。


 そして気づく。


「あれ……?」


 歩いているうちに、見覚えのあるひかり石が足元に現れた。


「……一周、した?」


 どうやら、この空間をぐるっと回ってしまったらしい。


 立ち止まって改めて周囲を見渡す。

 ひかり石をいくつも投げたおかげで、さっきよりだいぶ全体が見える。


 ――円形だ。


 天井が高く、ドーム状になった広い空間。

 広さは……小学校の校庭くらいはありそうだ。


 そして、通路。


 さっき来た道を含めて、全部で六つ。

 等間隔で壁に口を開けている。


「……六方向ダンジョンかよ」


 嫌な予感しかしないんだが。


 さらに、視線を中央へ向ける。


「……台座?」


 そこには、石の台座が並んでいた。

 数は五つ。


 形も大きさも、最初に指輪が収まっていたあの石の台座とほぼ同じに見える。

 ただし、今は何も載っていないけど。


「……嫌な配置だな。絶対何かあるだろ」


 どう考えても意味がある。

 ゲーム的に考えて。


 でも今はそんなことよりも、


「……寒い」


 こっちの方がマズい。

 ぽこりんたちを見る。

 じっと、こちらを見返してくる。


「……暖かくなりそうな素材、ねぇ」


 一周したところで苔と石しか見てないんだが。

 火のつきそうなものなんて、どこにも……、


「……?」


 ふと、足元の苔に目が止まった。


 ひかり苔が生えている。

 いつもは壁や床に張り付いて淡い光を出して、湿っているそれ。


 だが、ここは広い。

 風が通っているのか、端の方に生えている苔の一部が――


「……あれ、乾いてる?」


 指先でちょんちょん触ってみると、乾燥していてほとんどぬめりがない。

 ぽろ、と簡単に崩れてしまった。


「光も……少し弱いか? ……いや待て。これ、もしかして」



《暖かくなりそうな素材》



 指輪が言いたいのは、もしかして――


「……ぽこりん、これ回収」


 無言。

 きゅぽん。

 乾いた苔が吸い込まれる。


 そして。


 ――ぴこん。


《素材:乾いたひかり苔 ×1》


「……ほう」


 ここに来て新しい素材ゲットだ。

 クエストの言い方は相変わらず曖昧だが……これ、たぶん正解寄りじゃないか?


「……で、これをどうすりゃ暖まるんだよ」


 手足の冷えは限界に近い。

 さっきから震えがやばいし。

 考えてる暇はあまりないな。


「ぽこりん、とにかくこの辺にある乾いた苔、全部拾って」


 俺の指示に、ぽこりんたちがたたたっと駆け出し乾いたひかり苔を吸い込んでいく。


 一通りきゅぽったあとで


「……これで何か出ればいいんだが。クラフトリスト」


 ぴこん


《クラフトリスト》

《・ひかり石》

《・石の床》

《・石の壁》


 今までクラフトしたものが載ったリストが表示される。

 あ、石の天井はないのか。

 てことはあれ、やっぱり床で代用したな。


 そして。


 そのリストの一番下に新しいアイテムが表示されていた。


《・かいろ石 new》



 よしキターー!



 ★☆☆★☆★★☆★


《TIPS》

■乾いたひかり苔

風に晒され乾燥したひかり苔。

発光はほとんど失われているが、圧力を加えると僅かに熱を生じる。

触るとぼろぼろとすぐに崩れる。









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