第14話:双核解放──ルイVS深淵レイス(前編)
深淵レイスが吼えた瞬間、
王都北壁に張り巡らされた結界が“揺れた”。
獣でも、人でも、魔物でもない。
ただ“深淵そのもの”から漏れ出したような存在。
その圧だけで、空気が重い。
(うわ……これ、今までの影と次元が違う……!)
ルイの胸の奥で、黒と白が同時に脈打つ。
深核は獲物を前にした獣のように動きたがり、
光核は“守れ”と叫ぶように震えている。
その二つが、均衡の上でかすかに火花を散らしていた。
◆
「ルイ、こっち来い!
陣形組むぞ!」
ユリウスが怒鳴る。
「セリアは後ろ! 光を維持しろ!」
「う、うん……っ!」
セリアが胸の光核を押さえながら下がる。
それでも、ルイを見失わないように視線は揺れていた。
「ルイ……行かないで……」
「大丈夫。すぐ戻る!」
ルイはくるっと振り返り、笑ってみせた。
(怖い。
でも……守りたい奴がいるから、逃げない)
◆
「ミネル、右から回れ!
ユノ、影の揺らぎを読んで援護!」
ユリウスが次々と命令を飛ばす。
「了解!!」
「……うん。」
そしてラザール。
その男は、ただ一歩前へ出ただけで――
影が“後退”した。
(……先生、やっぱり規格外だ……)
ラザールの眼は、完全に狩人のものだった。
◆
「ルイ、行け。」
ラザールが目も向けずに言う。
「双核の均衡――
今なら“制御できる”。」
「……信じていいの?」
「ああ。
お前は、俺が見た中で――最も面白い器だ」
(褒めてるんだよな……? それ……?)
◆
深淵レイスが、
骨のような両腕を地面に突き刺し――
“ズグッ”
闇が走る。
まるで黒い血管が地面に広がるように、
影の線がルイへ向かって伸びてくる。
「ッ!!」
ユリウスが叫ぶ。
「ルイ、ジャンプだ!!」
◆
(行け!!)
ルイの身体が軽く宙に舞う。
同時に足元を黒い触手が通過した。
(今の……食らってたら“魂”から削られてた……!)
身体が空中で回転する。
その一瞬、深核と光核が同時に共鳴した。
――黒と白が交差する。
「“閃黒ノ線ッ!!”」
ルイの手から伸びた“黒の糸”が、
深淵レイスの腕を絡め取る。
だが――
『……ヌルい……』
影の腕が、
“ぞぼっ”と音を立てて抜けた。
「効いてない……!!?」
「ルイ!!」
セリアの叫びが走る。
◆
深淵レイスの腕が――
「――来る!!」
ユノが珍しく声を上げた。
『■■■■!!!!』
咆哮。
地面に影が広がり、そこから“腕”が何本も生える。
ルナが悲鳴を上げる。
「ちょっ待って!? こんなんズルでしょ!!」
「ルナ避けろ!!」
◆
だが、ルイは見た。
黒と白が示してくる。
『ここだ――』
と。
(……分かる……!)
ルイは走る。
腕の間をすり抜け、
影の牙をギリギリで避け、
「これ……
俺、ほんとにできてるのか……!?」
『……双核の適応……早すぎる……』
ラザールが驚愕の声を漏らした。
◆
そしてついに――
ルイは深淵レイスの真正面へ。
(いける……!
黒と白、どっちかじゃない――
“両方”だ!)
「《双核術式》!!」
光と影が同時に輝く。
深淵レイスの目が、まるで怯えるように揺らめいた。
『……鍵……ヤメロ……』
(嫌だ。
俺は――みんなを守るためにここにいる!)
「《光閃×深黒》――
“デュアル・ブレイク”!!!!」
黒と白の線が交わり、
深淵レイスの胸へ突き抜けた――!




