第8話:王都大議会──“影門事件”の国家報告
王都中央議事堂――
普段は国の枢機が行われる場所だが、
今日だけは“異様”と言っていいほどの緊張に包まれていた。
重厚な円卓。
左右には各勢力の代表が座る。
・王国軍総司令
・教会最高審問官
・祓魔師団長
・監察局局長オルファス
・王宮魔導師団代表
・そして学院長ベルムート
(……え、待って。
こんなとこに子ども連れてくるの正気!?)
ルイは席につくというより
“連れてこられた”に近い。
隣にはセリア、そしてリュミア。
背後にはユリウスとラザールが立つ。
◆
議長が口を開く。
「これより──
第11期 緊急合同大議会を開始する。
議題はただ一つ。
“影門事件”
並びに“深核保持者 ルイ・アーヴェント”について。」
(言い方ァ!!!)
しかし会議は容赦なく始まる。
◆
最初に立ったのは王宮魔導師団。
「まず、学院地下で発見された“本命門”についてだ。」
魔導師団副団長が資料を広げる。
「本命門は未だ開ききってはいない。
しかし……“特定の魔力”へ反応を示した。」
円卓の視線が一斉にルイへ向けられる。
(いやだから見るなっつってんだろ!!!)
◆
続いて教会代表が席を立つ。
「光核保持者セリア君の反応も無視できない。
第三階位“巫女候補”と一致する反応が出ている。」
「み、巫女……!?」
セリアは顔を真っ赤にしながら、
ドキドキと胸を押さえる。
「ルイ君の“深核”を唯一抑制できるのがセリア君だ。
これは偶然ではない、と教会は判断する。」
(いや俺と光核女子の相性良すぎ問題……)
リュミアも真っ赤。
「わ、わたくし……も……?」
「もちろんだ。
君は“光核の系譜”に最も近い。」
(セリアもリュミアも“相性良すぎ”枠になってるじゃん……
これ完全にハーレムの布石……!?)
◆
だがここから空気が一変する。
祓魔師団長――
黒衣の壮年が立ち上がり、
机を“ドン”と叩いた。
「そして問題はその“深核”だ。」
(あー来た。絶対来ると思った。)
「監察局の報告によれば、
深核は“既知の深淵因子とは一致しない”。
つまり、我々の持つどの分類にも当てはまらない。」
深核の分類は通常三つ。
・腐蝕型
・暴走型
・寄生型
団長は資料を投げるように置く。
「だがルイの深核は
“脈動型”と“呼応型”の複合と思われる。
これは過去に記録がない。」
(また俺の設定だけ規格外なんだけど!?)
◆
そしてついに局長オルファスが立つ。
「……深核、光核、双核。
その呼び名を正式採用する。」
(ついに決まった……!)
「双核保持者は未知の危険性を持つ。
だが同時に、未知の可能性も持つ。」
オルファスはルイを見つめる。
「ルイ・アーヴェント。
君の存在は、
“影門反応値を変動させる”唯一の例だ。」
ザワッ、と円卓が揺れる。
「学院地下の本命門は、
君が近づくほど活性化する一方、
光核保持者が触れると沈静化した。」
(うわ……ばっちり観測されてた……)
「つまり双核と光核は“影門干渉”の鍵。
この関係性は無視できない。」
◆
そこへラザールが静かに立つ。
「……今言われたことは全て事実だ。」
(え、ラザール先生?)
「だが一点だけ補足がある。」
円卓の全員が息を飲む。
「──影門の主は、ルイを“器”と見ていない。」
「……?」
「むしろ逆だ。
ルイは“主を拒んだ”。
深核は暴走せず、光核が押し返した。」
(昨日の戦いの……あれか……)
ラザールの声は静かだが重かった。
「双核は“影の主の意志に屈しなかった”。
これは最大級の防壁となる可能性がある。」
議場がざわめき、
「つまり少年は……
深淵に吞まれない可能性がある、と?」
「むしろ“深淵を拒む資格”を持つ。」
(おい、俺なんでそんな重要人物扱いになってんの!?)
◆
その時――
議場の床が微かに“ゴゥッ”と震えた。
(……また!?)
深核でも光核でもない。
もっと遠く、もっと巨大な何か。
セリアが怯えた声で囁く。
「……ルイ。
今の……“何かの目”を感じた……」
「俺もだ。」
リュミアも震えている。
「深淵の……“本当の主”が……
こちらを見ているような……」
空気が一瞬、凍りついた。
◆
議長が青ざめながら叫ぶ。
「……会議は続ける!
だが“監視班を緊急で増員せよ”!!」
オルファスも低く頷く。
「影門の主は、必ず次の手を打ってくる。
──鍵と光は守り抜け。」
王国軍総司令が立ち上がる。
「ルイ・アーヴェント。
君は当面、我々の“最重要保護対象”とする。」
(いや……俺もう完全に政治の渦中じゃん……)
◆
そして会議が閉じられる直前――
ラザールがルイへ小声で告げた。
「ルイ。
これで“世界の動き”が始まる。」
「……動き?」
「ああ。
この会議で、“影門戦争”が正式に記録された。」
ラザールの目は、
今まで見たことがないほど鋭かった。
「──物語は、ここからだ。」




