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流星の英雄【りゅうせいのアイアス】  作者: 真田らき
序章:星々の揺籃

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4:ラマーン帝国の勃興

 ラマーン帝国の歴史は、銀河の覇権を巡る冷徹な計算と、果てしない征服の連鎖によって刻まれてきた。

 その起源は、第2次移民波の時代に遡る。

 アルファ・ケンタウリからさらに遠く、バーナード星系を越えた「オリオン腕外縁部」へと向かった大規模移民船団「ラマーン・コロニー・フリート」が、帝国の母体となった。

 船団の指導者だったのは、元地球連邦軍の将校、ウェイ・ロン。

 彼は超光速航法フォールド・ドライブの黎明期に、軍事転用を強く主張した人物の一人であり、「空間折り曲げは軍事優位を決定づける」と公言してはばからなかった。

 ウェイ・ロンは、到着した惑星群で、アストロニウム鉱脈が高密度で眠る惑星を発見すると、自らが統治することを宣言し、惑星をウェイランと名付けた。


 「資源は力だ。力なき者は資源を失う。ゆえに、我々は力を最優先とする」


 この言葉は、後に帝国の建国憲章「ウェイ・ロン宣言」の第一条となった。


 初期のラマーンのやりようは、常軌を逸するものだった。近隣の小規模開拓団に対する「保護と併合」の名の下に、次々と武力介入を繰り返し、勢力を拡大させ、抵抗する集団には容赦なく艦隊を差し向けた。降伏した者には「帝国市民権」を与え、労働に従事させる。拒否した者は「反逆者」として処刑され、その家族は「再教育キャンプ」へ送られた。

 この苛烈な統治が、驚くべき速度で領土を拡大させた。



 29世紀後半、アルデバラン星系へと侵攻した頃、ラマーンはすでに10を超える星系を支配下に置き、大国アルメリア連邦に次ぐ軍事力を保有していた。

 彼らは「アストロニウムは銀河共通の財産ではなく、無論、アルデバランの移民共が占有するべきものではない。最強の者が管理すべき戦略資源」と主張し、カルデニアの原型となるアルデバラン星系に住む移民達に宣戦布告したのだ。

 しかし結果は、レオン・ヴァルディスの「幽霊艦隊」によるゲリラ戦に、予想外の撤退を余儀なくされたのだ。

 この争いは、ラマーン史上初めての「敗北」として記録され、ウェイ・ロンの子孫達や、ラマーン帝国の歴史に「アルデバランの屈辱」として根強く刻まれることとなった。



 30世紀に入り、ラマーンは「第一帝国期」と呼ばれる軍事改革の時代を迎えた。

 新皇帝となったチャン・ロンは、軍事アカデミーを帝国全土に設置し、遺伝子最適化による「スーパー・ソルジャー計画」を推進。 

 周辺の弱小国家は、半ば強制的に「保護条約」を結ばされ、実質的な属国と化した。

 この時期のスローガンは「統一こそ秩序、秩序こそ永遠」まさに強権主義の極致だった。



 31世紀、ラマーンは「第二帝国期」へ移行する。

 急激な人口増加と軍部拡大の影響で、アストロニウム枯渇の危機が迫る中、帝国は「量子真空エネルギー転換」を強引に推進したが、失敗が相次いだ。

 貧富の差が拡大することで、国内では反乱が頻発し、辺境星系では独立運動が燻り続けた。


 そんな中、現皇帝リー・ジンウェイが即位する。

 彼は「新統一戦争」を宣言し、再び銀河全体への覇権を掲げた。

 国内の不満や鬱憤を外に向けさせることで、国家の統一を図り、かつ、アルデバラン星系の青の小惑星帯コバルト・リングを手に入れる事で、アストロニウムを確保しようと企んでいたのだ。


 「カルデニアは過去の失敗の象徴だ。あの青い亡霊どもを、必ず膝まずかせる」


 ラマーン帝国の特徴は、徹底した独裁主義と軍国主義にある。

 議会は存在するが、皇帝の勅命は最優先され、皇帝に意見しようものなら「反逆罪」で即座に粛清される。

 文化は軍事栄光を讃えるものが主流で、芸術や娯楽も「帝国の強さを示す」ものが奨励される。

 軍事力は銀河随一。特に艦隊戦と惑星侵攻戦において、他を圧倒する。

 しかし、その強さの裏側には、過酷な階級社会と、絶え間ない監視・抑圧がある。多くの市民は「帝国の栄光」を信じながらも、内心では息苦しさを感じていた。



 対するカルデニア王国は、「守護と共生」を掲げ、緩やかな連合と平和的通商を基盤とする。

 この二つの国家は、まさに「力による秩序」と「共存による秩序」の対極にある。


 そして今、銀河は再び二つの理念の衝突を前にしている。


 ラマーン帝国の艦隊が、アルデバラン辺境宙域に集結し始めたという報告が、ハイデルに届いたのは、つい先週のことだった。



 ――英雄は、再び求められているのかもしれない。


だが今度の敵は、かつての「青い亡霊」を、決して侮ってはいない。

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