第7話:王都会議開始──“深核”と“光核”の異常報告
影獣が討伐された直後の王都前広場。
騎士たちは崩れ落ちる霧を見つめながら、
誰もが何も言えずに立ち尽くしていた。
中心に立つのは――
黒い紋様の残る右腕を握り締めたルイ。
その背後には、彼を包む光核を維持する
セリアとリュミア。
「……終わったな。」
ユリウスが呟いた。
「ああ。
お前らが支えてくれたおかげでな。」
「ルイ……本当に、無事で良かった……!」
「ルイ様……深核を、あそこまで制御するなんて……」
二人が涙声混じりで寄り添う。
だがその光景すら、騎士たちは
“神聖な何か”を見るように沈黙していた。
◆
そこへ――
重い足音。
現れたのは、
王都監察局局長・オルファス。
「……見事だ、少年。」
無表情のまま、淡々と告げる。
「影獣単体をここまで簡易に討伐した者を、
我々はこれまで確認していない。」
『深核……
本当に“特異点”だ……』
と、彼は微かに呟いた。
(この人、相変わらず何考えてんのか分からん……)
「ルイ・アーヴェント。
すぐに“本会議”へ同行してもらう。」
(へ? この流れで!?)
ユリウスが補足する。
「王都守護軍、教会、祓魔師団、監察局――
“全勢力会議”が開かれる。
今回のお前の戦いは、もはや国家級の案件だ。」
「いや俺まだ子どもなんですけどおおお!!!」
◆
だがルイの抗議は無視して進む。
ユリウスはセリアとリュミアへ向き直った。
「君たち二人も同行しろ。
光核保持者として、今回の現象を説明してもらう。」
「え、私も!?」
「わ、わたくしも……!?」
「当然だ。」
「ルイの“制御の鍵”は君たちだ。」
同時に言われ、二人は真っ赤になる。
「ちょ、ちょっとユリウスさん!?
そういう言い方は……!」
「誤魔化すな。事実だ。
深核保持者の暴走を鎮められるのは
光核を持つ者だけ。」
(やっぱそれ公式設定なんだ……
俺、完全に“光の女の子じゃないと危ない体”じゃん……!)
◆
と、そこへ。
ルイの胸の深核が、
“コツ、コツ” と内側から叩くように脈動した。
(……また呼ばれてる……?)
『あれは……
“本命門の主”の眷属……
まだ終わりでは、ない……』
(まだ来るんかよ!!)
だが、あくまで微弱。
戦闘時の“あの暴れ方”とは違う。
セリアがルイの手を握る。
「……大丈夫?
さっきみたいに黒が暴れたりしてない?」
「うん。
ただ……嫌な予感はしてる。」
セリアは光核を掌に灯し、
淡くルイの胸へ触れる。
深核の脈動がすぅ、と静まり返った。
(……こいつ……
毎回これで助けられてんな……)
◆
オルファスが振り返る。
「歩けるな?
会議はすぐ始まる。
遅れるわけにはいかん。」
「……わかった。」
こうしてルイたちは
王都中央議事堂へ向かうことになった。
◆
その裏で。
崩れ落ちた影獣が消えた場所――
その地面の底から、
“赤黒い目”がゆっくりと開いた。
『……見つけたぞ、“鍵”。
深淵の主は……お前を望んでいる……』
霧の中で、
新たな影が形を成し始める。
『次は、“主の手”が赴く……』
その声は、
王都の誰にも届いていなかった。




