第10話:特別隔離寮――“双核”監視下の生活が始まる
王都警護区の奥、静まり返った森のさらに奥――
そこにひっそりと立っていた建物が、ルイたちの新しい住処だった。
“特別隔離寮”。
名前がもう嫌な予感しかしない。
「ここ……本当に寮?」
セリアが固まっていた。
「いや、どう見ても要塞なんだけど……」
四方は高い石壁、魔法結界が二重三重に張られ、
入口には“警護騎士団”の紋章が刻まれた巨大な門。
ルイは思った。
(俺、絶対に普通の扱いじゃないよな……)
◆
門がゆっくり開く。
その中にいたのは――三人。
その瞬間、空気が変わった。
◆ 一人目:銀髪の少女――無表情、無口、巫女のような白服
彼女はこちらを一瞥しただけで、
セリアよりも先にルイの“魂核の位置”へ視線を合わせた。
(……え、なんでそこ見る?)
「……黒と白。両方、揺れてる。」
静かすぎる声だった。
「はじめまして。“巫女候補”の ユノ です。」
ユノは淡々と続ける。
「規定で、あなたの“深核”の揺れを毎朝確認します。」
「え、毎朝……?」
「うん。毎朝。」
(いやこの子こわ……!)
◆ 二人目:褐色肌+短剣装備の護衛少女
「ようこそシェルター・ゼロへ!
……あれ? あんたが“例の双核少年”?」
「あ、はい。えっと……」
「アタシは警護騎士団所属、護衛担当の ルナ!
これから寝る時も含めて全部監視するから、よろしく!」
「絶対もうちょっと言い方あっただろそれぇ!!」
セリアがピクッと反応する。
「寝る時も……ルイの……?」
「そ、そういう意味じゃなくてだな!?
物理的危険から守るって意味であってだな!?」
(この子、めっちゃ元気だな……)
◆ 三人目:小柄な少年――書庫から出てきたような服装
「はじめまして。情報部所属の ノックス と言います。」
ノックスはルイの前に一歩踏み出し、
淡々と早口で喋る。
「ルイさん。僕は主に“情報整理”担当です。
あなたの行動、会話、魔力反応、影の動き……
すべて記録しますのでご安心ください。」
「いや安心できねぇよ!!?」
セリアがルイの腕を掴む。
「ルイ、なんか監視されすぎじゃない……?」
「うん。俺もそう思う。」
◆
そこへ――奥からゆっくりと歩いてくる影。
「お前たち。威圧しすぎだ。」
ラザールだった。
だが、その表情が――一瞬だけ変わった。
普段の穏やかな教師ではない。
鋭い眼光、影のような気配。
(……これがラザール先生の“裏顔”?)
「ルイ。ここを拠点に、王都での任務をこなす。
だが誤解するな。
――お前の身を守るために必要な連中だ。」
「じゃあこの……要塞みたいな寮も?」
「ああ。
“深淵側”が本格的に動いた気配がある。」
(深淵側……? 何か来るのか……?)
ラザールは続ける。
「安心しろ。
お前は一人じゃない。
守る側も――“戦う側”として扱う。」
「また戦わせる前提なんだなぁ……!」
「必要だ。
お前が狙われる限り、な。」
◆
そのとき、ユノがルイに近づいた。
無表情のまま、胸元に手を伸ばす。
「……やっぱり“震えてる”。」
「ちょっ、近い!?」
「深核の、奥。」
ユノの瞳がわずかに揺れた。
「“手”が伸びてる。」
(……ッ!?)
セリアが思わずルイの前に出る。
「触らないで!
ルイは……わたしが守る。」
ユノは無表情のまま、セリアを見た。
「光核。
……あなたも、揺れてる。」
「わ、私も!?」
「ルイに近づきすぎた影響。
でも……悪くはない。」
(いや良くも悪くもないだろ……!)
◆
こうして――
ルイとセリアは“特別隔離寮”での生活を始める。
新たな仲間たちに囲まれ、
そして“深淵の手”が確実に近づいている予兆を残したまま。




