第16話:決着──深淵レイス撃破と“監視者”の影
深淵レイス第二形態の咆哮が止まらない。
空間が削られ、石壁が歪み、
世界そのものが軋むような音が響く。
(押されてる……!
でも、あと少し……!)
ルイは“デュアルブレード”を強く握り締めた。
黒と白の刃が、呼吸とともに脈動する。
『……喰らウ……魂……鍵……』
「誰が食われるかよッ!!」
――その瞬間。
白が爆ぜた。
セリアの光核が、背中越しにルイへ溢れ込む。
「ルイ……いまだけ……全部、あげる……!!」
「セリア!? 無茶すんな――!」
しかし光は止まらない。
ルイの深核が熱を帯び、
光核と“完全同期”した。
黒と白が絡み合い――
ひとつの奔流へ。
◆
“双核同調デュアル・シンク──0.3秒間だけ発動”
短い。
そして危険。
それでも。
それだけで十分だった。
◆
「うおおおおおおおッ!!」
ルイは床を蹴り、
空気を破壊するほどの加速で影へ突っ込む。
『……ナ……ッ……!?』
深淵レイスは反応できない。
「――《双刃断閃デュアル・レンド》!!!」
黒と白がクロスし、
影の核を貫く“×”の軌跡を描いた。
時間が止まったような静寂。
◆
次の瞬間。
――影が弾けた。
遮断されていた空気が戻り、
深淵レイスの咆哮が途切れる。
黒い霧が漂い、燃え尽きるように消えていく。
(……やった……!
本当に……倒した……!)
ルイの膝が崩れかけた瞬間――
「ルイ!」
セリアが強く抱きとめる。
震えながらも、その瞳は優しく光っていた。
「ルイ……怖かった……でも、信じてた……」
「……ありがとう。
セリアがいなかったら、負けてた」
セリアの頬が赤くなる。
「うん……わたしも……」
◆
ユリウスとミネルが駆け込んでくる。
「ルイ!!無事か!!」
「今の……討伐ランクS−よ!?
普通の学院生が勝てる相手じゃない!!」
(いや俺、まだ学院生なんだけど……)
◆
廊下の奥から、別の“気配”が近づいてくる。
影とは違う。
もっと澄み切っていて――
圧がある。
(誰だ……?)
姿を現したのは、青銀の軍服を纏った男。
鋭い金の瞳。背筋が真っすぐ。
兵の気配とは桁が違う。
ミネルとユリウスが即座に膝をつく。
「総司令……!」
(総司令!?
王都警護区のトップ……!?)
◆
男はルイを見下ろし、淡々と言った。
「――ルイ・アーヴェント。
双核保持者デュアルコア」
声は静かなのに、圧が刺さる。
「お前は“世界規模の監視対象”に正式登録された」
(は?)
「同時に――
王都軍直轄の“特別監視保護指定者”だ」
(なんか……名前だけ聞くと超やべぇやつじゃん俺……!?)
◆
「影門事件、学院半壊、深淵レイス討伐――
これらを偶然で片付けるのは不自然すぎる」
金の瞳が鋭く光る。
「だが私はこう判断した。
――お前は放っておけば死ぬ。
だが守れば“世界を救う可能性がある”。」
(世界……!?
急にスケールでかすぎ……!!)
◆
「ラザール」
総司令は振り返る。
「この少年を“導く”のは、お前に任せる」
ラザールの影がゆらりと揺れる。
「……承知しました」
(絶対ただの教師じゃねぇって……)
◆
総司令アインハルトは、ルイに向き直った。
「双核の少年。
今夜の戦闘をもって――お前は王都正式戦力に登録された」
「せ、正式戦力……!?」
「明日から“王都任務”に参加してもらう」
「ちょ、待っ――」
「逃げるな」
(怖い!!)
「世界はすでに“お前を中心に動き始めている”。」
◆
こうして――
ルイの王都生活一日目は、
深淵レイス撃破と、世界規模の監視対象登録という
あまりにも重すぎる現実で幕を閉じた。
そして翌日――
ルイは最初の“王都任務”へと放り込まれることになる。
すべては、さらに巨大な“影”の渦へと繋がっていく──。




