おうちをつくろう
続いて、今度は壁を作ってみる。
……その前に、ぽこりんが吐き出した石の床を改めて確認する。
いや、床というより土台って言ったほうがいいのか?
敷かれた石の板、その一番手前の一枚にしゃがみ込みまじまじと眺める。
見た目は白っぽい。
この遺跡の壁や柱とかとほぼ同じ色合いだ。
よく見ると微かに模様みたいな石目がある。
指でコンコンと叩いてみる。
……硬いな。
コンクリートの床を叩いているような感触だ。
少なくとも、少し踏んだくらいじゃびくともしなさそうな安心感がある。
叩いた指の爪が負けそうなくらいには硬い。
形は正方形。
一辺はだいたい一メートルちょっと……一・二メートルくらい。
厚みは……十数センチ、いや二十センチ近くあるか?
「なるほど……そりゃ、地面の冷えも多少は遮るわけだ」
ただの薄い板じゃない。
これ、完全に《《基礎》》だ。
見た目は床だけど役割的には土台。
この上に壁を立てて、天井を乗せる前提のやつだろう。
「……マジでゲームみたいだな」
てっきり、マイ〇ラみたいに四角いブロックが浮いて配置されるのかと思っていた。
だが、どうやらそっち系じゃないらしい。
ブロックというより、建材だな。
どちらかというと……ア〇クとか、コ〇ンとか、ちゃんと建築するタイプ。
となると。
「壁も同じ感じのパーツなんだろうな」
考えても仕方ない。
作ってみれば分かる。
俺は立ち上がり、相変わらずこちらをじっと見つめてるぽこりんたちに指示を出すべく向き直った。
「ぽこりん。次は壁だ。床を囲むように配置してくれ」
……あ。
言ってて気づいた事があるから慌てて付け足してみる。
「そうだ。一辺だけ、出入り口を空けておきたい」
さて、どうかな。
通じるか?
細かい指定だけど。
ぽこりんたちは無言のまま、すぐに動き出した。
ぶるぶるぶるぶるぶる。
――ぽこっ。
――ぽこっ。
軽い音が続けて鳴る。
同時に、目の前で白い壁が次々に置かれていった。
「……おお」
床を囲むようにして、ぐるりと立ち上がる石の壁。
高さは俺の背より少し高いくらい。
圧迫感はないが、ちゃんと囲われている感じがある。
厚みもそれなりにあって、叩くと床と同じ鈍い音が返ってきた。
そして、一辺。
「ちゃんと……出入り口、あるじゃないか」
壁の一部が、最初からくり抜かれたように空いている。
しかも幅も高さも、俺が屈まずに通れるサイズだ。
ぽこりん基準じゃなく、ちゃんと人間サイズ。
「……そこは空気読めるんだな」
ぽこりんたちは相変わらず無言。
ただ、じっとこちらを見ている。
……と。
ふと、視線が上に行った。
……天井。
上を見上げれば暗くて天井が見えない。
正確には、この広い空間の天井が高さもあり暗くて見えないし、このおうちの天井はそもそもない。
壁がある分、余計に寒気が抜けていくのが分かる。
「……やっぱり、屋根いるよな」
ぽつりと呟く。
チュートリアルの表示はない。
《屋根を作ろう!》なんて項目も出てこない。
……いやドラ〇エじゃないんだし、家作れって言っといて屋根なしはないだろ。
「……なぁ、ぽこりん」
ダメ元で試しに聞いてみる。
「……屋根、作れるか? 一応天井も塞いどきたいんだが……」
――ぶる。
一体が微妙に震えた。
――ぽこっ。
「……え」
頭上に影が落ちた。
見上げると。
白い石の板が、壁の上にぴたりと乗っている。
さらに、ぽこっ、ぽこっ、と続けて音が鳴って天井は完全に塞がれた。
「……作れるのかよ」
普通に作るじゃん。
当たり前みたいに。
しかも。
「……これ、床と同じ素材じゃないか?」
見た目も色も厚みもほぼ同じ。
まさか、石の床をそのまま天井に流用しただけか?
指示の仕方が悪かったのかもしれない。
なんにしても、コイツラに応用力……少なくとも《《考えて作ってる》》のは分かったかな。
「まぁ……結果オーライ、か」
でも、チュートリアルに書いてないのはなんでだろな。
そうして、とりあえず家は完成した。
床――石の土台が九枚。
三×三の正方形。
壁で囲まれていて屋根もある。
外から見れば、完全に――
「……まさに、とうふ建築だな」
真っ白。
角ばってて装飾ゼロだし。
色まで白いからなおさらそれっぽい。
建築初心者の家って感じ。
だが。
「……悪くない」
そういう見た目を気にするのはもっと余裕がある時だ。
とうふだろうが、少なくとも濡れたまま風に晒されるよりは百倍マシだ。
中に入ると当然暗かった。
「ぽこりん。ひかり石、いくつか」
指示すると、すぐにぽこぽこと光る石が吐き出される。
それを家の中の四隅に置き、 さらに出入り口の外、周囲にも適当に配置していく。
淡い光が白い家とその周囲をぼんやり照らした。
「……よし」
石の床。
石の壁。
そして、石の天井(仮)。
簡素だけど、確かに「おうち」だった。
俺はその場に腰を下ろし、壁にもたれかかる。
「……生き延びられそうだな」
――ぴこん。
来たか、視界の文字。
《クエスト達成》
《チュートリアル⑤:おうちを作ろう!》
「……だよな」
思わず、ほっと息を吐く。
正直もう休みたい。
マジで本格的に寒くなってきた。
微かに流れる風のせいで震えが止まらんのだけど。
中に入って少しでも体を温めたい。
――が。
休む間もなく。
――ぴこん。
《チュートリアル⑥》
《暖まろう!》
「……はい来た」
クエストさんせっかちだな、おい。
こっちは寒くて疲れてんだ、少しは休ませろよ。
……言うて、指示しかしてないけどな俺。
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《TIPS》
■石の床
石材をクラフトして作られる建材。
地面の冷えをある程度遮断する。
建築の基礎として使用される。
■ 石の壁
石材をクラフトして作られる建材。
外気を遮り、空間を区切る。
床の上に設置されることを前提としている。
■ 石の天井(仮)
ぽこりんによって設置されたおうちの天井。
床と同素材の石板が代用された。
空間の上部を塞ぎ、風や冷気を防ぐ。




